なぜ「ヒト」が大事なのか
震災以降の厳しい経済情勢の中で、いろいろな経営者様とお話させて頂いていますと、以前以上に「ヒトが最も大事」という内容になることが、より増えているように思います。
政府やマスコミの報道を素直に信じてよいものかわかりにくい中で、より近くにいる、より前から知っている方々との繋がりを、より重要視する流れですが、日常の中でこのことを実感されていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
ここで改めて経営という観点で、今なぜ「ヒト」が大事と言えるのか、お伝えしたいと思います。
元々ヒトは会社の持つ最大の資産(但し、負債にもなる)
会社にとってヒトが大事と言われて、否定する方はそうそういらっしゃらないでしょう。しかし、以前は「口ではそう言っていても、実態としてはそうでなくとも問題がなかった」ため、今より切実な問題ではありませんでした。
なぜかといいますと、「効率よく生産することが、ヒトよりも優先されたから」。
需要>供給の状況下では生産してしまえば売れるため、どのように生産すればより安く、より多く生産できるか、というところに焦点を当てていれば、問題がなかったのです。
現在は、供給>需要です。
どんなに生産したとしても需要(≒購入者)は少ないため、売れるかどうかは別の問題です。どうしても売りたければ、安売りせざるを得ません。今、大半の中小企業が陥っている、とても大変な問題です。
この状態にはもう一つ、「余程のもので無い限りは、商品(サービス)そのものでいい・悪いの差がつかない」という問題があります。ネットや口コミでの噂も含めて、生産者が精魂こめてつくっても、中々それが伝わらない。
「性能」だけで言えば、同じような商品は他にもあるのです。そんな中で、価格勝負なんて挑もうものなら、適正な利益なんて出るはずがありません。だからこそ、当然お客様に選ばれなければなりませんが、お客様に日々直接お会いしているのは、年商が1億以上にもなってくると、社長や経営者の方ばかりとはいかなくなります。
営業担当者、もしくはお客様に面対する全ての社員様が、社長と同様な営業力を持てるかどうか、という勝負になることは明らかです。
こんなにもネットが普及し、デジタル化してきた世の中で、改めてヒトが問われているのです。商品やサービスの効率というものの価値が落ちてきた、というわけではなく、それらは一定以上あり、且つヒト(社員全員)で勝負できる、ということが求められている、というわけです。
一方、中小企業ではどんな「ヒトの問題」が起こっている?
しかし、ヒトというのは最大の資産であると同時に、最大の負債でもあります。社員の評価として「人財」「人材」「人在」「人罪」という区分を聞いたことのある方もいらっしゃるでしょうけれども、まさに人は財産でもあり、経営に対する邪魔ものにもなるといったところでしょうか。現在、二つの問題が大きく取り上げられています。
1. 経営者の高齢化と承継の問題
現在、全国の「社長の平均年齢」はおよそ60歳になりました。今後とも上昇が見込まれていますが、企業が存続・発展を考えるのならば、承継について考えなければなりません。税務対策や、取引先への面通しは勿論のことですが、銀行の債務や保証人に対しても安定的なものを用意し、何より事業や資産を残していない限り、承継を受ける側が耐えられません。そして何より、会社としての歴史や在り方・経営について、お伝えしなくてはならないことでしょう。
2. 今後の経営計画と人員計画との整合性
長期的な意味で景気の浮上がないと言わざるを得ない状況ですから、売上や事業の予測については慎重にならざるを得ません。企業にとって原価以外のコストで一番大きいものは人件費。人の配置と報酬への考え方は、企業の人に対する考え方そのものであり、手をつけないわけにはいきませんが、単純に減らせばいいなどというものではありません。企業にとっての人財は何か、というところから、経営者は考えなければならないのです。
中小企業は家族的な経営をしているからこそ、逆にヒトの問題に触れられない特性があります。しかし、現在の状況は、何よりも「ヒトから」。何よりも、会社が必要とするヒトとは、どのようなヒトなのか、というところから考えてみてはいかがでしょうか。