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商工中金の不正融資に業務改善命令

正直なところ、私が銀行員の時に「不正融資をしたことがありますか?」といわれれば一応、ないはずです。少なくとも、自分の身に覚えのあるものは、本当にありません。

 

…が、銀行員が規定の範囲内でギリギリの対応をする、そんなことはありえます。

 

例えば、評価方法に複数の選択肢がある場合には、必ず評価が上がる(融資が出る)方を選択する…
ゴホン。

 

銀行が融資先企業の財務評価をする時にはシステム的に決算数値を入力するのですが…、四捨五入の仕方、入力単位を百万にしたり、千にしたり…すると誤差がでるけれど…
ゴホンゴホン。

 

業種によって評価が変わってしまう場合、複数の事業を持つ企業の業種登録を見直してみたり…
ゴホンゴホンゴホン。

 

本当は、企業が本来もつ成長性を評価すればいいのですが、どうしても手が届かないときに頭をよぎる、あまりにもセコい、でも切実な悪あがきです。

 

その是非はここでは議論を省きますが、現在もっと大規模で、悪意のある不正融資がニュースになっています。

 

商工中金の不正融資に業務改善命令

 

商工中金の不正融資が大規模に行われていたとして、9日中に業務改善命令が出るとの報道が出ています(9日9時時点)。

 

災害などにより一時的に業績が悪化した企業への融資商品「危機対応業務」の融資実績を増やすために、取引先企業の決算数値などを改ざん、売上や利益を減らして融資を実行する、という手口で、判明しているだけで、800件以上、200億円程度の不正融資を行ったことが明らかになっています。

 

 

何が問題?

 

通常、不正融資のための決算操作といえば、企業が赤字を黒字にみせかける粉飾が思い当たりますが銀行が、しかも企業の決算数値を悪くすることで融資する、ということに違和感を覚えますでしょうか?

 

また、不正は不正、だが融資をしてくれる分には有難いのかな?と思ってしまったりするでしょうか?

 

そんな方からご質問もいただきましたが、これは不味いです。悪意があるといわざるを得ません。

 

本件は、「融資してくれた」ものではないのです。

 

 

パッケージの融資商品は、「その目的のためのもの」

 

 

「危機対応業務」の融資は、信用保証協会のセーフティネット同様に、天災など、企業の責任とは言い難い外部要因によって一時的に売上や利益が減少してしまった企業を支援するために存在しています。

 

今回の不正融資は、

 

・上記の売上・利益減少が起こっていない企業に
・起こったことにして、融資をすることで
・本商品のために用意された予算を使い切ってしまい
・本来そのような融資を受けるべき企業が受けられなくなる

 

ことが問題です。

 

「天災などで困っている企業に融資をこんなにした」ことを見せかけ、実際にはそれと関係ない企業に融資を行っていた、それも数十件なんてレベルではない…。

 

さすがに、個人レベルの責任とはいえないです。

 

 

勝負は、本件の収束後

 

 

しかし、私としては、本件で商工中金の手が縮み、新規融資全般に及び腰になることが一番心配です。

 

責任の所在を明らかにし、再発防止に努めることは、求められるとしても、それ以上に「新たな融資に真っ向から取り組む」方向に動いてくれることを、心から願いたいところです。

 

商工中金は、民営化の途上とはいえ未だ公営の銀行であり、民間の銀行とは異なる対応からの支援を行うことがしやすい立場なのですから。

 

弊社のお客様でも、商工中金に救われた企業は多いのです。今後は、このようなニュースも増えていくことでしょう。折に触れて紹介してまいります。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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