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戦術 tactics

2021.09.22

分散と安売りからの脱却

今回は分散と安売りから脱却しましょう、分散症候群、分散は収益力を地に落とす悪の根源です。脱安売り、繁盛貧乏から脱却しましょうというお話を記述します。

繁盛貧乏」というのは造語ですが、どういう意味だと思いますか。実は世の中の多くの企業がこの状態に陥っています。「閑散貧乏」なら理解できると思います。お客様が来ないから、物が売れない、だからしんどくなる。

一方で、世の中の多くの企業が忙しいと言います。当然、忙しいのですから高収益なのかと思えば、さほどでもないという。だから長時間働き、世に言うブラック企業になってるにも関わらず、収益の原資がない。給料も薄給で、従業員も社長も大変というおかしな状態になっている。

この「繁盛貧乏」が起きる原因は、[5大疾病(No.1)]全部に関係するのですが、中でも大きな理由は「分散」と「安売り」に起因します。

分散の例として、過去に10年間くらい携わったお菓子屋さん向けの店装業についてお話します。地方に行くと50坪〜100坪の建坪、敷地数百坪という大規模の菓子専門店があるのですが、そういうお店専門の店装、店舗の企画設計、施工管理を行っていました。この事業はお菓子屋さんだけに対象を絞っており、分散の真逆です。

競合の建築屋や工務店は、お菓子屋だけでなく家や工場、何でも建てられると豪語しますが、彼らが出すお菓子専門店の提案資料は粗末なものでした。一方、その店装業はお菓子専門店だけを手掛けているため、ノウハウが蓄積されています。スタッフもやり方を熟知しています。だから圧倒的に強いのです。この事業は最初の数年で100棟以上、5年で5~600棟を手掛け、商圏も北海道から九州まで広がりました。

強みを持たず「分散」すると、すべての領域で競合と戦わなければならず、どの領域でも勝てなくなります。戦略的に事業立地を絞り込んでください。飲食店のメニューでも、100メニュー作るより、90メニューのほうがオペレーションを減らせて、よりクオリティの高い料理を提供できます。顧客ターゲットの絞り込み、提供サービス分野を絞り込み、よりニッチに、できたらよりアッパーにいくべきであると考えます。

又、ひとつ付け加えると、経営者の生き方を考えるときも「分散」に気をつけていただきたいと思っています。

「社長、忙しいですか?」と聞くと10人中9人は忙しいと言います。もちろん、事実だと思うのですが、一度時間の棚卸をしていただきたいのです。手帳を見直して見てください。過去一ヶ月、二ヶ月の間にあった意見交換、商談、後から振り返ると無駄だったと思うことがありませんか。総じて、2割、3割くらいいらない仕事があるのではないでしょうか。

また、頭の中の分散も問題です。できればどうでもいいことは考えないようにしましょう、と提案することも必要です。例えば政治のことを考えるのはもちろん大事ですが、自分がコントロールできないことは極力考えないようにし、自分自身がやらねばならないことに時間を集中する。これらを実践することで、頭の中も時間も大いにシンプル化できると考えます。

「繁盛貧乏」の原因のもうひとつは「安売り」

本題に戻りますが、「繁盛貧乏」の原因のもうひとつは「安売り」です。No.2でも中小企業こそ「アッパーニッチ」の世界にいくことをおすすめしました。

あるコンサルタントの事例ですが、赤字続きの企業を買収し3年ほどで立て直しをしたとのことです。この会社がまさに薄利多売で失敗していました。お菓子の製造業で、年商9億円ほどでしたが、年間5,000万円程の赤字がずっと続いていました。債務超過で企業価値はマイナスです。

ここは歴史のある会社だったようですが、どんどん「分散」させてしまい、商品アイテムを広げ、販売店を広げていました。また、安売り路線を作り、低価格帯のゾーンを攻めきっていたようです。

良いときはそれなりに成長できたのですが、世の中が厳しくなってくると価格競争に晒されていき、作れども作れども売れない状態に。アイテム数が100倍になっても売上が10倍にしかならない、販売チャネルが10倍になっても売上は2倍しかならない。当然生産性がどんどん悪くなり、企業体力が落ちていきました。与信力もないため、良い材料を買うこともできず、安くて悪い材料を使い、安い機械で安物を作り、安く買い叩かれる、正に負の連鎖に陥ったのです。

これを断ち切るには、良いものを作るしかありません。良い材料屋さんと付き合い、良い取り引き先を開拓し、良い機械も必要になります。社員のレベルアップのための社員教育も必要になります。

安売りのデメリット

安売りのデメリットは、会社が生きていく世界が悪くなってしまうということ。安物を求めるお客さんのいる世界に行けば、そこでさらに安く買い叩かれ、そのうちにだんだん良いものを作ろうという意欲がなくなり、知恵も出なくなります。

一方、これだけ良い味、良いサービスならそれはお金がかかって当然、と理解してくれるお客さんのいる世界もあります。

値決めに応じて顧客層が形成

自社の値決めに応じて顧客層が形成されていくのです。価格を売るための道具に使わないでください。安い価格に商品の質を合わせようとするのではなく、目指す価格に商品の価値を近づけるための努力をしてください。

努力をしてより良いものを作り、より高いお金を頂く方向に頑張り続けるというのが企業経営だと思います。その努力をやめ、価格を落とすのは愚策の典型だと思います。

価格を道具にすることを覚えてしまうと企業はどんどん弱くなり、最後は「利益出すために商売してるんじゃないよね」と利益を否定しはじめます。利益を否定することは、事業を否定することになります。利益は悪ではなく、利益こそ善なのです。

良いものを作りその結果利益ができるから納税もできるわけで、それが世の中のまわる基本で資本主義の原理原則です。「利益を出すやつは上手くやってて、うちみたいに真面目にやってるやつはなかなか儲からないよね」という論理はまさに逃げ口上なのです。

まずは値上げし、値上げした価格に釣り合うように買っていただける努力をし、良いものを作り続けるという企業文化を育むことが出来るように指導して下さい。

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