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緊急保証制度の現状と今後

前回・前々回のメルマガでは、金融円滑化法に焦点をあててきましたが、今回のメルマガでは、それと合わせて現在の中小企業資金調達に大きな影響を与えている、緊急保証制度についてお伝えします。

緊急保証制度の現状

平成20年11月に始まった緊急保証制度は、最終的には30兆円を超える規模にまで財源が拡大され、また対象の業種も緩和されてきたことで利用実績も20数兆円という状況ですが、現在平成23年3月末をもって新規の受付・取り扱いを打ち切る方針と伝えられています。

 

緊急保証制度は、

 

  • 特別枠(いわゆる別枠)であり、一般枠を使い切っていても利用できる
  • 売上が減少傾向の場合で、逆に対象となるなど、申し込みができる企業が多い
  • 最大で10年間の借入期間を設定し、また一本化などにも対応することで借り手の返済負担を軽減している等、中小企業にとっての使い勝手がよかったばかりではなく、
  • 信用保証協会の保証率が100%であり、平成19年10月に導入された責任共有制度の例外となっている

 

ことから、銀行にとっても「リスクがない融資」という認識から、この2年間、「緊急保証でできるのならば緊急保証で融資する」という考え方が横行してしまったのではないかという懸念があります。実際、今日では金融機関の中小企業向け貸出のうち約1割は緊急保証制度を含む「全額保証」制度を利用したものとされているのです。

 

これほどまでに銀行にとって頼りになってきた、緊急保証がなくなることでその後の銀行の融資姿勢は、どうなることが予想されるでしょうか?私としては、「これまで以上の貸し渋りが発生する」のでは、と考えています。

緊急保証制度打ち切り後、何が起こる?

上記の通り、銀行にとって緊急保証制度はリスクなく融資できるものですから便利ですが、それだけで、制度がなくなる⇒貸し渋りになる、と短絡的に考えることは無理があります。

 

しかし、実際には銀行が中小企業向け融資を渋るに足りる根拠が存在します。

 

◎リスクウェイト、という考え方

 

銀行にはBIS基準という、自己資本比率に対するある種の規制が存在しておりそれを下回った場合には、金融庁より早期是正措置が発動され、程度に応じた業務改善指導を受けることになります。

 

※国際業務を行う金融機関であれば8%、国内業務のみを行う金融機関であれば4%

 

銀行にとって、いったん下落した自己資本比率を改善することを考えた場合資産の大きな比率を占める、貸付金≒融資を減らすことで対応、となります。

 

これが、基本的な貸し渋りの構造です。ここで、銀行の自己資本比率を考えるときに、リスクウェイトの概念が問題になります。

 

自己資本比率と言えば、「純資産÷総資産(%)」で計算されますが、銀行が、BIS基準等に合わせて自己資本比率を考える場合には、総資産は「リスク・アセット」に置き換えて計算します。

 

リスク・アセットとは、「資産の貸倒れ・含み損の総量」とされ、資産の内容や種類ごとに一定の料率を掛けることで算出されます。

 

例えば、銀行間の融資であれば20%、銀行の企業向け融資であれば100%、銀行の個人向け住宅ローンであれば50%、という具合です。これによれば、「緊急保証制度」の貸出は、銀行にとって貸し倒れ懸念が全くないことから、この掛目が0%なのです。

 

0%というのは、国債と同じようなものです。確かに、政府が保証している、と考えれば、同じといえば同じですが…。

 

つまり、銀行にとっては、緊急保証制度は単に貸し倒れないだけでなく、どれだけ貸しても、自らの自己資本比率を悪化させずに融資の利息による利益がとれる、(銀行にとって)すばらしい制度ということがよくわかります。

 

そんな制度がなくなり、銀行は自らの自己資本比率とにらめっこしなければ貸出ができなるわけです。

 

例え、貸出の減少により、自らの利益が減ってしまうとしても、自己資本比率が悪化して金融庁からの命令・指示を受けることは国有化同様であり自分の首が締まってしまうことから、そうならないように、銀行は貸出の抑制をせざるをえないのではないか…?

 

これが、貸し渋り(貸し剥し)の発生を考える上での重要な根拠です。

緊急保証制度終了後どのような企業が危険か

簡単なチェックですので、ぜひやってみてください。

 

  1. ここ1年以上、緊急保証制度以外での融資を受けていない
  2. 借入の話を銀行担当者にしても、緊急保証以外は勧められない
  3. 取引金融機関の自己資本比率がBIS基準から、あまり余裕がない※銀行の自己資本比率は、それぞれのホームページ等から、見ることができます。
  4. 保証協会の保証枠について、一般枠・特別枠とも使い切っていると考えられる状況になったとたん、銀行担当者が融資の売り込みをしてこなくなった。

 

以上のいくつかにあなたの会社が該当した場合は、今借りている、緊急保証制度による融資が「緊急保証制度だから、借りることができた」という可能性が高いです。つまり、緊急保証制度がなくなった後、新規での借入が本当にできるのかどうか。もし借入できなかった場合、どうすればよいのか。

 

今から確認の上、これからどのように資金繰りに取り組んでいくのか、検討をしなければなりません。来年の4月を過ぎてから、「借りられると思っていたが、断られた」と言われて困るような事態だけは、起こしてはなりません。

 

現在の自社の借入内容や借入状況を、今一度確認されてはいかがでしょうか?

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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