積極的に製品開発を
今回は、私が以前、所属しておりました、プラスチック製造業の
FRP成形メーカーについてのお話をします。
FRP製品は、飛行機・自動車・住宅と幅広い産業で使用されて
おります。
工法としては、プレス成形・引き抜き成形・回転成形・
ハンドレイアップなど様々です。
大手企業もありますが零細企業が圧倒的に多い業界です。
以前にもお話をしましたが多くの成形メーカーは、発注元から
言われる通り製品づくりを行います。
当たり前といえばその通りですがその中でも自社で製造している
製品を従来から発展させ、またあらたな用途開発を行った
メーカーがあります。
S社は、浴槽製造メーカーです。
浴槽の製造方法は、ゲルコートと呼ばれる色付き樹脂を塗布し
グラスファイバーに樹脂を含浸させて成形を行っていきます。
[1]S社は、3つの提案を行いました。
㈰表面ゲルコートをクリアーにし、バック層を見えるようにした。
※通常では、バック層のガラス繊維が見えるため必ず
色付きにて成形する。
メーカーからは、常識を覆した発想と称賛されましたが商品化は
行われませんでした。
㈪ゲルコート層にイオン粉を混ぜ、イオンが発生する浴槽提案を
行いました。デベロッパーより業界初の試みとして浴槽と壁から
イオンが発生するルームとして販売を行う。
㈫ゲルコートに火山灰を中空にした、ゲルコートを開発。
数社に採用され、表明光沢の向上が行えた。
S社は数々の提案を行ったためメーカーから様々な相談が
持ち込まれました。
[2]G社は、FRP製のグレーチングの製造メーカーです。
※グレーチングとは、鋼材を格子状に組んだ溝蓋である。
素材は鉄(亜鉛メッキ)、ステンレス、アルミニウム、
FRP製などがある。
従来のFRP製のグレーチングは、樹脂に着色(グレー)するのが
常識でした。
その中で蓄光材料を混合し、夜間あるいは暗いところでも光る
製品ができました。
フェンスなどが夜、光ればその場所がわかり用途が広がるのでは
ないかといった発想でした。
ヒントは、建物内にある非常口の表示です。
使用例としては、外階段・フェンス・外壁カバーなどに
使用されました。
暗い中で場所が特定できると同時に夜間の防犯にもなるとの
理由から採用されました。
また、お客様からの要望でクリアー(透明)製品も作成しました。
実際には、グラスファイバーを使用しているため、完全クリアーは
できないのですが逆にそれが評価され採用になりました。
クリアー製のグレーチングは、テーブルとして上にガラスを置き、
下からライトアップすることで、光が様々な角度で屈折するため、
インテリアとしての用途が広がりました。
住宅では、階段はもちろんですが吹き抜けの2階を作る際の床として
使用することで人は通れ、光も通すという利点から採用されました。
こんなものがあれば形にできるのが製造業の強みです。
お客様からの情報を的確にとらえることであらたな発想が
生まれるのではないでしょうか?
一回やってみる、常識にとらわれるのではなく、遊び心を大切にし
製品開発・製品用途開発を行っていくことが大切です。
執筆:小林憲司