コンピュータに頼りきってしまっているビジネスローン審査
多くの中小企業が、都市銀行を中心に、ビジネスローンを借りています。
ビジネスローンは、オリックスやクレディアなど保証会社の保証が付いているものもあれば、保証が付いていないプロパーのものもあります。
ビジネスローンは、コンピュータが企業の決算書のスコアリングを行い、その点数で融資の可否や融資の実行額、返済期間、金利などの諸条件が決まるものですが、元銀行員の私から見れば、よくこの会社に融資を出したなあというケースもよく見かけます。
今日、ある都市銀行の行員に聞いたのですが、その銀行ではビジネスローンは、融資審査の経験もない融資の素人の行員が事務処理をし、コンピュータで審査が通れば、それだけで融資を行っていたそうです。
そのようないい加減な審査を行っていれば、当然、ビジネスローンを融資した会社が破綻して貸し倒れとなることが多くなってしまいます。
その銀行は、2年程前からビジネスローンをやめてしまいましたが、今は、そのようなことがMS銀行やMU銀行にも発生しているように思えます。
ある程度経験を積んでいる銀行員なら、粉飾決算は見破ることができるものです。
売掛金や在庫を膨らます、粉飾決算の基本。売上に対して、明らかに売掛金や在庫が多く、実質的に債務超過であることを見破ることが可能な決算書に対しても、ビジネスローンを出しているケースをよく見ます。
そのようなケースを見るに、そんな簡単にビジネスローンを出していいのかな、と私は感じてしまいます。
中小企業から見ると、そのように審査が甘いことはいいことなのかもしれないですが、元銀行員として見ると、コンピュータだけの審査ってこわいなあと思ってしまいます。
そのような明らかな粉飾決算でも、コンピュータの審査が通ったからといって、融資を出してしまうと、企業にとってもよくないのでは、と思います。
なぜなら、粉飾決算を使ってでも融資を受けることができれば、経営者はどうしても安心してしまうからです。
融資を受けることに力を注ぐのではなく、赤字体質を早く黒字体質に転換することこそ力を注がなければならないのに、融資を受けることで安心してしまい、黒字化対策を怠ります。
そうなると、粉飾決算を作って融資を受け、また資金が尽きそうなころにさらなる粉飾の上塗りをして融資を受け、・・・
というスパイラルに陥り、気づいたときは膨大な負債を抱えてしまいます。
負債が少ないときに黒字化対策を行って会社の再生をはかっていくことと、負債が大きくなって初めて黒字化対策を行おうとすること、どちらが会社の再生をはかりやすいかは、言わずもがなです。
コンピュータに頼りきった甘いビジネスローン審査は、このような悲惨な中小企業を多く作ってしまうという危険性があります。