銀行が融資判断で重視する「損益分岐点比率」と「安全余裕率」の使い方
企業の経営判断において、損益分岐点比率と安全余裕率は非常に重要な指標です。これらの指標は、あなたの事業がどれだけの余裕を持っているのか、そして売上が減少したときにどこまで耐えられるのかを明確に示します。実は、銀行の融資審査でも重視される指標であり、経営者が理解しておくべき基本的な経営分析ツールです。
目次
損益分岐点比率とは
損益分岐点比率とは、現状の売上高が損益分岐点(利益が0になる売上)をどれくらい上回っているかを表す指標です。
計算式は以下の通りです。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
= 固定費 ÷(1 − 変動費率)
損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 ÷(実際の)売上高 × 100%
簡単に言えば、「現在の売上が、儲けも損もしない売上(損益分岐点)の何パーセントまで低下しても大丈夫か」を測定する指標です。損益分岐点比率が低いほど、経営に余裕があるということになります。
安全余裕率とは
安全余裕率とは、経営にどれだけ余裕があるかを示す指標です。言い換えれば、「現在の売上から、どれだけ売上が減少しても黒字を保ち続けられるか」を表しています。
計算式は以下の通りです。
安全余裕率 = (売上高 − 損益分岐点売上高)÷ 売上高 × 100%
安全余裕率が高いほど、経営の安全性が高いということです。
2つの指標の関係性
重要な点として、損益分岐点比率と安全余裕率は常に一定の関係を保っています。
損益分岐点比率 + 安全余裕率 = 100%
この関係式から、損益分岐点比率が低いことは安全余裕率が高いことを意味し、その逆も然りです。つまり、これは1つの現象を異なる視点から表現した指標と考えられます。
銀行の融資審査で何を見ているのか
銀行は損益分岐点分析を利用して、企業が将来の売上高減少やコスト増加のリスクにどれだけ耐えられるかを判断します。具体的には、以下の点を評価しています。
企業の返済能力 — 経済状況が悪化したときでも、返済を続けられるだけの余裕があるか
事業の安全性 — 売上が減少しても黒字を維持できる事業構造か
経営の安定性 — 固定費と変動費のバランスが健全か
損益分岐点比率が高い企業は、売上が減少するとすぐに赤字になるリスクがあるため、銀行の融資判断も厳しくなります。一方、比率が低い企業は経営に余裕があると判断され、融資条件も有利になる傾向があります。
業種によって大きく異なる損益分岐点比率
損益分岐点比率が高いか低いかは、業種によって大きく異なり、ビジネスモデルに左右されます。
損益分岐点比率が高い業種(60~80%以上)
宿泊業、飲食サービス業、小売業などが該当します。これらの業種は、売上に占める固定費の割合が高いことが特徴です。具体的には、店舗の家賃、従業員給与、減価償却費などの固定費が大きく、売上が減少するとすぐに固定費が回収できず、赤字に転落するリスクが高い事業構造です。
経済状況の変化や季節変動の影響を受けやすく、経営管理がシビアになります。
損益分岐点比率が低い業種(40~60%程度)
卸売業、建設業、製造業などが該当します。これらの業種は、売上に占める変動費の割合が高いことが特徴です。売上が減少すると、仕入れや外注費などの変動費も一緒に下がるため、赤字になりにくい事業構造を持っています。
売上変動に対する耐性が強く、経営の安定性が相対的に高いと言えます。
損益分岐点比率の数値に基づいた経営戦略
同じ指標でも、数値によって採るべき経営戦略は異なります。
損益分岐点比率が低い場合(70%以下)
この状況は、収益構造が安定していることを意味します。売上が減少しても利益を確保できる余裕があるため、以下の施策を積極的に推進すべきです。
設備投資 — 生産能力の拡大や効率化による競争力強化
人材育成 — 人的資本への投資による中長期的な競争力向上
市場シェアの拡大 — 営業力の強化や新規事業への進出
経営に余裕がある時期だからこそ、成長投資に資金を充てるべきです。
損益分岐点比率が高い場合(100%に接近、または超過)
この状況は、固定費を回収できていない、あるいは収益がかなり低下している状況を示します。企業の存続に影響する可能性があるため、早急な対応が必要です。
事業構造の見直し — 採算性の低い事業の統廃合、事業ポートフォリオの再構成
固定費の削減 — 不要な経費の徹底的な削減、効率化による固定費低減
売上構造の改善 — 利益率の高い事業や商品へのシフト
資金繰り対策 — 資金不足を回避するための融資相談や経営改善計画の策定
この段階では、成長戦略よりも経営の安定化と黒字化が最優先課題です。
損益分岐点分析を経営判断に活かす
損益分岐点比率と安全余裕率は、売上高・変動費・固定費の勘定科目を使って、迅速かつ簡単に概算数字を算出できます。複雑な分析を必要とせず、決算書から即座に計算できる点が大きなメリットです。
これらの指標を活用することで、以下のような経営判断が可能になります。
目標利益達成に必要な売上 — 「黒字化するには、あと何億円の売上が必要か」が明確になる
コスト削減の優先順位 — 「どの固定費を削減すれば、安全余裕率が向上するか」が見える
経営戦略の立案 — 「積極投資が可能か、守りの経営か」の判断基準になる
銀行との交渉 — 借入金の返済余裕度を客観的に示すことができる
定期的に計算し、推移を追跡することで、事業の健全性を常に把握できます。
こんな経営課題を抱えていませんか
損益分岐点比率や安全余裕率の算出方法が不明確である、毎期赤字が続いて黒字化が困難な状況にある、売上を増やすことが難しい環境にある、あるいは事業構造の見直しが必要だと感じながら踏み出せていない。
こうした経営課題に直面している企業は少なくありません。特に、安全余裕率が低い業種(飲食・宿泊など)や、既に損益分岐点比率が100%を超えている企業では、早期の対応が急務です。
損益分岐点分析は、経営改善の第一歩です。この指標を正確に理解し、自社の経営課題の解決に結びつけることが、企業の持続的な成長を実現するための鍵となります。
エクステンドでは、損益分岐点分析を活用した経営改善計画の策定から、赤字からの脱却、事業再生まで、幅広い経営課題に対応しています。
現在、毎期赤字が続いている、銀行からの融資が難しくなった、事業構造を見直したいが具体的にどう進めるべきか分からない—こうした状況であれば、お気軽にご相談ください。リスケジュール中の企業にも対応しています。
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