中小企業等経営強化法案って何? その11
長いシリーズとなった、「中小企業等経営強化法案って何?」も、今回と次回で一区切りとなります。
今回は、本法案(既に国会で可決されていますので、本当はもう「法」ですが)による中小企業評価における最重要ポイントである「生産性」について触れます。
「生産性」の改善とは
同法による中小企業評価の指針である、ローカルベンチマークによれば、生産性に関する指標は
・労働生産性(営業利益/従業員数)
・営業運転資本回転期間((売上債権+棚卸資産-買入債務)/月商)月
の二つが提示されています。労働生産性については、「従業員一人あたりの利益」という人に対する生産性と言えますし、営業運転資本回転期間については、「運転資金の回転期間が短い=資金が効率的に回っている」という形で、手許の当座資産の生産性(効率性)と言うことができるでしょう。
この二つは、これまで直接的に、という意味では銀行の財務評価で登場することが少なかった(今会社を畳んでも貸したお金を回収できるか、という意味ではあまり重要ではない指標)でしたが、「生産性」の改善を基盤に「稼ぐ力」を持つ企業を救済する、という国家の意思という点では確かに妥当な考え方ではないでしょうか。
さて、この背景を確認しましょう。
背景にあるのは「自社努力による改善」を浮き彫りにすること
どうして、人や資産の生産性改善に焦点が当たるのでしょうか?何故かというと…、人や資産は元々会社が持っているものであり、その生産性(率)の改善は、景気や環境の変化の影響を受けにくいものだから、つまり、経営者自身の改善努力が最も浮き彫りになるポイントだから、です。
中小企業は自らコントロールできない外的要因によって売上も利益も大きく変わりますが、理論上、生産性は比較的内的な要因、自らコントロールできるものとされます。
そんな内的要因=生産性を重視することで企業・経営者自らの改善努力を評価しようというのがローカルベンチマークによる生産性評価の背景です。
正しく努力した企業がより評価されやすい、という意味でこれまでより一歩進んだ内容と考えます。
実務上使える、他の生産性指標
生産性の指標は、企業自らが銀行に提示し、経営力向上計画内の重要指標とすることもできます。
これまでも、これからも私がよく使用している指標を二つ、紹介しておきます。
・人件費 / 売上総利益 (%)
いわゆる、簡易的な労働分配率です。業種や売上原価の計上方法にもよりますが、40%~50%程度が適正とされることが大半です。が、単に一般的な数値と比較するだけでなく、過去の実績値や、今後のモデル損益の中での値を踏まえ自社の適正値を定義するとよいでしょう。
・営業利益 / 売上総利益 (%)
粗利の中からどれだけの営業利益が残るか、という意味で経費全体の費用対効果を図るものであり、経費に対する利益の生産性と言えます。人件費以外の経費も大きい企業の場合は、労働分配率だけでなく、こちらの指標も用いるとよいでしょう。
もう表面上の最終利益だけ取り繕うことに意味はありません。真の改善を行い、それをアピールすることが求められています。
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