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企業が定期預金を銀行に置いておく意味があるのか

あなたの会社は、融資を受けている銀行で、定期預金を預けていないでしょうか。

 

例えばA銀行で融資残高が1億円あり、一方で定期預金を5,000万円預けている場合。あなたの会社は実質、融資残高1億円-定期預金5,000万円=5,000万円の融資を受けていることになりますが、利息は1億円に対してかかってきます。

 

例えば、金利が2%であれば、融資の年間利息は、融資残高1億円×金利2%=200万円の利息です。一方で定期預金の金利が0.1%であれば、定期預金5,000万円×金利0.1%=5万円

 

となり、あなたの会社が融資利息で支払っている200万円から預金利息で受け取っている5万円を差し引きし、195万円の利息を差し引き支払っていることになります。それが、融資残高1億円から定期預金5,000万円を引いた、実質の融資残高が5,000万円であれば、融資利息は

 

実質融資残高5,000万円×金利2%=100万円

 

となり、定期預金5,000万円で融資を5,000万円返済しておくことにより、年間の利息負担は

 

195万円-100万円=95万円

 

もの削減となります。つまり、融資を受けている銀行に定期預金を預けることにより、あなたの会社はそれだけ多くの利息を銀行に支払っていることになるのです。ではなぜ多くの企業は、融資を受けている銀行に定期預金を預けているのでしょうか。

 

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企業が定期預金を銀行で作る場面

企業がなぜ銀行で定期預金を作るのか。その銀行で既に融資を受けていているパターン、融資を受けていないパターンで考えてみます。

まだその銀行で融資を受けていない場合。なぜ定期預金を作るのか。

定期預金のメリットは、普通預金や当座預金に比べて預ける期間が長い分、金利は高い、ということです。それ以外にメリットはありません。しかし定期預金でも、限りなく0%に近い金利となっています。これでは定期預金を作るメリットになりません。

 

企業は、事業活動を継続していくために、資金繰りをまわしていかなければなりません。そのためには、すぐに使えるように普通預金や当座預金に置いておくべきです。

銀行で融資を受けている企業が、なぜその銀行で定期預金を作るのか。

これは、銀行から定期預金を作ってほしいと言われ、作る場合が多いでしょう。融資を受けている銀行で、自主的に定期預金を作る企業はなかなかです。融資を返済している間は定期預金を作るような余裕資金はありませんので。

 

ではなぜ、融資を受けている企業に銀行は定期預金の作成を要求するのか。それは、企業が返済できなくなった時に備えておくため(保全と言います)です。定期預金は、普通預金や当座預金に比べて引き出しにくいものです。

 

そのため、定期預金は銀行が保全の手段として使いやすいものです。

 

ただし、銀行は企業に対し、定期預金作成を強要することはできません。また企業に定期預金の作成を要求すると、企業は「断ったら今後融資を受けられなくなるのでは」という恐怖があることから、銀行は貸し手の立場として優越的地位を濫用していると見られます。

 

優越的な地位の濫用とは、独占禁止法第19条(不公正な取引方法の禁止)にあたり、取引の中で、優越的地位にある方が、取引先に対して不当な不利益を与えることです。

 

そのため、融資を受けている銀行から定期預金を作るよう言われても、断るべきです。

 

銀行から「定期預金を作成しなければ今後、融資は受けられない」と言われたとしても、銀行の要求に応じて定期預金を作成したところで今後、融資は受けられないと考えてよいでしょう。

 

銀行が保全を強化していこうとする企業に対し、銀行は、新規融資を出していくスタンスではなく保全を強化していくスタンスにしています。それであれば、そもそも定期預金を作成しても企業にはメリットはない、ということになります。なお定期預金も銀行への担保にできるため、定期預金を作成してさらに、銀行はそれを担保に入れるよう要求してくる場合があります。

 

銀行に言われるがままに行動するのではなく、銀行が何を思っているのか、企業側は一つ一つ、しっかり考えておくべきです。

定期預金にはフリーと担保の場合がある

定期預金も、不動産と同様に、融資の担保として銀行に入れることができます。

 

担保に入れていない預金はフリーの定期預金と言います。あなたの会社が銀行に定期預金を預けている場合、その定期預金は、担保なのか、フリーなのか、まず把握してください。

 

定期預金が担保となっているのかなっていないのか、把握していない会社は意外と多いのです。定期預金を担保に入れると、その通帳や証書の現物は銀行に保管するため、企業の手元にないことになります。通帳や証書が手元になければ、銀行が保管している可能性があり、それであれば担保となっている可能性が高いです(銀行の貸金庫に入れている場合は違います)。

担保定期預金の場合

定期預金が担保になっているのであれば、銀行はその定期預金を解約してそのまま融資の返済の一部に充てるのでない限り、担保のみを解除してくれることはまずありません。その定期預金は担保として入れているため、死に金となっています。それを解約して融資をその分、返済し、融資利息負担を減らすことを第一に考えるべきです。

 

しかし銀行は、そうされてしまうと利息収入が大きく減ることになり、抵抗してくるでしょう。銀行はいろいろ理由を付けて抵抗してくるでしょうが、結局のところ、利息収入が大きく減る、それしかないのです。

 

銀行としては、企業からどれだけ収益を得られているか、1社ごとに算出しています。銀行として大きな収益が得られる企業は、多少業績が悪化しても融資審査は通しやすいということもあり、企業はそのことを頭に入れつつも、担保定期預金を解約して融資の返済の一部に充てる交渉をしていきます。

 

