銀行員は粉飾決算を見破れない
私が銀行に勤めていたとき、7年半の在籍で、自分の担当先の粉飾決算が判明したのは、たった2社でした。
なぜその2社の粉飾決算が分かったのか。
1社は、前期決算書と、今期決算書のつじつまが合わないところから判明しました。
繰越利益の部分ですね。前期繰越利益と翌期繰越利益は本来同じはずですが、その数字が違うところから、粉飾決算が判明したのです。
もう1社は、その会社の顧問税理士から出してもらった決算書と、経営者から出してもらった決算書とが、違ったのです。
税理士から前期の決算書をもらっていたのですが、今期の決算書は経営者から出してもらい、その時に前期のも再び出してくれたのですが、その前期の決算書が、税理士提出分と経営者提出分が異なったのです。
このように、明らかな違いにより粉飾決算が判明するのが、銀行が粉飾決算を見破る限度です。ということは、このような手違いが起こらない場合は、銀行は粉飾決算が分かりません。粉飾決算で作った決算書を見て、あやしいな、と思って警戒するぐらいが限度でしょう。
ほとんどの銀行には、粉飾決算の可能性を判定するソフトが入っていますが、その可能性が高いか低いかを算出するぐらいで、粉飾決算を見破る決定的なものにはなりません。
言わずもがなですが、粉飾決算を行って赤字を黒字に塗り替えて、融資を受けることは、本来なら受けるべきではない融資を受けることになり、その融資は結果、赤字補てんとなってしまいますから、その会社の融資総額はどんどんふくらんでしまうことになります。
例えば、本来なら融資総額3千万円で融資が止まり、そこでなんとかしないといけないと気づいた経営者が会社の立て直しに入っていけます。
しかし粉飾決算で赤字を黒字に塗り替えて融資を受け続け、現金が入り続けることによって安心してしまった経営者は会社立て直しの対策を先延ばしにしてしまい、しかし年商3億円の会社が総額5億円も10億円も融資を受けることは不可能で、融資総額が3億円のところで銀行は融資を出すのが限界になり、その段階でやっと経営者はなんとかしないといけないと気づき、会社の立て直しに入っていく。
融資総額3千万円の状態で会社立て直しに入る場合と、融資総額3億円の状態で会社立て直しに入る場合、どちらが会社を立て直ししやすいか、言わずもがなでしょう。
このように、粉飾決算を行うと、それで融資が受けられてしまうため当面の資金繰りはなんとかなるが、それが問題の先送りでしかないことから、後で会社の立て直しをより困難にしてしまうことになります。
融資を受けられない企業は、素直に会社再生に向けて抜本的な対策をすぐに行うべきですが、多くの企業は融資を受けられないからと粉飾決算をやって融資を受けようとしてしまいます。それが、会社を破滅の道へ近づけてしまうことになるのです。
ともかく、銀行は粉飾決算を見破ることはできません。しかし、粉飾決算は問題の先送りにより、会社再生をより困難にしてしまうのです。
粉飾決算をやっている経営者の方、あなたの会社は、融資総額が年々、ふくらんでいませんか?
なぜなら、その融資は結果的に赤字補てんの融資になってしまっているため、融資総額がどんどんふくらんでしまっているのです。
年商3億円の企業が、融資総額が5億円や10億円まで、融資を受け続けることはできないですよね。このように、粉飾決算を行って融資を受け続けても、いずれストップしてしまうときがやってくるのです。
いつ経営者が「もう粉飾決算で融資を受け続けることはやめよう。」と思って会社再生に向け立ち上がるのか、それが、その企業の将来を左右することになります。
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