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「粉飾決算」はどのようにして見破られているのか?その3

銀行が粉飾決算をどのように認識するのか、今回で3度目になりますが、今回は借入と減価償却についてまとめます。

4.借入の粉飾について

何より、借入は多くが銀行から融資によってなされるものですから、この粉飾を行うことは銀行にとっては最も裏切り行為を解釈されるものであり、万が一にも今それを行ってしまっている場合、それに気づいてしまった場合には、その取扱には万全を期した上で解消へ向かわなければなりません。

借入の粉飾の構造

借入の粉飾は、大半の場合は銀行毎に借入の残高を偽ることで行われます。例:とある会社が、4つの銀行から合計250百万円の借入をしているとします。

 

A銀行:100百万円
B銀行:50百万円
C銀行:50百万円
D銀行:50百万円

 

ここで多重帳簿を作成し、

 

・A銀行には A銀行:100百万円 B銀行:50百万円 の借入

・B銀行には B銀行:50百万円 C銀行:50百万円 D銀行:50百万円 の借入

・C銀行には A銀行:100百万円 C銀行:50百万円 の借入

・D銀行には A銀行:100百万円 D銀行:50百万円 の借入

 

と、貸借対照表や勘定科目明細を操作して、借入の残高を見た目上減少させます。
この例では、全体で250百万円ある借入が、150百万であるように見え、差し引きで100百万円が貸借対照表上の負債の項目からなくなります。その分純資産の方を増やすことで、自己資本比率を上げたり、損益を改善させるような操作をしたりするのです。

要するに、多重帳簿

題目の通り、この操作は多重帳簿を作成することであり、前回の現金・預金に関わる粉飾よりもさらに悪質、と解釈されてしまいます。税理士先生の介在が疑われることはもちろん、社長や経理担当者加え、その周辺まで巻き込んだ「組織的な悪意」に基づくものとされることはもちろんですが、融資相手に融資状況を偽ってしまっていることから、詐欺を疑われる余地すら十分にあります。

 

さらに、多重帳簿でもなく、「そもそも貸借対照表に載せていない」という場合もあります。この場合は、多重帳簿というよりは「帳簿にしていない」ということですが、銀行から見て、「お金を貸す側である銀行全体に対して、その借りている金額を偽った」という意味でほとんど同じことです。

 

発覚する状況としては、

  • 保証協会申込時に、保証協会がA銀行経由で入手した決算書とB銀行経由で入手した決算書の違いに気付いたこと
  • 以前にもらった借入明細との整合性がつかなくなった
  • 試算表や決算書上での支払金利が、借入残高と比較して過剰に大きい
  • 資金繰り表や通帳を確認して、特定できない振込や現金出金による説明できない支払が継続的に存在する

 

ことに銀行(保証協会)が気付いたとき、というのが多いです。最も一度行ってしまった場合には、その対処が大変なものではありますが…、私がこれまで頂いた相談においても

 

「前任者がやってしまったものに後で気づいた」

「ノンバンクの借入で、個人扱いとしていた」

「他に会社を存続させる方法が、どうしても無かった」

 

等、ご事情はそれぞれに存在しており、何でもかんでもダメというだけでは本質的な解決にならないのが現実でしょう。

 

しかし、そうであったとした場合でも、最低でもその解消へ向かうことで、最終的に銀行やその他の利害関係者にも理解を求め、その後のしっかりとした財務管理と利益の計上により、その信頼を回復していくことを目指さなくてはなりません。

 

未来の企業の存続と発展については評価できる、信じられるという状況をつくり、それを前提とすれば、交渉の中で必要以上の大事になることは防止できるでしょう。銀行にとって最も大事なことは、「将来のある中小企業を金融支援すること」であり、経営にとって重要な基本は、「過去を振り返り、間違いを受入れ、その間違いを正していく」ことなのですから。

5.減価償却について

減価償却については、よく「表面上だけでも黒字にする」ため、償却金額を減らしたり、無くしたりする対応をしてしまうことが多いものです。

 

本件については、結論を先に申し上げます。

 

「銀行にとっては何の意味のない行為なので、無理をしてやるメリットは何もありません」

 

今日の決算書は、別表で減価償却がどれほどされているのか確認することができます。銀行では、融資先の決算データを社内のシステムに入力し、格付けを行いますが、減価償却が不足していることを認識すれば、その金額分を入力時に補正して「実質の損益」を再計算します。貸借対照表において、資産を時価評価により再評価をすることと同じように、損益についても実態に合わせて補正されているのです。

 

表面上の決算数値により審査の大半が終了するビジネスローンや、かつての安定化資金のような審査形態は、既に存在しません。そのようなことをしても、銀行にとっても、そして中小企業にとっても何ら意味を持たず、互いを疑う気持ちだけを増やしてしまうことを、ご理解頂ければ幸いです。

以上、3回に渡って粉飾決算の見破り方、を紹介して参りましたが、次回は粉飾について、最後にまとめを行いたいと思います。

 

執筆:今野洋之

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