良いことばかりの報告する社員
人は他人に良く見られたいという心理があって当然であるが、あまりにも自己を防衛してしまうと、真実が見えなくなり、ウソにウソを重ねてしまう。そして、業務に支障がでてしまい、その人は孤独になる。それは、誰も望んでいない悲しい結果である。
良いことばかりの報告
私 :「社長、会議の発言では利益が取れているようですが、実態と異なりませんか。」
社長:「こちらは数字を細かく見ているが、幹部は見ていないのだろう。」
私 :「見ていないというより、良いことばかりを発表しようとしていませんか。」
社長:「自分はできている、とアピールしたいのかもしれないな。」
私 :「できていること、できていないことの両方を振り返る習慣を付けないと、業務は改善しませんよ。」
社長:「次回からそういう発表に、会議を変えよう。」
心理学において人の記憶は、楽しい記憶が6割、普通の記憶が3割、辛い記憶が1割になるよう、自分の経験を心の中で整理するそうだ。この心理によれば、自分に都合の良いことは覚えているが、自分に都合の悪いことは、殆ど覚えていないということになる。
しかし、これが仕事においても同様に行われ、偏って記憶された場合、必ず業務に支障がでる。
例えば、以前も同じミスによって顧客に迷惑をかけ、上司からも厳重注意を受けたにも関わらず、前にもそのようなミスをしましたか、というような態度の場合である。
これでは、何度その人を指導しても、結果は改善しない。このような記憶は、意識してなのか、無意識なのかは不明であるが、管理をする立場の者は何らかの改善の策を打つ必要がある。
ある工務会議において、複数の工事現場別の利益状況を確認した際、黒字の現場は、経理が把握している数字より多少大きな利益額を発表し、赤字の現場は、経理が把握している数字の約3分の2の赤字額を発表した。
これは、先程の心理によるものか、それとも現場の管理が甘いのか、それとも両方なのか、いずれにせよ困った発表内容である。
そこで、この真実を突き止めるためには、突っ込んだ質問がいる。原価の内訳を発表してもらう。
材料費・外注費・労務費・経費、ひとつずつ確認していく。また、その発表された実績と予算の差額についても確認する。また、明らかに数字が違っている場合は、その原因も発表してもらう。
このように、どんどん深く質問をすると、ウソなのか、管理が甘いのかが明確にわかる。
また、そのやり取りは必ず議事録に残し、後で誰でも振り返れるようにしておくことも大切である。このように追求していけば、社員はうかつにウソを言えなくなり、また管理もしっかりしなければならないと思ってくる。
そのように管理者は、ある意味、部下を追い込みながら、部下を成長させることも必要である。そうすれば、管理ができる厳しい社風になり、会社の利益は残ってくる。