粘り強い会社は、ここまで銀行に交渉できる
2017年7月19日号 「銀行とのつきあい方」
金融庁・森信親長官が留任、3年目の任期に入ることが決まりました。長官自身が2年で退任することを公言してきた中政府・官邸からの強い要請を受けることで、翻意されたようです。
着目するべきは、「政府・官邸からの強い要請」であること。政府からの支持が得られている点が大きいのでしょう。
森長官の方針・施策は銀行にとって非常にキツイものであり、できれば見なかったことにしたいものでしょうけれど銀行が変わらなければいけない、という政府・金融庁の意思はこれからも銀行に突きつけられることになります。
粘り強い会社は、ここまで銀行に交渉できる
ちなみに金融庁の方針は、森長官が来年退任したとしても後継人事も現在の流れを引き継ぐ方向にありどのみち銀行にとって変わらないで済ますための時間稼ぎは安易にできるものではありません。
銀行には、改めて「企業をもっとよく見て、実態に即した支援」を行うことが求められます。
実際、そんなことはできるのだろうか、と思われますか?が、今既に、通常では考えられない支援を勝ち取っている企業は存在しています。
交渉し、勝ち取る会社
・財務条件が足りていなくとも、代取の連帯保証が解除された企業
・リスケジュール中であっても、リスケ前からある当座貸越枠をそのまま使えている企業
・リスケ中でも、新規借入を得た企業
・延滞中でも、手形割引をしてもらった企業
・粉飾開示を数億円行っても、金融機関支援を取り付けた企業
・社長個人が社外の保証債務を抱えていても、新規借入を得た企業
・不動産売却時に、抵当権に充当する前に他の支払に充てた企業
これらを実行した企業は確かに存在しています。なにしろ、全て私の知る企業ですから。ただ「やらせてください」と銀行に言うだけでは取り付く島もなかったはずです。
交渉は勝ち取る、説明責任は企業側
とはいえ、できる企業が少数であることも確かです。実感として、これまでは数パーセントくらいこれから金融庁の発する各種新制度を利用しても20パーセントは超えないのではないかと個人的には考えています。
だから、できない?
いえ、そんなことを申し上げたいのではありません。
残念ながら、全体で20パーセントの成功率を100パーセントにすることはできませんが、自社を20パーセントの内に入れることならば検討可能なはず。
今回一つだけ、ポイントに触れておくと「銀行員もそう思っていること」にあります。
銀行員に再生途上の段階で依頼をする時、銀行員は
「やったことがない」
「聞いたことがない」
「マニュアル上存在しない、または推奨されない」
ものは基本的・反射的に否定してしまいますし
「再生企業っていっても、だいたいはただの延命でしょ?」
とネガティブに考えてしまうもの。正直、8割は本当にただの延命なのですから、またか…、と思われてしまうものなのです。
だから…、
「うちを8割に入れるな!残りの2割だ!」
と思わせることが、非常に大事。普通通りに考えるな、と求めるのですから説明責任は企業側です。待ってても分かってくれるとは言えません。
上記の企業は、常に自社のアピールを欠かさなかった結果なのです。
執筆:今野 洋之