なお、その銀行から新たな融資が受けられていないのであれば、融資審査を通しやすいというメリットは全く活かされていないことになりますので、なおさら担保定期預金を解約する交渉を行うべきです。

フリー定期預金の場合

担保に入っていないフリーの定期預金であれば、企業はいつでも、定期預金を解約できます。原則は満期日前に解約できないことになっていますが、実務としては中途解約はよく行われていることです。

 

ただし定期預金は、実際に解約を申し込むと、引き止められるのが通常です。

 

数十万円ならともかく、100万円以上の定期預金は、その銀行に融資がなくても「何に使われますか?」と聞かれます。銀行ではそのようなルールがあるからです。何に使おうとほっといてくれ、と思いますが、銀行にとって定期預金は、普通預金や当座預金と違って、満期日までは原則解約ないことからその預金を銀行の方で、融資や国債投資など、長期間で運用しやすいものであり、なるべく解約してほしくないものです。満期日が来ても継続してほしいものです。

 

融資を受けていない企業や個人においても「何に使われますか?」と聞かれるぐらいですから、融資を受けている企業が、その銀行に預けている定期預金を解約する時は、銀行から大きな抵抗に合います。

 

銀行が定期預金の解約に抵抗するのは、次の2つの理由があります。

 

一つは、融資の稟議の時に、その定期預金の存在を、審査を通すための材料にしていることが多いからです。銀行は、融資以外でも取引実績が多い企業に対し、その企業と付き合いを深めるメリットが大きいことから、融資は出しやすくなります。

 

定期預金を作っていることは、取引実績の一つと銀行は考えます。そして融資の稟議書にも、その取引実績を書き、融資審査を通す材料の一つとするのです。

 

もう一つの理由は、定期預金を解約すれば、その分、銀行は保全がなくなることです。

 

銀行は稟議書には、

 

「当社は、取引実績面ではフリー定期預金が3,000万円あり、またその定期預金は、本件1億円の融資実行にあたって保全の一つと考えることができる。」

 

というように書きます。これが融資審査を通す材料の一つとなったのであり、定期預金を解約するとその前提が大きく崩れてしまうから、定期預金の解約に抵抗するのです。私は銀行員時代、1億円を融資した企業で、一方で定期預金を5,000万円、作ってもらいました。

 

しかしその企業は、3ヶ月後、定期預金を解約したいと銀行の支店にやってきました。

 

私はそれを引き留めようと、後日訪問します、と言ってその場はおさめ、後日、上司とともに定期預金解約を引き留める交渉に訪問しました。しかし粘られた末、結局その定期預金は解約されてしまい、そして半年後、その企業は倒産し、銀行は貸倒れを出してしまいました。

 

このように、融資を受けている企業が定期預金を解約するのは、資金繰りが厳しくなっていることが多く、それを分かっている銀行は、なんとしてでも定期預金の解約を引き留めたいのです。

 

しかし担保で入っているものでなければ、企業は定期預金を解約するのは自由です。

 

「定期預金が解約できなければ従業員に給与が払えない。」

「定期預金が解約できなければ支払手形の決済ができない。」

「この定期預金は担保ではないので解約するのは自由ではないですか。」

 

と言われれば、銀行は折れるしかないでしょう。ただし、自分の会社の資金繰りが厳しい、業績が悪化していることは、なるべく銀行には思われないようにしたいものです。融資を受けている銀行では、定期預金は作るべきではないし、もし作っていても、粘り強い交渉の末、解約できるものです。

期限の利益が喪失されれば解約できない

ただし、定期預金の解約ができるのに解約が遅れてしまうと、銀行は銀行取引約定書や金銭消費貸借契約書を根拠に、解約を拒否してくる場合があります。

 

それらの契約書には、期限の利益の喪失条項があります。

 

期限の利益とは、例えば3,000万円、60ヶ月返済、毎月50万円返済であれば、毎月50万円ずつ返済していれば、その融資は一括で返済しなくてよい、という企業側の利益です。

 

期限の利益が喪失されると、銀行は企業に、一括返済を要求してきます。そうすると、定期預金は融資の一括返済に充てる手段の一つと見られるため、企業は定期預金の解約ができなくなるのです。期限の利益の喪失事由としては、次のことがあります。当然に喪失する場合、銀行からの請求によって喪失する場合とがあります。

 

期限の利益が当然に喪失する事由としては、

 

  • 企業が破産、民事再生、会社更生、特別清算開始、他、裁判所の関与する手続きを申し立てた。
  • 手形小切手が6ヶ月の間に2回不渡りになり銀行取引停止処分を受けた。
  • 弁護士等へ債務整理を委任した。
  • 自ら営業の廃止を表明した。
  • 企業またはその保証人の預金の仮差押え、差押えの命令、通知が発送された。

 

などです。銀行からの請求によって期限の利益が喪失する事由としては、

 

  • 企業が銀行に対して、融資の返済の一部でも遅れた。
  • 銀行に入れている担保について差押え、競売手続き開始があった。
  • 銀行取引約定書や金銭消費貸借契約書の約定内容に違反した。
  • 企業の財務状況、資産、経営、業況など、銀行への報告や書類に虚偽の内容があった。
  • 他、銀行が債権保全を必要とする相当の事由が生じたと客観的に認められる。

 

などです。これらの事由により銀行が期限の利益を喪失すれば、定期預金は解約できなくなります。特に、リスケジュール、つまり融資返済の減額・猶予の交渉開始後は、定期預金の解約が困難となりますので、そういう時が将来、来ないともかぎらないと考え、定期預金の解約は早めにやっておいた方がよいのです。

 

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