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経営者が自殺の場合の保険金

資金繰りに行き詰まってしまった中小企業経営者の中には、自殺を考える方もいます。

平成25年の内閣府の統計によれば、平成25年中の自殺総数は27,283人。その中で、自殺の動機が経済・生活問題で、職業が自営業であった人は955人、被雇用者であった人は1,343人です。

 

法人の経営者は被雇用者というくくりで統計されていますから、1,343人のうち何名かが法人の経営者かは分かりませんが、これだけ多くの経営者が、経済問題により自殺しているのです。

そしてこの経済問題とは、経営者にとっては事業がうまくいかない、ということでしょう。

 

経営者が自殺にいたる動機として、苦しい現状から逃げたいということが一番大きいでしょうし、また自殺した生命保険の保険金により会社の借金を返済したい、家族に生活費を残したい、という動機もあります。

 

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自殺した場合に保険金はおりるのか

では自殺した場合、保険金はおりるのでしょうか。

それを調べるには、まずは保険会社から渡されている約款を見てみます。自殺に関する保険金の支払いルールは、保険会社ごとに異なります。

 

ほとんどの保険会社では、自殺による保険金の支払いには免責期間を設ける形をとっております。保険の責任開始日から免責期間内の自殺には保険金は支払われない、というものです。

 

この免責期間は1~3年と定められている場合が多く、例えば免責期間が3年であれば、保険の責任開始日から3年を経過した場合、自殺であっても保険金支払いの対象となります。

 

しかし免責期間内の自殺でも保険金支払いの対象となる場合もあれば、免責期間を経過した後の自殺でも保険金支払いの対象とならない場合もあります。免責期間内の自殺でも保険金支払いの対象となる場合は、例えば精神障害による自殺の場合です。この場合、病死という判定が下る場合もあり、その場合は保険金支払いの対象となります。

 

一方で免責期間を経過した後の自殺でも保険金支払いの対象とならない場合とは、例えば告知義務違反です。保険契約を締結する前にうつ病の判定を受けていたのに、それを保険契約締結時に保険会社に告知していなかった場合です。この場合は告知義務違反となり、保険金は支払われません。

保険金がおりた場合、借金は返せるのか

では自殺して保険金がおりた場合、その保険金の目的を果たすことができるのかを考えてみます。

自殺して保険金により借金を返したいという場合、その返したい相手が誰なのかを考えてみます。

銀行へ返済したいため自殺する

遺書を残し、残された役員・従業員や家族などに「保険金は銀行への返済にあててくれ」と書かれていたら、その保険金は銀行への返済に充てることでしょう。

 

しかし、そもそも銀行への借入金は、返済できなくなったら銀行と交渉し、毎月返済の借入金であったら返済額を減額・猶予するというリスケジュールという方法をとることができます。一括返済の借入金であったら、その返済日を延長してもらったり、分割にして少しずつ返済していくことを銀行と交渉することもできます。

 

なおリスケジュールは将来、返済を再開することを前提にした返済金額の減額・猶予のため、将来もなかなか返済を再開することができない場合は、銀行にその融資を償却してもらう、つまり諦めてもらうこともできますし、また破産という手段もあります。

 

こう考えると、何も自殺する必要は全くないのであり、銀行からの借入金を返済するために自殺するのは全くばかげていることが分かります。返済できないならできないで、いろいろな手段があります。

ヤミ金へ返済したいため自殺する

私の会社にも、ヤミ金から多くのお金を借りて、その取立てに追われている経営者が相談にやってきます。

ただしヤミ金は、法律の限度を超える高金利で、貸金業の免許もなしに貸し付ける違法の存在です。

そしてヤミ金から借りたお金は、そもそも違法ですので、全く返す必要がないのです。弁護士に間に入ってもらって、ヤミ金に支払わないようにすることができます。

またヤミ金が会社や自宅にまで取立てに押しかけてくるのであれば、警察を呼べばよいのです。

こう考えると、ヤミ金に返済するために自殺するのは全くばかげていることが分かります。

お世話になった人に返済したいため自殺する

銀行から借りられず、知人や親せきなどから借入する経営者がいます。そしてその人に返済することができず、自殺して、そのようなお世話になった人へ返済したいと考える経営者がいます。

