部門別会計をやらない会社はなぜ危険なのか?黒字・赤字部門を見抜く部門別損益の作り方
「会社全体では黒字だから大丈夫」複数の事業を手がける会社で、そう考えているとしたら危険です。全社の損益は黒字でも、その裏で特定の部門が大きな赤字を垂れ流し、好調な部門の利益を食いつぶしているケースは少なくありません。それに気づけるかどうかを分けるのが、部門別会計(部門別損益)です。
本記事では、部門別会計をやっていない会社に何が起こるのかを実例で示したうえで、中小企業でも無理なく続けられる部門別損益の作り方のコツを解説します。私たちエクステンドは認定支援機関として、数字が見えずに判断を誤った会社の再生を数多く支援してきました。その視点から「見える化」の勘所をお伝えします。
この記事のまとめ
- 複数事業を持つ会社が部門別会計をやっていないと、どの事業が黒字でどの事業が赤字かが見えず、全社が赤字に転落して初めて気づくという最悪の事態を招きます。
- 実態に合う部門別損益を作るコツは3つ。①売上は現金主義で計上、②支払は発生主義で計上、③共通経費は原則「人数按分」で配賦します。
- 完璧を目指すより、できる範囲で毎月継続して作成することが何より重要です。
部門別会計(部門別損益)とは、事業部門ごとに損益を把握する仕組み
部門別会計とは、複数の事業を行っている会社で、事業部門ごとに損益を出す会計です。会計ソフトで仕訳ごとに部門を分けて入力すれば、それぞれの事業の売上・原価・経費が部門別に計算されます。これにより、どの部門が利益に貢献し、どの部門が赤字で足を引っ張っているのかが一目で分かります。
部門別会計をやっていないと、何が見えなくなりますか?
事業部門を分けられる会社で部門別会計を行っていないと、どの事業が黒字でどの事業が赤字なのかが分からなくなります。見えるのは「全社の合計損益」だけ。好調な部門の利益で不振部門の赤字が覆い隠され、問題が表面化したときには手遅れ、ということが起こります。
部門別会計をやらない会社に起こる「こわい」こと
具体例で見てみましょう。不動産を仕入れて販売する「転売部門」と、売買・賃貸の仲介を行う「仲介部門」を持つ不動産会社があるとします。ミニバブルで転売部門は大きな利益を出す一方、仲介部門はずっと赤字でした。この会社の部門別損益は次のとおりです。
| 決算期(百万円) | 転売部門 | 仲介部門 | 共通経費 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| ×0年6月期 | +130 | △50 | △30 | +50 |
| ×1年6月期 | +80 | △40 | △30 | +10 |
| ×2年6月期 | +10 | △40 | △30 | △60 |
黒字に見えて、実は危険な状態とはどういうものですか?
部門別会計をやっていれば、仲介部門が一貫して赤字だと明白になり、早い段階で黒字化対策、あるいは仲介部門からの撤退という判断ができたはずです。ところが部門別会計をやっていない会社に見えるのは「合計+50→+10→△60」という数字だけ。転売部門の利益が縮んで全社が赤字に転落した×2年6月期になって、ようやく慌てふためくことになります。これが、部門別会計をやらないことの恐ろしさです。
「どの事業が会社の足を引っ張っているのか、はっきりさせたい」その判断材料は、正しい部門別損益から生まれます。撤退・縮小の決断にお悩みなら、一度ご相談ください。
実態に合う部門別損益を簡単に作る3つのコツ
部門別損益は、作ってみたものの「なんだか実態と合わない」と感じて活用できず、いつのまにかやめてしまった——そんな声をよく聞きます。できるだけ簡易に、それでいて実態に合い役に立つものにするための3つのコツを押さえましょう。
売上はどう計上すればよいですか?
売上は現金主義で計上します。発生主義で管理しようとすると、どうしても在庫が増え、表面上の利益が実態から離れていきがちです。会社の経営の安定は仕事に対する入金があってこそ成り立つもの。部門別損益は実際の入金額で測定したほうが、実態に近いものになります。
支払はどう計上しますか?売上と揃えなくてよいのですか?
支払は発生主義で構いません。いつかは支払うものですから、早めに計上してしまいます。売上は現金主義、支払は発生主義、一見ちぐはぐに思えますが、ポイントは「自分で管理できるかどうか」です。売上入金は相手が支払って初めて成立する「相手次第」のもの。一方、仕入の支払は「自分で決めて支払う」もの。コントロールできない売上はより確実な現金ベースで、コントロールできる支払は発生ベースで、と考えると筋が通ります。
共通経費は、どう各部門に振り分けますか?
共通経費の配賦ルールには、売上金額・利益金額・原価金額・人数・売場面積などに比例して按分する方法があります。特に理由がなければ、人数に比例した按分をおすすめします。売上や利益に比例させると「数字を伸ばした部署ほど経費負担が重くなる」ことになり、成果を上げた者が報われない結果を招きやすいからです。なお共通経費の大半は本部・管理部門の固定コストですが、部門別に実額で切り分けられるものは切り分け、按分計算する部分はできるだけ少なくするのが望ましいでしょう。手間をかけ過ぎると継続が難しくなるため、金額の大きいものから優先して考えます。
「部門別損益を作ってみたが、どう経営判断に活かせばいいか分からない」数字を再生・改善のアクションに変えるところまで、専門家が伴走します。
部門別損益は毎月継続してこそ意味がある
大事なのは、あくまで毎月継続的に作成することです。まずはできる範囲で作ってみると、「分かっているつもり」だったことから別の切り口が見えてきます。やり方が分からなければ顧問税理士に聞き、もし教えてくれないのであれば、教えてくれる税理士へ顧問を変更することも検討すべきです。事業部門を分けられる会社にとって、部門別会計は再生・改善の出発点になります。






