傾向を読む
傾向とは一般的にトレンド(trend)とも言われ、企業内では商品別・
製品別・顧客別などでの売上・粗利(付加価値)が上昇しているか?
下降しているか?横ばいなのか?など、どの様に推移しているか把握
し、先の見通しを立てる為の資料の一つとして活用します
しかしながら決算期毎の推移であれば12ヶ月に1回しか行う事は無
く、間隔として長くなってしまい、鮮度が悪くなります。毎月の金額
を並べただけでは、季節変動や決算駆込みなどで、月の増減が激しく
なってしまい、増えているのか減っているのか把握が難しくなるとい
った問題があります。
その問題を解決する為に私共では年計グラフと言うものを活用してい
ます。
年計とは、月々の変動、季節変動等に影響されないで、純粋に商品等
の変動を把握する為の道具であり、これをグラフにすると、トレンド
(傾向)の視覚的理解が容易になる。
集計方法はいたって簡単で該当月含む過去1ヶ年間の累計額を、1ヶ
月ずつ移動させて集計するというものです。
例を挙げて説明すると2013年12月の商品売上の年計は、201
3年1月から12月までの商品売上の合計額である。
翌月2014年1月の商品売上年計は、前月商品売上の年計に201
4年1月の商品売上を加え、前年度2013年1月の商品売上を、減
算して算出される。2014年1月商品売上年計は、前年1月と当年
1月の差額分だけ、増減するのである。
要は集計期間として
2013年12月→2013年1月~2013年12月
2014年 1月→2013年2月~2014年 1月
となり絶えず1ヶ年分集計するという事である
このように集計方法から、次のような特徴が出てくる。
1.常に1ヶ年分を集計しているので、毎年おきる月々の変動に影響
されない
2.月々の変動に影響されないため、トレンドが良く分かる
3.毎月商品売上等の年次決算をやっていることになる
年計グラフから二つの情報を読み取ることができる。
1つは、長期的なトレンド(傾向)であり、もう1つは、景気の動き
である。
1.長期的なトレンド(傾向)
(1)年計グラフは、1年分の数値を合計しているから、トレンド
(傾向)は、振幅の上下が大きくない波形を描くグラフになる。
(2)「経済活動の惰性」により、グラフが上昇し始めると、少なく
とも数カ月またはそれ以上、上昇し、逆に、下がり始めると、
下がり続ける。
2.景気の動き(景気=売買や取引などの経済活動全般の動向)
年計グラフは、景気の変動により、大きな波を打つグラフになる。
(1)年計グラフでは、景気の上昇とともに、グラフは、谷から山ま
で上昇し、不況になると、山から谷まで下降する。
グラフは、山に近づくと、その上昇する傾斜がゆるくなり、平
らになり、逆に緩やかな傾斜で、下降をはじめ、傾斜が急にな
っていく。
逆に谷に近づくと、その下降する傾斜が緩くなり、平らになり、
逆に緩やかな傾斜で、上昇をはじめ、傾斜が急になっていく。
(2)谷から山、山から谷の変動は、景気の変動を示している。但し
、生活必需品は景気の変動に関わらず消費されるから、ほとん
ど年計に影響しない。
この二つの情報から、景気の変わり目をとらえることができる。
かの有名な社長専門コンサルタントの一倉定先生も著書の中で
『経営者が、注目すべきは、主力商品、高収益商品の売上年計である。
これらの商品の伸び率を常にチェックすべきである。』
と年計の重要性を述べていらっしゃいます。
まず年計作成に当たり、前提として月次決算が出来る経理体制の構築
が出来ていなければなりませんが、一度騙されたと思って作成してみ
てください。
一度作ってみれば大まかな傾向は掴む事が出来ますが、傾向が読める
様になるまでは毎月続けていき、グラフの変化の裏に何があったのか
考える事が重要になります。
傾向が読めるようになれば、計画書を利害関係者に説明する際の、
説得力が増す事、計画書の実現可能性が高まる事、疑い無しです。
執筆:奥田雄二