事業計画の意見交換
社長の想いを社員が理解し、実行に移して欲しいと思うのは、社長であれば
当然の想いです。しかし、その想いを伝える場がなかったり、伝え方が不十分
だったりし、想いが正しく伝わらないことがあります。
非常にもったいないことです。
私 :「社長、立派な事業計画が出来ましたね。」
社長:「そうだろう。約1ヵ月かけて作成したよ。」
私 :「この作成には、誰が関わりましたか。」
社長:「私と専務の2人だ。」
私 :「社員は、この内容をまだ知らないのですか。」
社長:「来月1日の全社会議で発表するよ。」
多くの企業では、期首に今期の事業計画を策定している。
その内容は様々であり、A4用紙の枚数は1頁から数十頁まである。そこに定め
る目標は、社長と幹部が中心となって素案を作成しその後、全社員にその目標
について意見交換できる場を設けることが非常に大切である。
特に、数字だけで社員に指示を出した場合、多くの社員はその数字の意味を
考えない。
また、前期比で大きく伸びている数字は、あきらめ感だけが残ってしまう。
これでは、なんのための計画なのか、全く意味がなくなる。
しかし、現状を見ると、この大切な全社員での意見交換の場がない。
あったとしても、期首の全社会議の数時間に、社長が事業計画を読み上げ、
質疑応答の時間があるくらいである。と言っても社員からの質問はほとんどない。
そしてその会議が終わると、その計画書は、各自の机の奥底に眠ってしまい、
二度と開かれることはない。
どうして、全社員に目標について意見交換できる場を設けないのか。社長が
言われることは、社員からは前向きな意見は出ない、社員は考えることをせず
待っている、自分の業務が精一杯で会社全体を見られない、とかである。
確かに一理ある。しかし、現在は、頑張っても成果に繋がらない時代だという
ことを、伝える必要がある。
高度成長期に信じられていた一生懸命な人、コツコツと真面目な人、汗を流し
て頑張る人、見えない所で努力する人が、必ず成果を出す人という時代は
終わっていることに気づかず、毎日働いている人が非常に多い。
努力と成果は、必ずしも比例しない。
今の時代、会社から与えられた目の前の仕事に着手すると共に、会社が何を
目指しているかを自ら理解し、その達成に向けて自分が何をしたかという付加
価値が問われている。
このことを社員に理解してもらう必要があるため、意見交換できる場を設けて
欲しい。
そして、是非とも社長の想いを正しく伝えていただき、全社員で前に進んで
いただきたい。
執筆:野上智之