なぜ売上が上がらないのか?中小企業経営者が陥る5つの罠と抜け出す方法
「今月は売上が大きく落ちた」「何年も売上が上がらない」「セミナーで学んでも変わらない」こうした悩みを持つ中小企業経営者は多いです。しかし、その原因のほとんどは外部環境ではなく、自社の内部にあります。
本記事では、売上が上がらない会社が共通して陥っている5つの罠を整理し、それぞれの抜け出し方を解説します。
目次
罠①:売上が下がる原因を景気や業界のせいにしていないか?
コンサルタントとして多くの経営者とお話しますが、売上が上がり続けている経営者と、下がり続けている経営者の間には、明確な「思考の違い」があります。
| 売上が上がり続けている経営者 | 売上が下がり続けている経営者 |
|---|---|
| いつでも前向き | いつでも後ろ向き。たまに前向きになってもすぐ戻る |
| 売上を上げるために何をするかを常に考え続けている | 売上を上げるために何をするか、考えることが少ない |
| 売上が上がらないのを景気や社員のせいにしない | 売上が上がらないのを自分に原因があるとは思わない |
| 仕事にかける情熱が大きい | 仕事に情熱をかけられない |
| 自分に厳しく、他人にも厳しい | 自分に甘い |
| スピードが速い | スピードが遅い |
| 常に行動していないと気が済まない | 行動を起こすことが少ない |
その企業が売上が向上していくか下がっていくかは、経営者の思考にかかっています。経営者の思考が習慣になり、会社全体に波及し、会社の将来の売上を左右することになります。もしあなたがこのような思考に陥ってしまうのであれば、それを変えていく必要があります。
売上が急落したとき、まず何を確認すべきか?4つの要因と分析方法
売上が大きく下がった時に経営者は当然、その要因を探ります。売上が急落する要因には、主に次の4つがあります。
要因①:季節的な要因
例えば飲食店では、12月の忘年会シーズン・3〜4月の歓送迎会シーズンに売上が上がり、そのようなイベントがない月は売上が下がります。季節的な要因が考えられる場合、必ず前年・前々年も同じように月次売上が推移しているはずです。それが確認できれば、季節要因が主因と判断できます。
| 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 12月 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 28年 | 320 | 210 | 410 | 350 | 240 | 490 |
| 29年 | 330 | 250 | 390 | 400 | 270 | 480 |
上記のように5月が例年下がる月であれば、季節要因と判断できます。
要因②:ある販売促進をやめた
今まで行ってきた販売促進をやめたことで売上が大きく下がることがあります。コスト削減目的でチラシをやめた結果、売上が激減するケースが典型例です。広告宣伝費の削減は売上低迷の引き金になりやすいため、削減前に必ず広告効果の計測を行うべきです。
| 広告 | 売上 | 粗利益 | 広告費 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 広告A | 120万円 | 48万円 | 20万円 | 継続 |
| 広告B | 20万円 | 8万円 | 30万円 | 削減対象 |
| 広告C | 350万円 | 140万円 | 80万円 | 増額検討 |
広告費が多いからといって削減すると、広告Cのような高効果の施策まで止めてしまい、売上が一気に失われます。
要因③:大口得意先からの受注減
売上が少数の得意先に依存している企業は、そのいずれかからの受注が減少すれば売上が大きく下がります。
| 年商1億2,000万円の企業(依存リスクの例) | |
|---|---|
| A社から | 4,200万円(35%) |
| B社から | 2,600万円(22%) |
| C社から | 2,200万円(18%) |
| 他20社から | 3,000万円(25%) |
A社からの受注が半減するだけで、年商は一気に2,100万円減少します。特定取引先への依存リスクを常に把握しておくことが重要です。
要因④:外部要因
自然災害・風評・強力なライバルの出現・法改正・自社の悪い評判などが外部要因として考えられます。上記3つの要因に当てはまらない場合、外部要因を確認します。
それでも原因が見つからない場合、売上には「バイオリズム」的な波があります。2〜3ヶ月様子を見て自然に回復すればバイオリズム的なもの。それ以上続くなら必ず原因があるので、早急に探し出して対策を打たなければなりません。いずれの場合も、売上が下がった月に何もしないのはいけません。模索し行動し続けることが必要です。
なぜ一時的な売上回復が長続きしないのか?「フロック的売上」と「仕組みの売上」の違い
知人からの紹介などにより売上が一時的に上がっても、またすぐに元に戻ってしまう——そのような相談をよくいただきます。
売上向上の過程には、次の2種類の売上が存在します。
| 種類 | 特徴 | 持続性 |
|---|---|---|
| フロック(まぐれ)的な売上 | 紹介・偶然・一時的なキャンペーンによる売上 | × 定着しない |
| 仕組みによる売上 | 「売上が上がる仕組み」の構築によって生まれた売上 | ○ 持続・拡大する |
企業が売上を向上させていくには、いかに「仕組みによる売上」を作れるようにするか、意識をもって取り組んでいくことが必要です。また、そのための「売上が上がる仕組み」構築のスピードを早めること。売上がなかなか上がっていかない会社の特徴を見ていると、スピード感に欠ける、ということをよく見ます。
なぜセミナーや本で勉強しても売上が上がらないのか?
