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戦略 strategy

2021.09.17

即時収益改善する「トリプルNの法則」【高収益化・生産性向上対策No.3】

今回のレポートは、高収益化生産性向上対策の続きということで、「即時収益改善提案~働き方改革の原資を確保するため~」というテーマで トリプルN の法則、N%絞ってN%値上げをすればN%営業利益が増えるという仮説についてご説明をさせて頂きます。

日本の企業にとって「働き方改革」は今の大きな時流であり、これから10年20年かけて取り組んでいくテーマだと思います。単純に労働時間を減らすという制度的な導入は容易ですが、当然それに対する原資が必要になります。

収益力のある企業にとっての「働き方改革」は単に制度の整備ですが、収益余力のない会社はそうはいきません。整備の前に収益を確保する、その原資を確保するということが必要になります。

[高収益化・生産性向上対策No.2]でお話したようにビジネスの型を変えたり、事業立地の変更をしたりすることは中長期的な戦略ですが、本講では短期的な戦術論である『トリプルNの法則』をご紹介します。これは即時収益改善の大きな柱になるので、是非すぐに取り入れてください。

なぜ働き方改革が必要なのか

そもそも、なぜ働き方改革が必要なのか。

2015年度の日本の時間当たり労働生産性は OECD35カ国中20位の42.1ドルです。一方、米国アメリカは68.3ドル、ドイツは65.5ドル、イタリアは51.9ドルです。(『公益財団法人日本生産性本部労働生産性の国際比較2016年度版』による)この差とは為替の変動による誤差の範囲をはるかに超えており、いかに日本の生産性が低い国かということをまず認識すべきだと思います。日本人はこの低生産性を埋めるが為に長時間働いてると言って良いでしょう。

この低生産性の原因は、私は日本の企業が顧客の声を聞きすぎているからだと思っています。これはNo.2でお話した「5大疾病」の「お人よし症候群」という考え方に起因し、その結果、「安売り症候群」と「分散症候群」を招いてるためだと考えます。

顧客を神様のように見て過度な対応を行うことは、一方で自社の経営と社員を疲弊させることに繋がります。顧客に提供するサービスの内容と、負担いただく価格のバランスが国全体で崩れています。

これは、顧客の定義が曖昧になり、すべての人を顧客としてみなしているために起こることです。

コンビニを例にとると、「もっと長時間営業してほしい。私がいつ行くか分からないから」という人をすべて顧客と見て、真に受けた結果、24時間365日の営業を強いられます。コンビニ以外の飲食店などでも、365日開店し、夜は11時まで営業しているような店もたくさんあります。しかも閑散期であろうと週末であろうと、「原則、全て開けておこう」という考え方で運営しているのです。

閉店時間を早めたり、休みを取ったりすれば、当然その分売り上げは減りますが、働く側のコストを考えたとき、はたしてマイナスになるでしょうか。

取り扱いアイテム数も過剰です。本当に100のアイテムがいるんでしょうか。これを90に減らすように言うと、「いや、でもこの残りの10を買う人がいるのです」と反対されます。しかし、この10%の差で生産性も手間暇も全く変わってくるのです。

価格についても同じです。お客さんにとっては安いほうがいいに決まっていますが、はたして店にとってはどうでしょうか。

全てが客思考で、営業時間を長くして、取扱いアイテムを増やして、それから価格も据え置く、そのしわ寄せはどこに行くのでしょうか。当然、全て店に行きます。もっと言えば従業員に行っているわけです。これが日本の生産性が低い原因だと私は思っています。

トリプルNの法則

そこで提言するのが『トリプルNの法則』です。これは、以下のような法則です。

1.N%減らす

2.N%値上げする

3.これにより N %増益になる。

まずひとつ目のNとして、5%または7%ぐらいすべてを絞ってシンプル化にしてみましょう。店舗ビジネスであるならば営業時間、取り扱いアイテムを、メーカーであれば製造品目を、問屋さんなら取り扱いアイテムを減らすのです。

次に5%〜7%値上げをしてください。「良いものを作りサービスを付加して値上げする」のではなく、今のまますぐに値上げをしてほしいのです。

当然、お客さんも減ります。言い方は悪いのですが、選別が起きます。日本の経営者には売上至上主義、客数至上主義という発想が深く根付いてますから、お客様は一人たりとも減らしたくないという気持ちが強い傾向にあります。だから、とても勇気のいる事だと思います。

しかし実際には、5%といわず10%絞り込んで、10%値上げをして、例え顧客数が10%減っても実は収益は悪くなりません。もし顧客が大幅に減るということであればそれは別の問題です。普通はそうなりません。多くの企業様にすでに実践をして頂いており、私は自信をもってこの提案ができます。

例えばヤマト運輸さんは、この数年、大口取引先の Amazonと交渉し値上げを要求しましたね。個人客や法人客にも値上げをし、収益が改善しました。これは法令違反の未払い残業代問題を見直した結果です。

同じように、24時間営業していた飲食店が深夜は店を閉めたり、年中無休で営業していたドコモさんが月に1回定休日を設けたり、りそな銀行さんのある営業店は平日に休みを入れたりしています。

もうすでにこういう流れが起きていることはおわかりいただけると思います。収益をきっちり出さないといけない大企業は粛々と取り組んでいます。価格を武器にしていた業態ですら値上げに踏み切っているのです。是非そういう情報を耳にしながら、事業においてどう取り組んでいけるかということを考えていただきたいと思ってます。

働き方改革は、必ずしも収益にプラスにはなりません。むしろマイナスになることが多い。だから原資が必要なのです。原資は事業で捻出するしかありません。日本の生産性の低さに着目すれば、中小企業にも捻出する原資がたくさんあると分かると思います。

しっかりと値上げをして絞り込むこと、その過程で客数が少し減ること、お客様を少し失うことに過度に反応しないこと。これが『トリプルNの法則』を成功させるひとつの要諦ではないかと思います。

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