2016年の金融行政と中小企業経営の展望 その2
前回お伝えした内容は
- 国家政策としては、中小企業の「代謝を促進」するため資金的な手助けを行うつもりがない
- 税金や社会保険の未納に対しては、より一層対応が厳しくなる
- 企業は、自らの資金管理能力が、より一層必要になる
といったところにまとめられます。
では、銀行はどのように考えているでしょうか。
目次
銀行の2016年対応
地方銀行を中心に、更なる金融再編が予想される2016年ですが
再編にあたっては、銀行はどこだって
「統合される側になるのはいや」
なものです。自身の人事上の立場が悪くなりますから。
金融庁は既に、各銀行を精査するにあたっては
不良債権の処理具合ではなく、それぞれの銀行の
収益額・収益率での評価に軸足を移しています。
銀行も、ごく普通の企業同様に、
収益を出す=儲かること、を要求されているのです。
このことから、以下の対応が激増することでしょう。
1.収益力が十分な銀行と、そうでない銀行で企業に対する対応がこれまで以上に大きくなる
収益力が十分確保されている銀行は新規融資のリスクもとれますし
条件変更(リスケジュール)先であっても、かなり長期に
待つことができます。
足元の収益に問題がないため、目の前の企業にたいしては
より長期的な視点での対応が可能なのです。
リスケ先であろうと、破綻懸念先であろうと、
「金利という収益を提供している」ため
無理やり最終処理を急ぐ必要がない、ということですね。
2.これまで、無理やり融資先企業の格付けを上げていた銀行は、より動きが硬化する
銀行が適切に融資先企業の格付けを設定していれば、
貸倒引当も適正になります。
しかし、引当をしたくない(会計上の損失を出したくない)状況の
銀行は、企業の格付けを無理やりに上げています。
ある意味、企業にとっては有難いという側面もあるのですが…、
過大評価された格付けを無理に付けるということは、企業にとって
一定以上の返済をしなくてはならないことに直結するため、
ありがた迷惑になることに注意が必要です。
無理やり高格付けを維持しようとする銀行は、企業に対して
- 金利の引き上げを要求する
- リスケ依頼への対応を渋る
- リスケの継続時に過剰な返済金額を要求してくる
- 追加担保や保証人を依頼する
ことが、既に増えています。
3.銀行の「横並び」から逸脱する銀行が増える
一般に、取引銀行が複数ある場合、メインバンクが了解したものに
他行が追従するものですが、上記の1.や2.で引っかかりのある
銀行が
「うちは自らの判断で○○とします、メインバンクの意向は関係ありません」
と主張することも増えています。
金融円滑化法が期限切れになって随分と時間が経ってきたこと、
金融庁が銀行の「独自判断」をある程度認めていることを
根拠としています。
一企業である以上、独自の判断は認められて然るべきですが
その目的が、企業の将来像に対する、より正当な判断をするため
ではなく、
自らの銀行の収益を守るため
- →自らの人事的なポジションを守るため
- →自分自身のクビを守るため
なだけ、というのなら、ちょっと話が変わってきます。
これら三点が基本となるでしょう。
企業側のとるべき対応は、細かいことを言えばキリがないとはいえ、
基本は一つ。
「自らの意志を自ら銀行に示すこと」
に尽きます。言われた、やられたではなく
自社側、経営者側から銀行へ将来像や条件を提示し、
協力を依頼することが、何よりも大きな力となります。
大変な時代がまだ続いておりますが
年末年始に少しでもお時間に余裕を持っていただいて
将来像を描いてみるのもよいでしょう。
次回は来年の初めてのメルマガとして、「意志の示し方」と、その考え方をお伝えします。
このメルマガをお読みくださる全ての方へ、感謝とともに
皆様、よいお年を!
来年は、もっといい年にいたしましょう!!
執筆:今野洋之