目標の連鎖
社員に目標を持たせ、その目標を達成させて欲しいと言われる社長は多く
いらっしゃいますが、社員の目標の土台が明確に示せる社長は、少ないと
思います。考える社員は多くはいないという事実を基に、何が必要かを社長が
示していきましょう。
私 :「社長、3年後の我社はどのようになっていたいですか。」
社長:「色々と思うことはあるよ。」
私 :「その内容は、社員に伝わっていますか。」
社長:「話をする機会があれば、話はしているが。」
私 :「社員の自律のためにも、具体的に示していただけますか。」
社長:「どういうことかな。」
全ての社員が、目標を持って自らの職責をまっとうして欲しいと社長は言う。
その半面、社員から、我社は将来どうなるのか、どこに向かっているのかと、
疑問や不安の声が聞こえる。このような状況で、いくら社長が日々厳しく管理
をしたとしても、思うような良い成果は残せない。
それは、社員が自らの職責をまっとうした際、会社がどうなるのか、
また自分がどうなるのかが分からないため、本気で取り組めないからである。
そもそも自らが高い目標の設定ができ、自律している社員は、社長がうるさく
言おうが言うまいが、自分が決めたことを粛々と実行している。
しかし正直なところ、このような社員は、社内にいったい何人いるのか。
多くの社員は、自らで目標の設定ができず、言われたから動くという人ではな
いだろうか。
会社が方向付けをしないと、多くの社員は動かない、いや、動けない。
だから、会社には、経営理念や事業計画などがある。
ここを明確に示し、かつその内容に社員が自分のこととして捉えない限り、
いくら社長が社員に向かって自らで目標を持てとか、日々改善しなさいと
言っても動かない。
本来、社員の目標は、会社の目標を達成するために落とし込まれたものである。
会社の目標が明確でない状況で、社員にのみ目標を設定させることは、
あり得ない。
必ず目標は、会社という上位から部門、そして社員へと連鎖するものである。
しかし、ある社長は、理念では儲からないと言う。またある社長は、経営計画
を作ったとしても来年のことは分からないので意味がないと言う。
ということは、会社として目の前のことをこなすだけで良い、と社員に伝えて
いることになる。
そこで、社員に対してのみ、自らで目標を考えて動きなさいでは、都合が良過ぎ、
放任主義である。
社長は、何のために我社がこの世に存在するかを、全ての社員に伝えて
いただきたい。そして、その内容に社員が共感したとき、強い組織と健全な
財務が残せるのである。
改めて社長には、社員が目標設定できる土台を示していただきたい。
執筆:野上智之