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黒字でも資金繰りが苦しくなる理由と今すぐ取るべき6つの対応策

物価高・原材料高・人件費の上昇・エネルギー価格の高止まり・借入金の返済負担…これらが同時に企業経営を圧迫する時代が続いています。

 

特に注意すべきなのは、決算書上は黒字であっても、資金繰りが厳しくなっている会社が増えていることです。経営者の方が今見るべきなのは、「利益が出ているかどうか」だけではありません。借入返済後に現金が残っているか、この先、資金が何か月持つのか、この2点です。本記事では、資金繰りの現状を正しく把握するために今すぐ確認すべき6つのポイントと、具体的な対応策を解説します。

【この記事の結論】

会社が倒産するのは赤字になった時ではなく、現金が尽きた時です。決算書が黒字でも資金繰りが苦しくなっている会社が増えています。経営者が今すぐ確認すべきは、①借入返済後に現金が残っているか、②粗利益率が落ちていないか、③価格転嫁が進んでいるか、④コロナ融資の返済負担、⑤売掛金の回収遅れ、⑥金融機関への相談タイミングの6つです。そして、これらを数字で把握するための「資金繰り表」を今すぐ作成することが、会社を守る第一歩です。

黒字でも会社が倒産する時代が来ている

「利益が出ているから大丈夫」「今月は何とか払えたから大丈夫」「銀行から何も言われていないから大丈夫」このように考えている会社ほど、気づいた時には資金繰りが相当悪化していることがあります。

会社が倒産するのは赤字の時ではなく、いつなのか?

会社は赤字になった瞬間に倒産するわけではありません。倒産するのは、現金がなくなった時です。

 

たとえ売上があっても、利益が出ていても、手元資金が不足すれば支払いはできません。仕入先への支払い・従業員への給与・税金・社会保険料・借入返済、これらは毎月確実に発生します。今の経営環境では、売上が増えていても、原価・人件費・外注費・燃料費・金利負担がそれ以上に増えていれば、会社に現金は残りません。

経営者が今すぐ確認すべき6つのポイント

資金繰りの現状を正しく把握するために、以下の6点を今すぐ数字で確認してください。感覚ではなく、通帳・試算表・返済予定表を手元に置いて確認することが重要です。

① 借入返済後に現金が残っているか確認する

損益計算書で利益が出ていても、手元現金が増えていないケースがあります。その最大の理由は、借入金の元金返済です。この点は多くの経営者が見落としやすい盲点です。

損益が黒字なのに通帳残高が減るのはなぜか?

借入金の元金返済は、損益計算書には費用として計上されません。そのため、決算書上は利益が出ているのに、実際の通帳残高は毎月減っているというケースが起きます。確認すべきは「利益が出ているか」ではなく、「利益から借入返済を差し引いた後に現金が残るか」です。

② 粗利益率の低下を数字で確認する

売上が前年並み、または増加していても、仕入価格や外注費が上がっていれば粗利益は減少します。粗利益率の低下は、会社の収益力が落ちているサインです。売上高だけを追いかけていると、この変化を見落とします。

粗利益率が落ちると資金繰りにどう影響するのか?

粗利益率が下がると、同じ売上高でも手元に残るお金が減ります。さらに固定費や借入返済は変わらず発生するため、粗利の低下は資金繰りの悪化に直結します。前期比較で粗利益率が1〜2ポイント落ちていた場合、その原因(仕入コスト・外注費・値引き圧力など)を必ず特定してください。

③ 仕入・人件費の上昇分を価格転嫁できているか点検する

原材料費・人件費・燃料費・外注費の上昇に対して、販売価格の見直しが追いついていない会社が多くあります。「長年の取引先だから値上げを言いにくい」「競合に仕事を取られるのが怖い」その気持ちはよく分かります。しかし、現実から目をそらしてはいけません。

価格転嫁できないまま受注を続けるとどうなるのか?

