返済金額の増額を要請された
【質問】
平成7年に借入した7億円の返済を、5年程前から毎月の返済額を減額してもらいました。(現在、年間元利含めて3千万弱の返済です)
しかし、ここ3期連続で黒字+売上高が伸びてきたということで、年間返済額を約2倍の元利含め6千万の返済を要請されました。
銀行は、経営改善計画書を持参してください、とのことでしたので、作成後お話したのですが、6千万円の返済は難しいのが本音です。
というのは、銀行は当期利益+減価償却費が6千万円以上あるから、キャッシュがあるはずだ!と言うのですが、実際はそのキャッシュから税金納付、固定資産計上分の資産購入費、現在の借入返済があるため、キャッシュは年5百万円程度しか増えません。(新たな
設備投資をしないと売上の増加はおろか、現状維持も難しいので、資産購入は必須です。)
以上の事をキャッシュフロー計算書を持参し説明したのですが、計算書の見方が良くわかっていないようで、「?」の態度でした。(キャッシュフロー計算書の勉強不足の為・・とか言ってました)
5百万は増えるので、既存の返済額に5百万を上乗せするのは可能だとお話したのですが、強行な態度で「このままですと、この融資の件は難しいので採るべき方法は採りかねない」と話していました。ということは、担保資産の売却をして回収に移るという意味なのでしょうか?
当社は開業80年以上のいわゆる老舗なのですが、売上も順調に伸び、利益もだしています。お客様にも長年親しんでいただいており、現在も前期比+7%程の売上を維持しているのですが・・・。
ただ、過去の減価償却不足があり、決算書上は債務超過ではありませんが、実質的には売却しても減価償却不足があるため4億程の負債が残ることになると思います。
(ちなみに業種上、減価償却は長期になり金額も高額になり、税務上の償却限度額は年1億円ほどです。)また、過去の減額申請があるため、要注意先の管理債権にされているのでしょうか?
このような状況でも担保物件売却で、倒産させても回収にはしるのでしょうか?
銀行との話し合いから3週間たちますが連絡はありません。
(S様)
【回答】
銀行が融資返済の根拠として、当期利益+減価償却費のキャッシュフローを持ち出してくることはよくあることです。
しかし、キャッシュフロー計算書は、勉強していない銀行員には本当に分からないです。
今時キャッシュフロー決算書を勉強していない銀行員はプロとして失格です。
これからは当期利益+減価償却費のキャッシュフローより、キャッシュフロー計算書上で導き出されるキャッシュフロー(フリーキャッシュフロー)を融資返済の根拠として重視するべきだと思うのですが、現時点では、銀行は古い体質があるので、当期利益+減価償却費のキャッシュフローを重視しています。
あなたの会社は、毎月の返済金額を少なくするとき、そのことをうたった「借入金変更契約書」を銀行と交わしているはずです。
ただその契約書にうたわれる、返済金額を少なくする期間は、6カ月や1年など、短い期間にされているのが通常です。
契約書からいうと、それらの期間が経過すると毎月の返済金額は元通りにしなければならないことになります。
ただいきなり元通りにすることは、現実的に無理でしょう。
そこで、返済減額期限が到来する2カ月ぐらい前から、次の6カ月は返済金額をこのようにしてほしい、と経営改善計画書や試算表、資金繰り表などの資料を見せながら交渉していくのです。
「採るべき方法は採りかねない」という言葉は、期限の利益を喪失させて次のステップ、つまり競売などにも入っていくよ、という意味になりますが、とことん交渉し、銀行との妥協点を見出していかなければなりません。
また一方で、その不動産の将来的な競売のおそれなどを回避するために、不動産のリースバック、つまり協力者に買い取ってもらって担保設定を抜き、その協力者から賃借して使い続け、将来買い戻しを目指す手法など、あなたの会社としても、先、先を見据えた対策を今のうちから考えておくことをお勧めします。
なお、あなたの会社は、毎月返済金額が減額となっているため、その融資は「貸出条件緩和債権」に該当し、銀行の自己査定によるあなたの会社の債務者区分は、要注意先の中の要管理先、もしくは破綻懸念先になっていると推察されます。