マーケティングのセミナーに参加したり本を読んだりして勉強しているのに、売上が上がらない——そのような経営者に共通する問題は2点です。
問題①:すぐにあきらめてしまう
例えばリスティング広告を例にとると、1か月・5万円の予算で広告を出し、問合せが3件だったとします。
売上を上げていくことができない経営者は「3件しか来なかった」と見てあきらめます。
売上を上げていくことができる経営者は「今月は3件、来月は6件にするために、ホームページのここを変えよう、広告文のここを変えよう」と考えます。そして後者の経営者が「売上が上がる仕組み」を構築していけるのです。
問題②:奥深いところまで入り込んでいない
リスティング広告を出すとともに、ホームページの作り方、問合せの誘導の仕方、問合せ後のフォロー営業の仕方など、多くの工夫を積み重ねることで「売上が上がる仕組み」が構築されます。
しかし売上を上げていくことができない経営者は、「リスティング広告を出せば売上が上がるらしい」という表面しか見ていません。1か月行って売上が上がらないから「効果がない」としてやめてしまうのです。
単なる戦術の一つにすぎない施策を、あたかもそれだけを行えば売上が上がる「魔法の杖」と見てしまうのが、売上が上がらない経営者の典型的な誤りです。
売上向上の「土台」なしに施策だけ打っても意味がない|絶対に行う4つのデータ整備とは?
売上を向上していくにあたってまず第一に行うべきこと、それはデータ整備です。これはあなたの会社が売上を向上していくための土台というべきものです。これがなければ、売上向上への取組のスタートも切れません。
| 整備項目 | 内容 | ツール |
|---|---|---|
| ① 顧客・見込客データ | 取引先・見込客の基本情報を一元管理する | CRM推奨(Excelは連動が難しい) |
| ② 時系列の販売情報 | 顧客ごとにいつ・何を・いくらで販売したか記録する | CRM |
| ③ 接触情報 | いつ・どのような営業を顧客・見込客に行ったか時系列で把握する | CRM・商談記録 |
| ④ 接触のきっかけ | 顧客が最初にどこで自社と接触したか(HP・DM・紹介など)を記録する | アクセス解析・問合せフォーム |
④の接触きっかけを把握しておくと、広告の費用対効果計測に直結します。10万円の広告で30万円の利益が出ると分かれば、次は30万円の広告費をかけられます。必勝パターンができれば、広告を出せば出すほど利益が大きくなる構造を作ることができます。
これら4つのデータ整備は「やった方がよいこと」ではなく、「絶対にやらなければならないこと」です。エクステンドは創業以来これらのデータを全て整備してきており、それが営業活動の土台となり、創業6年で年商7億円につながっています。
売上停滞期にこそやるべきことは何か?ブレークスルーを起こす準備の仕方
売上が向上してきている企業には、その過程において必ずブレークスルー(breakthrough)のポイントが何回かあります。ブレークスルーとは困難や障害を突破すること、その突破口のことです。
例えばエクステンドの売上推移を見ると、次のような停滞期がありました。
| 年度 | 年商 | 備考 |
|---|---|---|
| 2005年9月期 | 3,000万円 | |
| 2006年9月期 | 1億400万円 | |
| 2007年9月期 | 1億2,800万円 | ← 伸び鈍化(停滞期) |
| 2008年9月期 | 2億7,900万円 | ← ブレークスルー |
| 2009年9月期 | 5億3,500万円 | |
| 2010年9月期 | 7億2,000万円 |
売上停滞期に「ほっておけばいつかよくなる」と何もやらないでいると、売上は停滞し続け逆に減少していきます。停滞期にこそ、次のことをやっておきます。
- 売上向上のための本を読んだりセミナーに参加して知識を蓄える
- 集客手段を多く発掘し少額でテストを行う
- 集客できていないホームページを集客できる形に作り替える
- 売上が伸びた時のための受け入れ体制を固めておく
- 顧客データ管理体制を整備しておく
- 社員を育成し、経営者が営業に専念できる組織を作る
ブレークスルーは意識的に起こすものではなく、いきなり起こるものです。それが早く起こるように、停滞期にこそ準備を行うべきです。また、コンサルティングに入った月から一気に売上が大きくなることはなかなかありません。たまたまその月から上がったとしても、それは「地に足の着いた」売上ではありません。売上停滞期にやれるべきことをやっておき、売上がブレークスルーする時を待つ。それが本当の売上向上です。
