売上至上主義からの脱却
会社の規模や、将来の夢を語ろうとすると、
まずは売上でいくら、という表現になることが一般的です。
当然のことです。
売上が大きいということは、それだけ商いが大きく、社員も多く、
顧客も、資金も、設備も多く、大きいだろうから。
しかし、会社が苦境になる要因は、無意識的に
「売上しかみてない」
ことが原因の大半であることには注意が必要です。
可能な限り、管理するべきは利益なのに、ついつい忘れられることを
確認します。
売上増⇒運転資金増、だけではなく、利益が減る?
売上目標だけで企業を運営すると、黒字倒産の引き金になることは
有名です。
売上が増加すれば運転資金も増加することが要因であり、
資金が追いつかなくなることで、どんなに黒字であっても
資金がショートしてしまうこと。
しかし、問題は短期的な資金繰りに留まらず
中長期において収益も悪化させていることを見過ごせません。
売上だけを目標としていることで、
現場では
売上欲しさに「販売単価が下がり」
単価が下がるので「コスト(率)が上がり」
利益(率)低下⇒赤字化します。
資金繰りだけでなく、損益においても不利を招くのです。
問題はそれだけではありません。
社員全体にどれだけの負担を強いるか、という問題にもなります。
売上は「会社全体の作業量」
売上は何、と言われれば経営上では色々な表現があります。
「会社(の商品・サービス)に対する期待・支持」
「会社の社会に対する影響度」
等々ですが、ここでは「会社全体の作業量」としてみましょう。
同じ利益なら、作業は少ない方が質の維持が容易ですし
何より皆の負担が少ないですよね。
利益が相応に増えない限り、売上は増えない方が
作業は増えません。無理してまで仕事を増やすことはないのです。
よく、
「赤字取引と知ってはいるが、人のしがらみで止められない」
という赤字売上の理由を伺います。
程度の問題はあるにせよ、
私がどうしても賛成しかねる最大の理由は
◎その売上は、社員が全く報われない作業を、
経営者が知っていてさせている
ことにあります。社員のためにも、赤字取引は全力で
取引条件を改善するか、取引中止を目指すべきです。
社員あってこその会社なのですから、
社員に無駄な作業をさせてしまうのは、もったいないのです。
売上減少は金融機関取引において問題か?
売上が下がることで、金融機関の格付けが低下することを
心配する経営者の方もいらっしゃいますが、
概ね問題ありません。
確かに、金融機関の評価には売上の大小・増減が影響しますが
一方で「利益額」「利益率」も影響します。
売上が減少しようとも、利益が改善しているのならば
そうそう評点が落ちることはありません。
金融機関の格付け評価というのは、結局のところは
「融資したお金が返済できるのか」
に尽きます。
返済する資金は、一部を除いて売上ではなく、
利益(≒キャッシュフロー)から出るのですから、
利益がやはり、大事なのです。
執筆:今野洋之