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「融資してもらえる決算書」を考えるより前に、確認するべきこと

毎年3~5月になると、季節的に多くなるご相談の種類があります。それは、「決算を行うにあたり、銀行から融資が得られるようにしたいので、アドバイスを頂けないか」というもの。

 

「融資を得るための決算書」だけをご要望の方には、大半の場合はお話のしようがないのが実情です。それは、専門家として粉飾を助長することになりかねないからです。どうしてもおかしくなってしまっている部分を改善させていく、という方向であるのならば、もちろん全力を尽くしますが…。

 

しかし、多くの場合、決算書という一つのツールをきれいにすることで解決しようとしてしまうお気持ちが強すぎてしまっているように感じます。では、その前に何を確認するべきなのでしょうか?

試算表を求められて、何カ月前のものを提出していますか?

融資の申し込み等をされる際、「試算表を提出して下さい」と言われることは、特に決算から6カ月以上が経っていれば、ほぼ確実なことと思います。

 

実際には、「試算表が何カ月前のものか」というチェック項目は、金融庁にも銀行にもほとんどありません。しかし、特にプロパー融資であるならば、必ず担当者も、課長も、支店長(部長)も、気に留めます。

 

試算表がない、ということは“自らの会社の活動結果がわからない”と認識されます。私は、昔お世話になった先輩より、このように教わりました。「いいか、前月の試算表が出せない(ない)ということは、1カ月以上の期間、何が起こってもわからないということ。お前は1カ月以上預金残高の確認をせずに生活することができるか?それをしていない相手にお金を貸せるか?」と。

 

言われてしまえば、全くその通りのことなのですが…、3カ月以上前の試算表を、それがどのように思われてしまうのか考えずに提出してしまう会社様は、残念ながらまだ多く存在するのです。

 

この改善には、税理士先生のご協力も必要なことでしょう。もし当月中に前月の試算表がまとめられない状況でらっしゃれば、すぐにでも先生にご相談されて、最低でも30日、できれば15日以内に試算表が出来ている体制を構築するべきです。

資金繰り表を求められて、何時間(何日)後に提出していますか?

中小企業にとって資金繰り表は、会社の存続と発展を支える最大の資産である「手許現預金≒キャッシュ」が、どのような推移で増減するのかを確認し、計画するためのものであり、銀行の融資審査上でも大きな役割を果たすものです。

 

当然、弊社としても作成することをお勧めしているものではありますが、どうしても「銀行に依頼された時だけつくる」会社様はまだまだ多いです。しかし、銀行より融資を受けたいと、真に思い、その可能性を追求したいのであれば、そもそも「日常的につくっている」ことが当たり前でなければなりません。

 

同じく、先輩から頂いていた言葉。「資金繰り表は、24時間待てば十分。それで出てこないということは、言われたから作っている、ということ。自分の会社の入金・出金の実績や見込がわからない相手になぜお金を融資できると、お前は思うのか?」

 

少し話がそれますが、資金繰り表についてはなおさらのこと、融資を得るために必要な資料というのは、銀行の営業担当者の言うことが全てではないということも重要です。

 

銀行の営業担当者は「貸付をすることで、自分の営業成績を伸ばす」ために、できるだけお客様との関係を良好に保ち、「他の金融機関ではなく、うちから借りて欲しい」と考えています。従って、あれこれと大量の資料を要求したり、無理な資料の提出依頼をすることは、「それによって嫌がられてしまい、他の銀行から借りてしまうのではないか」と、避ける傾向があります。

 

しかし、銀行本部で審査をする立場の方にとっては、話が全く別です。限られた資料のみで企業を評価し、融資判断を下すのです。(この意味では、保証協会も同じです)

 

銀行全体にとって必要なものというのは、担当者が欲しがるものとは次元が変わってしまうことに、注意が必要です。

内部的な変更で必ず改善できるものは、直ぐに対応しよう

今回の内容は、もしそうではない状況の方に対しては、ご不快に響いてしまう内容であるのかもしれません。しかし、日常で自らの業況・収益・資金状況がわかっている会社と、そうでない会社があるのならば、銀行は前者を選択するのは当然のことです。

 

しかし、この問題は、全ての中小企業が、税理士先生と打合せをしたり、社内の業務内容を見直しすることで、必ず改善し、対応することができるという点がポイントです。

 

ビジネスローンが多く世に出ていた頃は、決算書の内容を整えることで融資を得られるということが可能であったのは事実ですが、今日銀行は資産項目の評価を厳密に行っているため、一時的に貸借対照表に計上し、損益計算書の利益を向上させようとしてもその実態の大半は見つけられてしまうため、無茶をしたところでその意味はありません。

 

一方、試算表を早期に作成すること、資金繰り表を継続的に見直しすることは、中小企業にとっての経営改善の第一歩であり、銀行のため以前に自らのために、避けて通るべきではありません。是非、対応をお願い致します。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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