 

しかしお世話になった人へ返済してしまうと、起こるのが偏波弁済、という問題です。一部の債権者に優先的に返済することにより、債権者間で不平等になる、ということです。

お世話になった人に対し、優先して返済したいからと、返済する行為は破産法第160条における偏波(へんぱ)弁済となり、否認される可能性があります。

またお世話になった仕入先などへ優先的に買掛金を支払いすることも同様です。

 

つまり、保険金はお世話になった人など一部の人への返済にあてても後日、否認される可能性が高いのです。そうなると、自殺する目的は達成できないことになります。そのために自殺することは全くばかげていることでしょう。

保険金がおりた場合、家族にお金は残せるのか

保険金で家族に、今後の生活のためのお金を残したいと考える経営者がいます。

では、それは実現可能なのでしょうか。

まず考えなければならないのは、保険金が、どの預金口座に入るかです。法人が契約者となっていた保険であれば、保険金は法人の預金口座に入金になるでしょう。そしてその預金口座が、融資が出ている銀行であれば、その預金口座はすぐにロックがかかり、融資と相殺されてしまう可能性が高いでしょう。

 

個人が契約者となっていた保険であれば、保険金が連帯保証人の個人預金口座に入った場合。最近は少なくなりましたが、以前は経営者の妻が、経営者の経営する会社が銀行から受ける融資の連帯保証人になっていたことが多くありました。その場合、その銀行の連帯保証人である妻個人の預金口座に保険金の入金があれば、その預金口座もロックされてしまい、融資と相殺されてしまうことでしょう。

 

このように、自殺して保険金を家族に残したい場合、保険金が入金となる預金口座がポイントとなります。

 

なお、死亡保険金は相続財産にならないので、死亡者個人の借入金が多い、もしくは死亡者が保証人として多くの保証債務を負っていたからと遺族が相続放棄を行っても、保険金は受け取ることができます。

 

法人で保険をかけていてその資金を元手に死亡退職金で遺族に支払う場合でも、一定の要件によってはその退職金は相続財産ではなく固有の財産となり、相続放棄を行っても遺族が退職金を受け取ることができます。

ただし、残された家族、親族、そして会社の役員、従業員に大きな精神的ダメージを与えるのが自殺です。

自殺にかかる費用の請求も

自殺により残された遺族は、精神的ダメージの他に、多くの費用が請求されます。

電車のとびこみであれば、鉄道会社から遺族に数百万円~数千万円の請求がきます。

自宅での自殺であれば、その家は訳ありの家となり、それを遺族が売ろうとしても安く買いたたかれます。

ホテルやビルで自殺した場合、その物件の価値が大きく減少することで、オーナーから損害賠償の請求がくるかもしれません。

このように、自殺は家族や従業員だけではなく、いろいろな人に迷惑なのです。

つらくなっても、まわりが助けてくれます。会社と個人で破産し、そして次の仕事にありつけなくても、生活保護があります。

自殺数は平成15年の34,427人をピークに、平成25年は27,283人と、年々減少しています。

 

資金繰りが厳しい企業向けに、中小企業再生支援協議会、中小企業金融円滑化法、認定支援機関による経営改善計画策定支援事業と多くの支援制度ができ、またグレーゾーン金利の廃止、貸金の総量規制、第三者連帯保証人の禁止と、多くの制度ができ、借金問題で悩む人が減少してきました。

 

資金繰りが厳しくなったらどうするか、借金を多く抱えたらどうするか、正しい知識を身につければ、自殺をすることがいかにばかげているか分かるものです。そのような知識が経営者にも浸透してきているのでしょう。

 

自殺してしまう人は、現状お金がないこと以上に、お金がないことに対する将来への恐怖が原因で命を絶つ場合が多いです。そこから考えても、資金繰りが厳しい場合はどうすべきか、知識をつけたいところです。

 

しかし、まだまだ自殺はなくなりません。つらくなったら、どのようにその状況を乗り越えていけばよいか正しい知識を身につけるとともに、まわりにも相談していきたいところです。

 

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