価格転嫁できないまま仕事を続ければ、受注すればするほど資金繰りが悪化する可能性があります。忙しく働いているのに会社にお金が残らない状態は、価格構造の問題であることがほとんどです。原材料費・人件費・燃料費の上昇を数字で示し、感情ではなく根拠を持って価格交渉を進めることが重要です。

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④ ゼロゼロ融資・保証協会付き融資の返済負担を見直す

コロナ禍で無利子・無担保融資(いわゆるゼロゼロ融資)や保証協会付き融資を活用した企業は多くあります。据置期間が終わり、返済が本格化した現在、その返済負担が経営を圧迫しているケースが増えています。

コロナ融資の返済開始後に資金繰りが悪化するのはなぜか?

返済原資となる利益やキャッシュフローが十分でないまま返済だけが始まれば、手元資金は確実に減っていきます。毎月の返済額・残高・返済期間を改めて確認し、返済負担が営業キャッシュフローの範囲内に収まっているかを検証してください。収まっていない場合は、早めに金融機関との条件見直し(リスケジュール)を検討する必要があります。

⑤ 売掛金の回収遅れを早期に把握する

売上が立っていても、入金が遅れれば資金繰りは苦しくなります。特に取引先の支払いサイトが長い場合や、回収条件が悪化している場合は注意が必要です。帳簿上の売上と実際の入金タイミングを常に照合する習慣が欠かせません。

売上が計上されているのに資金繰りが苦しくなるのはなぜか?

売掛金は帳簿上は「資産」ですが、入金されるまでは現金ではありません。売掛金の回収が遅れている状態が続くと、黒字でも資金ショートするリスクがあります。回収遅れの取引先・請求漏れ・入金サイトの長い得意先を定期的に洗い出し、回収管理を強化することが重要です。

⑥ 金融機関への相談を先送りしない

「もう少し様子を見よう」「来月には売上が戻る」「銀行が何とかしてくれる」この判断が、会社をさらに苦しくします。資金繰りが限界に近づいてから金融機関に相談しても、選択肢は限られます。

資金繰りが限界になってから相談すると何が変わるのか?

早い段階で相談すれば、返済条件の見直し・追加資金調達・経営改善計画の作成など、打てる手はまだあります。一方、支払いが遅れてから・税金や社会保険料を滞納してからでは、選択肢は一気に狭まります。金融機関は経営者が早めに状況を把握して動いているかどうかも評価の対象にしています。

6つのポイントを一覧で確認する

確認ポイント 見るべき数字・書類
① 借入返済後に現金が残っているか 通帳残高・返済予定表・営業キャッシュフロー
② 粗利益率が前年より落ちていないか 月次試算表・前期比較
③ 価格転嫁が進んでいるか 商品別・得意先別の粗利率
④ コロナ融資等の返済負担 借入残高一覧・月次返済額の合計
⑤ 売掛金の回収遅れ 売掛金年齢表・入金予定表
⑥ 金融機関への相談タイミング 資金繰り表(向こう6か月〜1年)

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資金繰り表を今すぐ作成する

6つのポイントを確認したうえで、今、経営者が最優先で作成すべきものは資金繰り表です。資金繰り表を作成すると、いつ・いくら入金があり、いつ・いくら支払いがあるかが分かります。そして、何月に資金が不足する可能性があるかを事前に把握できます。

 

資金繰り表がない経営は、暗闇の中をライトなしで運転しているようなものです。今月は何とか払えたとしても、来月・再来月に資金が足りる保証はありません。特に借入返済・税金・社会保険料・賞与・設備更新などが重なる月は注意が必要です。

資金繰り表があると金融機関への説明はどう変わるのか?

資金繰り表があると、金融機関への相談が格段に具体的になります。「お金が足りません」ではなく、

 

  • 「何月に、いくら不足する見込みです」
  • 「その原因はこの支払いです」
  • 「この改善策を実行します」

 

このように説明できる会社は、金融機関から見ても信頼されやすくなります。資金繰り表は、経営者自身の判断精度を上げるツールであると同時に、金融機関との交渉を有利に進めるための武器でもあります。

今すぐ取るべき4つの対応策

6つのポイントを確認し、資金繰り表を作成したうえで、以下の4つを優先的に実行してください。

 

対応策 ポイント
① 直近6か月〜1年の資金繰り表を作成する 入出金の予定を数字で見える化し、資金不足が起きる月を特定する
② 利益が出ない取引・採算の悪い仕事を見直す 利益と現金が残らない売上は、会社を守るどころか苦しめる原因になる
③ 価格転嫁が必要な取引先への交渉を始める コスト上昇の根拠を数字で示し、感情ではなく事実で交渉する
④ 金融機関への相談を早めに行う 返済が遅れる前・税金や社会保険料を滞納する前に動く

