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中小企業等経営強化法案って何? その4

今回は、本法案における中小企業評価の要点となる、ローカルベンチマークという新たな財務評価手法で採用予定の財務指標の内、「営業運転資本回転期間」を採りあげます。

営業運転資本回転期間とは

営業運転資本回転期間の算式は、

 

((売上債権+棚卸資産-買入債務)/月商)月

 

※売上債権=売掛金+受取手形
※買入債務=買掛金+支払手形

 

財務に触れたことのある方であれば、この数式が所要運転資金を月商で割って、「運転資金が何ヶ月で一回転するのか」を示す指標であることがお分かりでしょう。これまでの銀行の財務分析においては、間接的には使われていましたが、直接的に指標として採用されてはいないものでした。

 

この指標は、ローカルベンチマークの重要なポイントである「生産性」にも関わり、労働生産性がヒトに関わる生産性であるならば手許の売上・仕入(のお金)に関わる生産性であるといえ、数字が小さい(月数=期間が短い)ほど、よいということになります。より効率のよい在庫・回収・支払のビジネスモデルを組んでいると高い評価を得ることになるわけです…が、この指標には別の意図が含まれています。

粉飾を隠し続けることを、もう認めないということ

正確な統計はありませんが、現在日本の中小企業の多くは程度の問題はあるとはいっても、決算を「お化粧」、つまりは粉飾していることに間違いはありません。

 

承継や再生を期に開示をし、改めて整理整頓する企業が増えつつありますが、粉飾の開示によって銀行からどのような対応を受けるのか不安なあまり、何となく放置している企業や、融資を得ないと企業が存続できないのではという恐怖心から粉飾を上乗せする企業は、まだまだ存在しています。

 

しかし、粉飾によって売上・粗利を積み増ししようとした場合、その大半は売上債権や棚卸資産を過大・架空に計上する手法がとられます。そうなると、この指標の分子が大きくなる

 

⇒数値が大きくなる=営業運転資本回転期間は長期化・悪化

 

となります。また、元々存在していた不良資産・架空資産部分は今までよりも悪化(長期化)する・しないには関係ないとはいえ同業他社や世間相場との比較において、異常値との扱いを受けることでしょう。銀行員からの台詞で表現すれば

 

「当行の平均値では、御社の業種の平均は2.5ヶ月で
 2年前は似た水準だったのに、最近大きく超過していますが」

 

「売上が若干減少しても利益が増えているのはいいことですが
 どうして在庫が増えているのですか?」

 

また、口頭などで会社の取引条件を伝えている場合は

 

「御社の回収条件は月末〆、翌月末現金回収と伺っていますが
 どうして会計上の売掛金は月商の3か月分あるのですか?」

 

といった具合で、指標として明記されたことでこれまで認められてきた粉飾も、今後は許されないものになります。

 

一昨年とりまとめられた「経営者保証に関するガイドライン」においても、正確な財務数値を開示することが前提となっている等(後から問題が発生した場合、過去に遡って保証緩和措置の取消しが行われます)どの施策においても、粉飾の放置=救済が受けられないという政府の意思を強く感じます。

 

ただ帳面上の利益を出せばよいというものではなくなり、本質的な事業収益を生み出す企業が国家による支援を受けられる世の中になる、ということなのでしょう。

この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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