売上増加から赤字になるシナリオと広告宣伝費
赤字は、みんなを不幸にする
赤字でもいいと思って仕事をしている社長はいないはずです。何しろ、赤字というのは、大きな努力を費やして受注し、社員全員で頑張って商品やサービスを納入しその結果、最後に「お客様にお金までプレゼントしている」ということ。
これでは、ボランティアですらありません。会社としての活動に価値がなく、顧客にお金を差し出して役務を提供しているなんて、あまりに悲しすぎます。顧客に価値を提供できた上、頑張っている社員にも報えるようになりたい。
そう考えれば「赤字にならないように仕事の流れをつくり、役務に見合った対価を得る仕組みにしておく」ことが、経営者の使命ということができます。
社長がハマってしまう売上至上主義
売上は伸びているのに、資金繰りはいつまでたってもよくならない。これは、いろいろな会社で遭遇していることです。
このような状況下では、多くの社長は「売上が伸びている状態だから、辛抱していれば そのうち現預金が増えてくるのでは?」と思いがちです。
せっかく苦労して売上が増えてきたのだから、わざわざ否定したくないのは当たり前なこと。しかし、私の経験では、この状態が2年続いていれば裏側では状況が悪化していることがほとんどなのです。
売上好調なはずの会社が転落してしまう典型パターン
状況の悪化のパターンで、最も典型的な流れを紹介します。
(1)売上が伸びていることから、さらなる売上の獲得を狙い、広告宣伝費を増加する(もしくは減らさない)。
↓
(2)広告宣伝の投資対効果が気になるため、全社を上げて売上の獲得に注力する。つまり、ここで無理な売上獲得をする。
↓
(3)「無理に獲得した」売上分が、赤字化する。一方で、売上は増えていることから固定経費は増加、人員も過剰になる。
↓
(4)この状態をしばらく放置すると、売上の多くの部分が「無理に獲得した」売上になり、全社としての赤字になる。
このような流れです。最大の問題は、上記の(2)や(3)のところで、なかなか気づくことができないこと。
どうしても、
「せっかくとってきた売上なのに、なぜ利益にならないのか?」
という疑問は、
「おまえたちは、きちんと仕事をしているのか?」
という責任転嫁となって、社員へ向けられてしまいがちです。しかし中小企業の場合、広告宣伝というのは基本的に社長主導で行われます。
自社で提供できる商品やサービスと、きちんとマッチしていない顧客を獲得していても、それは会社にとって利益にならないことを意識しておかないと、上記のシナリオに陥ってしまいます。
したがって、社員の活動内容の質の向上を目指すこと、それ自体は大切なことではありますが、もう一点、”会社で獲得している顧客が、本当に会社にとって有益なのか”この点についても検証し、それは社長自ら改善していくことが必要になるわけです。
みすみす赤字になるような仕事をさせてしまい、皆で空回りしないで済むように。
企業活動における広告宣伝の効果は、試算表等の、中小企業が通常に入手できる資料のみでは判別しにくいため、ちょっと工夫が必要です。