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戦術 tactics

2021.10.27

人事の要諦と脱・お人好し!

今回は、人事の要諦と脱お人好しというテーマでお話します。

私は経営者が一番やってはいけないことは、ないものねだりだと考えています。理想論は大事ですがそれだけでは経営はできないのです。厳しい言い方をすると妥協の産物と言えます。そこで程度加減をわきまえて、ある程度ベターを組み合わせていくのが経営で、悲観論ではないのです。現実論として受け止めていただきたいと思います。

これは人事に関しても同じです。経営者はよくもっと優秀な人が欲しいと言います。最初に結論を申し上げますと、良い会社になれば良い人が入るようになります。良い人が入るから良い会社になるのではないのです。

だから、経営者一人であっても、石にかじりついてでも良い会社にするべきなのです。結果として良い会社になった時に優秀な人がどんどん入ってくるステージを迎えるということを前提に置いた上で、人事の要諦という話をしていこうと思います。

まず大企業と中小企業の差ということについて理解をしていただきたいと思います。ビッグカンパニーや著名なベンチャー企業は社長個人の魅力ではなくブランドロイヤリティがあり、これが継続的な就業とか就職動機として機能します。

一方、中小企業はこのブランドロイヤリティは存在しません。あるとすれば社長自身の器量やポテンシャルですが、そうなると社長を超える人材は採用できません。今の原理原則を理解いただいた上でテクニカルな話をしていきます。

人事業務で一番大切なことは、ズバリ最適化だと思っています。最適化ができていれば、採用もできますし、離職率も極端に高くなりません。一定の確率で人は必ず辞めます。これは仕方ありません。ただ、従業員10人の会社で毎年2~3人とか、50人の会社で10人も辞めるなら最適化ができてない証拠です。

最適化とは以下の3つのバランスをとることです。

① 従業員の市場価値と会社が支払う給与

当然、報酬はその従業員の市場価値に適合させることが重要です。市場価値700万円の人材に500万しか払わなければ辞めます。ここで気をつけないといけないのは、従業員側は自分の市場価値を高く見る傾向があり、会社は従業員の市場価値を低く見る傾向があること。だからある意味本当に納得できるラインというのはなかなか生まれないのです。

優秀な人材を、薄給だということを承知で使っていると、ある日突然辞表を出されます。怠慢のために適正な給与、地位の是正を実施しなかったことが原因と言えます。

人は辞める時の理由を正確には言わないものです。大人なので、給料が安いから辞めるとは言わないことが多々あります。そこはまた咀嚼して考えていかないといけないところです。

② 会社が従業員に求める業務と、会社が支払う給与

難しい業務を求めてるのに薄給ではいけません。それは①の、その人が持つ市場価値とは別の話として、仕事量にふさわしい支払いをするということです。アルバイトでも同じです。高度な業務をやって頂こうとするならば、1,500円~2500円は必要です。1,000円で求人を出してそれを超える業務を期待してはいけません。

反対に、道理を越えた高給を支払って雇用する、また慰留することもいけません。 他の社員の不信も招くし、長続きしません。力以上の高給を支払うことは罪なのです。自分自身、反省したことが幾度もあります。

例えば、市場価値が600万円しかない人に900万円の給料を支払って、3年~5年続けると、この人は人生を崩します。最適な給料はどこにあるかということを模索し続けることが企業の責任だというふうに思います。

③ 従業員の能力と従業員に求める業務

その人の能力に応じた業務をしっかり組み込んでください。能力の低い人に精神論として高度な仕事を任せると、すごく頑張る人が10人に1人ぐらいはいます。手前味噌ですが、私も前職のコンサルティング会社時代、無茶ぶりをされたけど乗り切ったことがあります。しかし、ほとんどの人は辞めてしまうのです。やはり、訓練の機会や期間が必要です。

以上の考え方を前提に、どういう制度を整えていったらいいのかを考えてください。「優秀な人がなかなか採用できないから良い会社になれない」というのは経営者のわがまま、言い訳であってそれ以外何者でもありません。それを言った瞬間に経営者失格でしょう。世間相場より低い年収の雇用条件で、なかなか優秀な人間が来ないとずっと言い続けて採用できない会社は、ないものねだりの極みです。だから、自分に賛同してくれる人の中でしっかりやってくしかないのです。

会社があるステージを超えると良い人が来るようになるのは、世間からある程度評価されてからです。会社が良い業績を残して世間から評価されている時の新規採用や中途採用は良い人が来るようになります。結局今の実力相応の従業員が入社してくるようになっている。実力相応の「実力」というのは経営者の実力、会社の実力、それの相応です。これが「鏡の原理」ですね。

しかし稀に、将来性にかけて入社してくれる人もいます。こういう今の段階に不相応な従業員の雇用は社長が一本釣りするしかないでしょうね。本当に優秀な人が欲しいのなら、自分個人の魅力で釣り上げる、それができなければ諦めましょう。

脱・お人好し

次に、お人好しを辞めましょうという話をします。人に辞めて欲しくないときに、従業員に好かれようと、媚を売る社長がいます。これも少なくないんですよ。もちろん誰でも嫌われたくはありませんが、好かれようとする発想は最悪です。これは多くの偉人の方々、例えば稲盛和夫先生も「心に一匹の鬼を忍ばせよ」という言葉をよく使います。

結局、社長と従業員の関係とは、人間としてどうかという議論ではありません、組織論としてトップがすべてを決めないといけないのです。特に中小企業は、ある程度トップの独断ぐらいでないと経営なんて回らないのです。その前提の時、従業員に「どう思う?どうしよう」などと話していたのでは、会社がうまく行くわけがない。大きな成功をおさめておられる社長は、従業員から尊敬されています。

なぜ尊敬されているかといえば、成功したからです。つまり、結果的に尊敬されるようになったのです。媚びを売って尊敬されることはない。「うちの社長は口も悪いし、時々暴言も吐くけど、でも大したもんやな」と。「我々の生活を守ってくれて、世間相場より少し上くらいの給料をくれて、生活を守ってくれてるよな」ということなのです。

大きな成功を収めてる社長は成功しているゆえに従業員から尊敬され、小さな成功を収めてる社長は従業員から嫌われ、恐れられてます。一方、従業員から好かれてる社長は概ね経営がうまくいってません。私はこれが真理だと思います。

会社が小さいうちは、言うべきことを言わないといけないし、自分一人でリードするぐらいの気概がないと回らないのです。あまり会社に気を使ってやってたら駄目なのです。

中小企業の人事は難しいと思います。人事とは「最適化すること」ですから、そこにエネルギーを注いでください。それを前提に制度設計や採用をしていけば、人材不足は防げると思います。

 

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