売上が上がらない5つの罠と抜け出し方|まとめ
| 罠 | 抜け出し方 |
|---|---|
| ① 原因を外部に求める | 経営者自身の思考パターンを見直し、前向き・行動・スピードを意識する |
| ② 急落要因を正確に分析しない | 季節・販促停止・大口減・外部の4要因を順番に確認し、原因を特定する |
| ③ フロック的売上に安心して仕組みを作らない | 「仕組みによる売上」の構築を意識し、スピード感を持って取り組む |
| ④ 学んで満足してあきらめが早い | 施策の奥深くまで入り込み、数字を見ながら改善を継続する |
| ⑤ 土台(データ整備)を作らずに施策だけ打つ | 顧客データ・販売情報・接触情報・きっかけの4つを整備してから施策を打つ |
よくある質問
Q. 売上が急落したとき、季節要因かどうかはどうやって判断しますか?
A. 前年・前々年の同月の売上データと比較することで判断できます。3年分の月次データを並べてみて、毎年同じ月に売上が落ちているパターンが確認できれば、季節要因が主因と判断できます。逆に例年とは異なるタイミングで急落している場合は、販促施策の停止・大口取引先の受注減・外部環境の変化など他の要因を疑ってください。月次推移の3年比較グラフを作っておくと、判断が容易になります。
Q. 売上データの管理はExcelで十分ですか?CRMは必要ですか?
A. Excelでも始めることはできますが、顧客ごとの販売情報・接触履歴・きっかけの3点を時系列で連動させて管理しようとするとExcelでは限界が来ます。CRM(顧客管理システム)はこれらを一元管理できるため、売上向上の土台を構築するうえで中長期的には導入を推奨します。まずExcelで顧客リストを整備することから始め、管理が複雑になった段階でCRMに移行するという順序でも問題ありません。
Q. コンサルタントに依頼すれば、すぐに売上は上がりますか?
A. コンサルティングに入った月からすぐに売上が大きくなることはなかなかありません。たまたまその月から上がったとしても、それは「地に足の着いた」売上ではなく長続きしません。売上停滞期にやるべき準備(データ整備・集客テスト・仕組み構築)を積み重ねていくことで、ある時点でブレークスルーが起こります。「特効薬」を求めると地に足が着かない売上になり、かえって長続きしません。
Q. 売上停滞が3ヶ月以上続く場合、どこから手をつければよいですか?
A. まず本記事の「売上急落の4要因」を使って原因を特定してください。原因が特定できたら、それに対応した施策を打ちます。原因が特定できない場合は、①顧客データの整備、②全既存客へのカバー率向上(月1回の接触)、③広告効果の計測と見直し、の順で取り組んでください。売上が上がらないのは商品・サービスが悪いのではなく、「売上が上がる仕組み」がないことがほとんどです。まず仕組みの土台を築くことを優先してください。
Q. 売上が低迷したとき、新事業や新商品で立て直すことはできますか?
A. 売上が低迷している状態で新事業・新商品に活路を求めることは、ほとんどの場合うまくいきません。既存の商品・サービスが売れていないのは、商品が悪いのではなく「売り方を知らない」=売上が上がる仕組みがないからです。その状態で新商品を売ろうとしても、売り方が変わらない限り売れません。実際に、売上が低迷した建設業が全く経験のない飲食業に転換して大きな赤字を抱えるケースを多く見てきました。まず既存事業の「売上が上がる仕組み」を構築することが先決です。新事業はその仕組みができた後に検討してください。
Q. 売上が落ち込む季節に合わせて新しい商品を開発したいのですが、どう考えればよいですか?
A. まず確認すべきは、その発想が「売りありき」になっていないか、という点です。「夏に売れるものを作って売ろう」という発想は一見合理的に見えますが、売り手の都合から商品を考えているため、実際に売れる可能性は低くなります。商品開発の正しい出発点は、お客様の声を集めることです。既存の顧客は今、何が売れているのか。何を求めているのか。何に困っているのか。そのような話をじっくり聞き、顧客ごとに記録としてためていくことができれば、自ずと「売れる商品」のヒントが見えてきます。季節要因の解消策も、自社の思いつきではなく顧客の声の中にあります。
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