まとめ|数字には必ず前兆が出ている

中小企業は、今後さらに厳しい経営環境に直面する可能性があります。物価高・人件費上昇・金利負担・借入返済・価格転嫁の遅れ、これらが重なれば、黒字企業であっても資金繰りに行き詰まることがあります。

 

会社は突然悪くなるのではありません。数字には必ず前兆が出ています。

 

見逃してはいけないサイン
通帳残高が月を追うごとに減っている
粗利益率が前期より落ちている
返済負担が重くなっている
売掛金の回収が遅れている
税金や社会保険料の支払いが負担になっている

 

今、経営者がやるべきことは、現状を正しく把握し、資金繰り表を作成し、金融機関や専門家に早めに相談することです。「まだ大丈夫」と思っている今こそ、動くべきタイミングです。資金が尽きてからでは、できる対策は限られます。しかし、早めに動けば、会社を守るための選択肢はまだ残されています。

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よくある質問

黒字なのに資金繰りが苦しくなるのはなぜですか?

損益計算書の利益とキャッシュフローは一致しないからです。借入金の元金返済は費用として損益計算書に計上されないため、利益が出ていても返済分だけ現金が減ります。また、売掛金の回収遅れ・在庫増加・設備投資なども資金を拘束します。会社が倒産するのは赤字になった時ではなく、現金が尽きた時です。

資金繰り表はどのように作成すればよいですか?

まず、向こう6か月〜1年の入金予定(売掛金の回収・その他収入)と出金予定(仕入・人件費・家賃・リース料・借入返済・税金・社会保険料・賞与など)を月ごとに一覧化します。月初残高に入金を加え、出金を差し引いた月末残高を計算することで、何月に資金が不足するかを事前に把握できます。作成が難しい場合は、認定支援機関などの専門家に相談することをお勧めします。

コロナ融資(ゼロゼロ融資)の返済が始まって資金繰りが苦しい場合はどうすればよいですか?

早めに金融機関に相談し、返済条件の見直し(リスケジュール)を検討することをお勧めします。返済が遅れてからの相談では選択肢が狭まります。現在の返済額・借入残高・月次の営業キャッシュフローを整理したうえで、「いつ・いくら不足するか」を数字で示せる状態にしてから相談に臨むと、金融機関側も対応しやすくなります。

価格転嫁(値上げ)交渉を進めるコツはありますか?

感情ではなく数字と根拠で交渉することがポイントです。原材料費・人件費・燃料費・外注費の上昇幅を具体的な数値で示し、自社の粗利益率への影響を説明します。一度に大幅な値上げを求めるのではなく、段階的に価格改定を進めることで取引関係を維持しながら利益率を回復できます。価格転嫁が進まないまま受注を続けると、忙しくなるほど資金繰りが悪化するリスクがあります。

資金繰りが苦しい時、金融機関にはどう説明すればよいですか?

「お金が足りません」という漠然とした説明ではなく、「何月に、いくら不足する見込みか」「その原因は何か」「どのような改善策を実行するか」を数字で示すことが重要です。資金繰り表を作成したうえで相談に臨むと、金融機関側も検討しやすくなります。また、早い段階での相談ほど、返済条件の見直しや追加融資など選べる手段が多く残ります。

この記事の著者

  • 山中 肇

    経歴:愛知県第二地方銀行 管理職
    主な実績:
    ・金融機関調整
    CF以上の返済を履行していた先に対し、金融機関の見直しを行い、CF以内の返済額への減額対応し実現。
    ・資金調達
    適正な金額・期間・調達方法のアドバイスを行い資金調達を実施。
    ・リスケ対応
    改善計画書を作成し金融機関に一緒に訪問しリスケ交渉の支援を実施し毎月の返済額の見直しを行い、予実管理まで実施。
    ・サービサー対応
    サービサーとの交渉に同席し、円滑な交渉をサポート。
    ・金融機関対応以外に租税関係の交渉同席、取引先への支払延期交渉同席等、些細な事から大きな事まで対応しております。

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