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銀行からの金利引上げ要求を跳ね返す方法

銀行は、融資をしたい企業へは、他の銀行も融資をしたい中で融資競争に勝つため、低い金利での融資提案を行うことになりますが、一方で銀行が融資をしたくない企業に対しては、銀行は既存の融資の、金利の引上げを要求してくることがあります。

 

金利引上げを銀行から要求された場合、銀行の言うがままに金利を引き上げていれば、この会社は銀行が要求したことをすぐのんでくれる会社として、さらに銀行からいろいろな要求をしてきます。銀行の金利引上げ交渉には簡単に応じず、対抗していきたいものです。

 

金利引上げの要求で一番多いのが、業績が悪く、銀行からつけられている債務者区分(正常先・要注意先・要管理先・破綻懸念先などの区分)が悪い区分となった企業や、融資の返済の減額・猶予、つまりリスケジュールを行おうとしている企業です。

 

金利の引上げ要求には、経営改善計画書を作成し、そこで経費削減計画を書いてその中で利息の削減も書いて銀行と交渉していくことが一番ですが、企業と銀行との面会での交渉において、銀行の要求を跳ね返す手があります。

 

次の交渉例を見てください。

 

銀行:「御社は債務者区分が要注意先に落ちたため、弊行としては御社に金利を引き上げてもらわなければならなくなりました。債務者区分が悪い先は、貸倒引当金を銀行として積まなければならず、そのため金利引上げが必要なのです。」

 

企業:「金利の引上げですか。困りましたね。どれぐらいの金利引上げを考えていらっしゃるのですか。」

 

銀行:「現在お出ししている融資は、平均金利は2%前半ぐらいですが、それを一律2%引上げさせていただきたく思います。」

 

企業:「しかし弊社は、御行で、融資だけでなく振込・売上入金・手形取立なども行い、その手数料収入でも貢献しているはずです。また融資は合計1億3000万円ですが、一方で預金も4000万円以上の残高を保つように置いています。また御行の関連会社のリース会社でもリース取引をしています。融資利息以外でも多く貢献しているのに、債務者区分のことだけで金利引上げを要請されるのでしょうか。」

 

銀行:「はい。ただ、債務者区分が正常先に戻った際は金利を引下げさせていただきますので。」

 

企業:「いや、信用できませんね。それを念書でお約束いただけるのですか。できないでしょう。融資以外の取引でも御行に貢献しているはずです。弊社がそれでどれだけ貢献しているか、ここ1年の数値を計算して見せてもらえませんか。」

 

銀行:「そのようなところまでは私も考えていませんでした。上司と相談してみます。」

 

企業:「また金利は、御行の調達コスト、経費率、御行が得たい利ざやで決まると聞いています。また弊社の債務者区分が悪くなり、信用コストが上がったから金利引上げを要請されているのでしょう。それら、調達コスト、経費率、利鞘、信用コストを数値で教えていただけませんか。」

 

銀行:「分かりました。後日、回答させていただきます。」

納得するまでは金利引上げに同意しない

実際、この銀行員はこの企業の金利引上げをあきらめ、次の金利引上げ候補先にターゲットを変えるでしょう。私が銀行員の時、金利引上げ交渉においてここまでの金利知識を持ち、交渉してくる経営者や経理財務担当者はいませんでした。

 

銀行員としては、金利に関する知識が深い経営者・経理財務担当者相手に交渉するのは大変だと思い、それ以上の金利引上げ交渉を諦めることが多いものです。

 

金利引上げは、企業が納得した上でなければ応じる必要はありません。銀行が金利引上げ交渉をしてきた場合、全ての疑問点を銀行にぶつけ、銀行からの回答を待つのが、金利引上げ要求を跳ね返す良い方法です。また銀行が回答してこなかったら金利が引き上げられないだけで、わざわざ企業から、回答期限や次の交渉日を設ける必要は全くありません。

 

企業側としては、納得するまで疑問点を細かく銀行員に聞いていくことがポイントです。そのためにも金利の知識はしっかりと身につけておきたいところです。

 

銀行に聞くポイントとしては、次のことがあります。いずれも具体的な金額を教えてもらうよう、要求することが大事です。

金利引上げを要求してきた銀行に聞くこと

・債務者区分や信用格付が悪化したことにより具体的にどれだけ信用コストが上がったのか、銀行が見ている貸倒率はどれぐらい上がったのか、貸倒引当金はどれだけ積み増すのか。

 

・銀行の金利の要素である、銀行の調達コストはどうか、経費率はどうか、銀行が得たい利ざやはどうか。

 

・自社は銀行に対し、融資以外の預金取引や付随取引で、どれだけ銀行に貢献しているのか。関連会社や役員従業員取引ではどうか

 

・他の、同様の債務者区分の企業は同様に金利引上げに応じているのか。ほとんどの企業が応じているのか。自社だけに不公平な扱いをしようとしているのではないか。

すぐに融資を引き上げられることはない

銀行から金利引上げ交渉があり、すぐに応じてしまう経営者は、決まって「もし金利引上げを断ったら、融資がすぐに引き上げられてしまうのではないか。」というおそれがあるものです。

 

しかし、そんなことはありません。金利交渉がこじれたとの理由で、融資の返済は強要されません。もし返済を要求されるのであれば、金利以外の別の理由があってのことでしょう。

 

しかし返済できないものは返済できないので、返済要求にも応じる必要はありません。ただし競売や保証人取立てなど強制的な回収を銀行から行われないよう、一括では返済できなくてもどのように少しずつ返済をしていくか、銀行と円満に交渉していきたいものです。

銀行員は金利交渉の後ろめたさがある

実は金利引上げ交渉を行ってくる銀行員も、後ろめたい気持ちがあるものです。

 

  • 一つ目は、金利を引き上げることで、ただでさえ苦しい状況の企業をさらに苦しめてしまうのではないか。
  • 二つ目は、金利を引き上げることで銀行として大事な取引先を失ってしまうのではないか。

 

私は銀行員時代、5,000万円以上の融資を出している要注意先企業に、別の銀行に担保ごと全て借り換えられてしまったことがありました。その銀行は、担保が十分にあることを見て、要注意先企業であっても融資を出したのでした。

 

要注意先企業であっても、自分の銀行をメインにしてくれていた企業が別の銀行に乗り換えることにショックを受けたものです。

 

銀行の収益源は融資の利息収入以外にも、手数料や役員従業員取引など、いろいろあるものです。債務者区分が悪い企業でも、他の銀行に行ってしまうのはさびしいものです。

 

そのような金利引上げ交渉の後ろめたさがあるが、本部からの指示、支店長からの指示により、金利引上げ交渉は行わざるをえないのが銀行員の実態です。そのため、企業側が抵抗すればおとなしく諦めてくれる銀行員は多いものです。

 

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