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経営者が資産をためると銀行から借りやすくなるのか?

ある中小企業向け雑誌を読んでいて、思ったことを今回は書きます。その雑誌では、経営者の役員報酬をどれだけとったらよいかについて特集していたのですが、そこに書いてあったことを要約すると

 

○一般的には強い会社を作るには、利益を多く上げていき、会社の内部留保(=貸借対照表の純資産)を厚くするのがセオリーと言われている。

 

○しかし、中小企業の場合は、このセオリーは必ずしもあてはまらない。

 

○企業の規模が小さいうちは、まず経営者が役員報酬を多くとって、社長の個人資産を増やすのが先決である。

 

そう書いてあり、その理由は次のように書いています。

 

○個人資産がないと、社長が銀行に担保を差し入れて資金調達したり、会社に貸し付けたりといった行動がとれず、経営の舵取りが難しくなる。

 

○個人資産があれば、ほかの株主を入れずに自分で増資を引き受け、とやかく言われずに事業拡大に取り組むことができる。

 

そこで、このようにしたらよいと書いています。

 

○一般的には、安定的に個人資産を蓄積できるだけの金額、年間2,000万円〜3,000万円が経営者の報酬としてコンスタントに取れるようにまるまでは、黒字はほどほどにしたほうがよい。

 

これは、銀行から融資をスムーズに受けるためにはどうしていったらよいかという面では、間違った考え方です。この執筆者は、経営者が個人資産を多く持たなければ銀行から融資を受けるのは難しくなっていく、ということを書いていますが、そこで次の2つのケースを考えてみます。

 

1.会社の内部留保が厚い(=貸借対照表の純資産が多くある)
しかし経営者の個人資産は少ないケース

 

2.会社の内部留保が薄い(=貸借対照表の純資産が少ない)
しかし経営者の個人資産は多いケース

 

要は、経営者が役員報酬を多く取って個人資産を厚くして会社の内部留保が薄くなるか、経営者が役員報酬を少なく取って個人資産は薄いまま、しかし会社の内部留保は厚くなるか、の違いです。

 

では、この1と2の企業、銀行が融資を行いやすいのはどちらでしょうか。それは、圧倒的に1の方です。

 

この雑誌の執筆者の言うことは、経営者が個人資産を厚くすれば、保証人としての価値が高まり、銀行から融資が受けやすくなるのでは、ということですが、保証人の価値が高い(保証人の保証能力が高い)会社よりも、会社の内部留保が厚い(=純資産が多い=財務内容が良い)会社の方が、ずっと銀行は融資をしやすいです。

 

銀行は、保証人の保証能力は審査において、あくまで参考程度にしか考えていません。

 

なぜなら、他の銀行が融資を出す時も同じ保証人をつけるので、その保証人は1つの銀行だけの保証人とはならず、貸倒れの時は他の銀行も同じ保証人に取り立てるから、保証人の資産は1つの銀行だけの返済にあてられるわけではないからです。

 

それと、保証人は銀行融資の保証をしていても自分の資産を自由にできるので、貸倒れの時はたいていの場合、保証人の資産は、会社の資金繰りにあてることにより尽きている状態となってしまって、保証能力の意味がなくなってしまうからです。

 

また、経営者の個人資産が厚くなり、不動産を購入・保有してそれを担保にすれば融資が受けやすくなるのでは、という考え方もありますが、まず、銀行は担保があっても、決算書の内容が芳しくなければ融資を行わないことが多いです。

 

担保があれば融資が受けやすいのではないのです。決算書の内容が良ければ融資は受けやすいが、担保があればなお良い、という程度で考えてください。

 

また、担保となる不動産があっても、それは1つの銀行に担保として差し出せば、他の銀行にもその担保を使って融資を受けることは、よほど評価の高い不動産でないかぎり難しくなりますが、決算書の内容が良ければ、多くの銀行が無担保でも融資をしやすくなるのです。

 

銀行から、将来にわたって融資を受ける必要がない会社であれば、役員報酬を多くとってもよいかもしれないですが、銀行から、将来にわたって融資を受ける必要がある会社であれば、役員報酬はほどほどに抑えて内部留保を厚くしていくべきです。

 

内部留保が厚くなるということは、つまり貸借対照表の純資産が多くなっていくことです。純資産が厚い企業は、信用保証協会保証付でない銀行独自のリスクによる融資、つまりプロパー融資の道が開けます。

 

顧問税理士などから、銀行から融資を受けやすくするためには役員報酬を多くとって経営者の個人資産を増やしていくことが良い、という間違ったアドバイスを受けているケースを、私はご相談の中でよく耳にしますが、全く逆です。気をつけてください。

 

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