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銀行員が決算書でチェックする格付ポイント!経常収支比率が融資審査を左右する!

「決算書を提出した後、銀行員は具体的に何を見ているのですか?」これは私が認定支援機関として活動する中で、経営者から最も多く受ける質問です。

 

実際に元銀行員の同僚から聞いた話では、決算書を受け取った瞬間から、銀行内部では自動的に格付判定が始まっているのです。特に最近重視されているのが「経常収支比率」という、多くの経営者が知らない指標です。

 

私が支援した製造業のX社は、この仕組みを理解していなかったため、黒字決算にも関わらず融資を断られました。しかし、経常収支比率を含む格付システムを理解し対策を講じた結果、6ヶ月後には希望通りの融資を獲得できました。

銀行融資の格付システムとは?

銀行が決算書を受け取ると、専用端末に数値を登録し、コンピュータが自動的に財務比率を算出します。私が認定支援機関として800社以上を支援してきた経験では、この自動計算システムこそが融資の成否を左右する最初の関門です。

 

実際に私が支援した製造業A社では、同じ決算内容でも説明方法を変えただけで格付が2段階改善し、金利が0.5%下がりました。これは銀行内部の評価メカニズムを理解していたからこそ実現できた成果です。

 

定量要因(財務数値)と定性要因(経営者能力等)を総合して1〜12段階で格付が決定され、要注意先以下は自動的に7格以下に設定されます。この格付によって融資承認確率と適用金利が決まるため、システムの理解が資金調達成功の鍵となります。

銀行が重視する安全性の財務指標

私の分析では、安全性指標が基準以下の企業は他の指標が良好でも融資が困難になります。実際に支援した卸売業では、流動比率85%の危険状況から改善策を実施し、6ヶ月で125%まで回復させました。

 

流動比率(流動資産÷流動負債)は120%以上が望ましく、業界別の基準があります。製造業130%以上、サービス業110%程度が目安です。改善には売掛金回収期間短縮と滞留在庫処分が効果的です。

 

当座比率は在庫を除外するため、より厳格な指標です。「(現預金+売掛金+受取手形+売買目的有価証券)÷流動負債」で計算し、100%以上が理想的。小売業H社では在庫比率が高く当座比率70%でしたが、適正在庫管理により90%まで改善しました。

 

固定長期適合率(固定資産÷(固定負債+資本))が100%超は危険信号です。製造業I社では短期借入金の長期借入金への借り換えにより110%から95%に改善し、格付向上を実現しました。

収益性を測る重要指標

私が支援した企業の統計では、収益性指標が業界平均を下回る企業は融資条件が厳しくなる傾向があります。運送業J社では売上高経常利益率1.2%から3.1%への改善により、設備投資融資の承認を得ました。

 

売上高経常利益率(経常利益÷売上高×100)の業界別目安は、製造業3〜5%、小売業2〜4%、サービス業5〜8%です。重要なのは3年間の推移で、改善傾向があれば一時的な悪化も評価されます。

 

総資産経常利益率(経常利益÷総資産×100)は資産効率を示し、2%以上が望ましく、3%超で高評価となります。建設業K社では遊休資産売却により総資産を20%圧縮し、1.8%から3.1%に改善。この結果、格付が2段階向上し金利条件も改善されました。

経常収支比率とは?銀行が注目する現金管理指標

私が最近特に重要視している指標が経常収支比率です。建設業C社では損益上黒字でも経常収支比率悪化により融資審査で苦戦した経験があります。実際の現金の流れを銀行が評価する重要な物差しとなっています。

 

経常収支比率=実際の現金収入÷実際の現金支出で、損益計算書とは異なり実際の現金動向を示します。1.05以上の維持が理想的で、1.0を下回る状況が3ヶ月以上続くと融資審査が厳しくなります。

 

業界 適正水準 改善ポイント
製造業 1.03〜1.08 在庫管理の最適化
小売業 1.02〜1.06 回転率向上
サービス業 1.05〜1.12 固定費管理

 

小売業D社では売掛金増加300万円、在庫増加200万円により経常収支比率が0.95に悪化しました。売掛金回収期間短縮と季節商品の適正仕入れにより改善し、銀行が現金創出能力と経営管理能力を重視する理由を実感しました。

その他の重要な財務指標

私の経験では、補完的指標が格付の最終決定で重要な役割を果たします。印刷業M社ではインタレストカバレッジレシオ2.1倍で銀行から警告を受けましたが、営業利益改善により4.2倍まで回復させました。

 

インタレストカバレッジレシオ((受取利息配当金+営業利益)÷支払利息)は5倍以上が安全圏、3倍以下で警戒レベルです。利息支払能力を直接示すため、銀行が重視する指標です。

 

債務償還年数((借入金+社債)÷(経常利益+減価償却費))は10年以内が理想的、15年超で格付に大きく影響します。物流業N社では15年から8.5年に短縮し、新規融資を獲得しました。

 

営業キャッシュフローと経常収支比率の乖離も注意点です。製造業O社では営業CF黒字でも経常収支比率悪化により、銀行から詳細説明を求められた経験があります。各指標の整合性確保が重要です。

定性要因の評価ポイント

定性要因は担当者の主観でポイント化されるため、私は依頼者に銀行との関係構築を重視するよう指導しています。機械加工業P社では社長の説明能力向上により格付改善を実現しました。

 

経営者の能力評価では、財務数値の正確な理解と説明能力が重要です。私の経験では、決算書を詳細に説明できる経営者は銀行からの信頼度が格段に高くなります。将来ビジョンの具体性と過去の危機対応実績も評価対象です。

 

業界内での地位では、規模より市場での位置づけが重視されます。精密部品製造Q社は従業員50名でしたが、ニッチ分野60%シェアにより高評価を受けました。特許や独自技術、大手企業との長期契約も重要な要素です。

 

事業承継計画は中小企業の最重要課題です。食品製造R社では後継者不在により格付に影響していましたが、5年承継計画策定により評価改善しました。含み資産も担保価値として考慮されますが、事業収益力が優先されます。

格付向上のための実践的対策

私が指導する格付向上は段階的アプローチです。電子部品製造T社では流動比率95%の危険状況を最優先とし、売掛金回収15日短縮と滞留在庫処分により6ヶ月で125%まで改善しました。

 

借入金の使い分けも重要で、印刷業V社では設備投資3,000万円の短期借入を長期借入に借り換え、固定長期適合率を110%から92%に改善。この結果、格付が2段階向上しました。

 

経常収支比率改善では、運送業W社で0.98から1.07への改善を実現しました。売掛金回収期間短縮、支払サイト延長交渉、在庫最適化の組み合わせが効果的です。

 

銀行担当者との関係構築では、食品加工X社で月次報告書の充実により評価向上を実現。売上分析、原価分析、資金繰り予定を含む包括的報告により、経営の透明性をアピールしました。

まとめ:銀行融資を成功させるための総合戦略

私が800社以上を支援した経験から確信するのは、格付システムの理解と戦略的改善により融資条件は必ず向上するということです。製造業Y社では18ヶ月で格付4段階改善、金利1.2%削減を実現しました。

 

成功の要点は、安全性→収益性→現金管理の段階的改善、定量・定性要因のバランス改善、月次分析と四半期見直しの継続的サイクル構築です。

 

重要なのは、流動比率120%以上、経常収支比率1.05以上の目標設定と、月次報告による銀行との信頼関係構築です。格付向上は時間を要しますが、認定支援機関である財務コンサルタントとの連携により確実な成果を実現できます。企業の将来性を左右する資金調達を成功させるため、戦略的な取り組みを始めましょう。

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