全面的に任せてもよいものか?
私どもにご相談にこられる企業にありがちな一つのパターンとして、「一社員の影響」により業績が悪くなった、というものがあります。
一社員の影響の例として、次のようなものがあげられます。
・経理の社員が、お金を横領していて、会社は損失を多く出した。
・発注担当の社員が、高い仕入や外注費などの見積りを業者から受入れ、裏でその業者からバックマージンをもらっていて、会社は損失を多く出した。
・一営業マンが売上の多くを作っていて、その営業マンが辞めたとたん、売上が大きく下がった。
これらの事象が起こった根本の原因を考えてみると、経営者が、一社員に会社の重要な業務を任せすぎてしまっていた。
ということになります。
なぜ経営者が、このような状態になるまでほったらかしにしてしまったのか。
企業経営を行っていくためには、経営者は会社のすみずみまで注意深く見ていく必要があります。
会社にはいろいろな職務がありますが、ある職務において、全面的に任せられる社員が出てくるまでは、経営者はその職務を兼ねるべきであり、はじめからある職務について全面的に任せようとすると、上記のようなひずみが出てきてしまいます。
また、ある職務を全面に任せられるのであっても、経営者としてはその職務について一通り熟知し、その担当者と情報交換すべきであります。
例えば、弊社の例を見ますと、
弊社には、管理部門として、総務部、経理部、人事部、広報部、法務部、経営企画室の6つの部があります。
総務部、経理部、経営企画室にはそれぞれ部長がいます。
しかし、人事部、広報部、法務部は、社長である私自身が、部長を兼ねています。
総務部、経理部、経営企画室においても、私はそれぞれの部長の職務を一通り熟知し、たえず指示を行い報告を受けております。
人事部、広報部、法務部においては、私よりもその職務に詳しい人、仕事ができる人が出てきたら、その人を部長にして職務を任せるかもしれません。
しかし、このような職務を全面的に任せられる社員がまだ出てきていませんし、全面的に任せることが出てきて部長においたとしても、経営者としてはその部長と絶えず関わっていくべきと思っています。
中小企業は、経営者が全てです。経営者自身が、会社のすみずみまで目を届けなければいけません。
経理であれば、経営者も仕訳や銀行入出金明細を時々チェックし、問題がないか見ます。
発注業務においては、相見積状況、発注履歴などを時々チェックして、不自然な動きがないかを見ます。
営業活動においては、営業マン個人のスキル便りではなく、会社全体で、営業成績があげられる仕組み作り、例えば会社としての顧客リスト管理、営業マンの教育研修、ロールプレイングなどを行います。
企業規模がまだそんなに大きくない中小企業ですから、これらの目配りは、経営者としてできるはずです。
もっと企業が育っていくと、経営幹部に任せていったり、内部監査制度を整えていったりしますが、今のうちは、経営者がすみずみまで見ていかないと、社内はしっかりしませんし、あるきっかけで業績は急降下したりします。
今回述べたことは、会社経営において大変重要なポイントですので、自社はどうであるか、振り返ってみてください。