[最終回] 中小企業等経営強化法案って何?その12
「中小企業等経営強化法案って何?」シリーズは、今回でまとめとなります。
シリーズ中に「法案」は国会を通過し、「法」となりました。来年以降具体的な運用が始まるものとはいえ、今期の決算内容が来年使われる、という意味で今から準備するべきものなのでしょう。
これまでお伝えしてきたものをベースに企業側がどのように考えるべきなのかまとめておきます。
中小企業等経営強化法への企業側の対応
本業での「実質」の利益が最重要
最終利益も当然大事ですが、一過性だったり企業自身の努力では回避しようのない要因を除いた実質の利益、つまりは実質の営業利益が最も評価される収益数値となります。
時価評価を行う貸借対照表と比べると、損益計算書はそのままの数値で評価されがちですが、当期利益が同じであっても、一つのコストが売上原価なのか、販売管理費なのか、営業外か特別かどの項目に入るかで営業利益などの数値は変動します。
評価する側から言うと、企業の本来の収益力を自らの努力による改善を判定したいのですから、営業利益を重視したいのです。税額が変わらないからといって、安易に検討もしないでコスト計上することは避けなくてはなりません。
また、決算書での損益計算書では売上原価であったとしても本来は特別損失であるべきものは、銀行などにその旨伝えて実質評価において営業利益を増加してもらう、という手法もありです。損益の実質評価とは、そもそもそのためにあるのですから。
生産性の向上がアピールポイントになる
営業利益の改善が問われるとはいえ、必ずしも売上の増加による利益増加だけが求められているわけではありません。
重ね重ね、「自社内での努力による」改善が評価されます。外国為替や元請けの動向、震災などの外部要因に左右されにくい会社での取り組みによる改善として、「生産性」にスポットがあたります。
具体的には、社員一人当たりの(営業)利益の向上資産の売上や利益に対する回転期間の短縮化売上総利益にに対する人件費率の向上等が挙げられます。
財務指標は、これまでと異なるが債務超過の解消は重要
長い間最重要指標であった「債務償還年数」はやや重要度が後退します。融資の完済までの時間が長期化しても、その間企業が倒れないで存続できるのであれば、銀行は金利を得るのだからいいのではないか?という考え方です。しかし、そのためには
企業の存続性が高い
⇒承継がなされること万一倒れた時に、銀行は融資の回収ができる
⇒実質で債務超過ではない、もしくは債務超過だが、近い将来純資産をプラスにする計画をもっていること
この二点が求められることになります。
粉飾に対してはより厳しい対応になるため、対応は慎重に検討しつつ開示を
今後使用される財務指標は、必然的に粉飾を行って利益の積み増しを行うと悪化するものが採用されます。また、粉飾事実を隠したまま救済を受け、後に発覚した場合は過去にさかのぼって救済策が無効・取消になる見込みですので粉飾を行うことのリスクは、より大きくなります。
銀行からの指導より、企業側からの意思表示
銀行はコンサル機能を求められているとはいっても企業経営者の意図や意思、将来像を全て把握するのは無理です。銀行規定通りの返済金額では、将来の設備投資計画や環境の変化は想定できません。が、相手が分からないこと自体は責められません。説明責任は企業側にあり(言われないと気づきようがないのです)自ら自社の将来像を提示し、必要な資金と返済のバランスを提示しなくてはならないのです。
次に来るだろう「廃業支援制度」とセットで企業は自らの「終活」を行うということ
総じて、中小企業等経営強化法は、今後とも存続するべき企業を国家が認定し、政策的に支援する制度といえますが、どうしても見合わない企業に対しては、廃業を支援する制度も含めて検討することになります。
その制度は今年後半から来年にかけて、少しずつ現れてくると予想されますが、経営強化法も合わせて大事なことは、企業経営者が個人同様に、自社に対しても終活を考え、実現化することにあります。
せっかくやってきた会社、残すべきものは最大限よい形で残すことが一番ですし、経営者の最大の考えどころなのでしょう。
今後とも、新たな情報が入り次第、随時お伝えしてまいります、10回を超えるシリーズをお読みいただき、ありがとうございました。
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