利害関係者のことを整理する
会社の経営を誰かに譲るためには、その経営者が変わることによって、利害関係者がどうなるか?について考えてみたいと思います。
目次
利害関係者のキーは「株主」「債権者」「従業員」
中小企業の事業承継において、特に注意すべき利害関係者としては、
「株主」
「債権者」
「従業員」
があげられます。以下、それぞれについてポイントを挙げてみます。
株主に対するフォロー キーワードは「株式会社への貸付金・借入金」
株主が経営者本人と一致していれば問題ないですが、そうでない場合は事前に出資者たる株主へ代表取締役辞任の申入れが必要となります。一般的には中小企業の大多数は、「株主=経営者」であることが多いことから、あまり株主の問題が出てこないケースが多いです。
しかし、「雇われ経営者」の場合、長く経営に携わっていると、会社から代表者本人への貸付金や仮払金やなどが精算されずにずっと残るケース、親族などへの利益供与などがあったケース、会社が経営者の関連の第三者などへの連帯保証をしているなどのケースでは特別背任の問題が出かねないので、十分に注意します。
特に共同出資者などがいるケースで要注意です。当初の共同オーナーには説明していても、相続等によりオーナーが替わっている場合などで、うまく行っていない事業に対する責任の擦り付け合いなどから感情の悪化、やもすると訴訟、ということもありえますので、十分に話し合いは必要です。
その辺りがクリアであれば、経営者としての役員の任期は通常2年の委任契約ですので任期切れとなる株主総会までがひとつ区切りになるでしょう。
「債権者」に対するフォロー。キーワードは「連帯保証」
銀行から借入がある場合、まず100%、代表者の連帯保証が必要となります。通常は経営者自身が連帯保証人となる事がほとんどです。当然に、連帯保証債務は、新しい経営者に引き継ぎされるのが筋ですが、新しい経営者に財産上のバックボーンがない場合、経営を退いても、引続き連帯保証を続けてもらうよう銀行から要求があるケースもあります。
特に、「会長」や「相談役」など肩書きが残った場合なら実態として金融機関は連帯保証をはずさないケースも散見されます。(新しい社長さんに連帯保証に加わってもらうだけ)
話の趣旨としては、「新しい経営者が旧経営者と同等の資力」を有していることを証明できれば、金融機関が旧経営者の連帯保証をはずしてくれる可能性は上がります。
これは連帯保証がある銀行それぞれに対して交渉が必要となります。面倒ですね。(笑)
余談ですが平成25年12月に「経営者保証ガイドライン」の制定があり、平成26年2月より施行となりましたが、個人と法人の同一性・関連性が高い場合は、今までと同様に連帯保証を銀行が求めてくる状況は変わっておりません。
- 個人と法人の関係がキレイに分かれていること(公私混同してません)
- 財務安全性の確保(自己資本比率30%目安)
- 返済余力 (利益・キャッシュフローでてる)
- 適時性のある報告 (こまめな状況開示)
- 物的担保 (不動産担保など)
上記5要件があれば、銀行に融資の連帯保証人をつけない検討をしなさい。という趣旨です。
「従業員」に対するフォロー ポイントは「相手の気持ちに立って」
従業員の立場としては、経営者の変更にはいろいろな心配がでてきます。
- 自分の立場が守られるのか?
- 自分の生活が守られるのか?
- 自分のやりたいことがまもられるのか?
従業員さん、スタッフさんの動揺が大きいと、引続き力を発揮して残って欲しい優秀な人が会社を去るケースが出てきます。
告知は全体への説明会や文章、メールなどの告知で済ますケースが多いですが、実務的に私個人の経験で有効だったものは社員さんの個別面談でした。
従業員数がすくなければ、トップが直接行うとよいでしょう。人数が多ければ、所属長等による面談などで個別の説明と疑問点などのヒアリングを行うことが一番有効な手立てであると思います。
いままで表にされなかった問題など(残業代未払いや労働問題など)が出てくることもあるので、気を引き締めて行ってください。(笑)
執筆:嶽洋次郎