売り込まなくても売れる仕組みの作り方|中小企業のインバウンドマーケティングと情報発信
テレアポ・飛び込み営業・ダイレクトメール、今まで売上を支えてきたアウトバウンド営業の効果が落ちてきていると感じていませんか。これは特定の企業だけに起きていることではなく、日本企業全体で起きている現象です。
その背景には、消費者の情報収集行動の大きな変化があります。本記事では、売り込まずに顧客に見つけてもらう「インバウンドマーケティング」の考え方と、中小企業がすぐに実践できる情報発信の具体的な方法を解説します。
なぜアウトバウンド営業の効果が落ちてきているのか?
テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・チラシ・電話セールス・飛び込み訪問・ダイレクトメール——これらはアウトバウンドマーケティングと呼ばれ、企業から消費者へ一方的に売り込む・送りつける手法です。かつてはこれらの手法で売上を上げることができましたが、ここ数年で効果が大きく落ちてきています。
理由は2つあります。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| ① 消費者が自分で情報を探すようになった | インターネットの発達により、知りたい情報はWebで検索すれば調べられるようになった。消費者の「検索技術」も高度化し、「銀行融資 リスケジュール 注意点」のように細かく検索するようになっている |
| ② 消費者の時間がSNS・動画に移った | YouTube・X・Instagramなど新しい媒体に消費者が時間を使うウェートが高くなり、テレビ・新聞・雑誌への注目度が相対的に低下した |
消費者が自分で情報を探しにいく時代に、企業が一方的に売り込んでも「引いてしまう」だけです。今は、消費者が知りたい情報を伝えることによって、あなたの会社への関心を高めさせることの方が重要です。
インバウンドマーケティングとは何か?アウトバウンドとどう違うのか?
インバウンドマーケティングとは、売り込まない・見つけてもらう・コミュニケーションするという3つのポイントで表現できるマーケティングの考え方です。
| アウトバウンドマーケティング | インバウンドマーケティング | |
|---|---|---|
| アプローチ | 企業から消費者に売り込む | 企業から消費者に売り込まない |
| 情報の流れ | 企業から消費者への一方通行 | 企業と消費者がコミュニケーション |
| 主な手法 | テレアポ・飛び込み・DM・チラシ・テレビ・雑誌広告 | SNS・YouTube・情報提供型HP・メルマガ・コラム |
| 消費者の立場 | 送りつけられる | 自分から探して見つける |
インバウンドマーケティングとは、SNS・YouTube・X・情報提供型ホームページなどに多くの記事・動画を掲載することによって、多くの消費者から検索・発見されやすくなるようにし、そこから自社を知ってもらい、消費者の方からアプローチしてもらうようになるマーケティングです。
なお、インバウンドマーケティングを始めるからといって、アウトバウンド営業をすぐにやめる必要はありません。今まで行ってきたアウトバウンドはその効果を見ながら続けるかやめるかを選択し、インバウンドを並行して育てていくのが現実的なアプローチです。
インバウンドマーケティングの効果はどう計測するのか?4つの指標とは
インバウンドマーケティングを実践するうえで重要なのが、取組効果を毎月数値で追うことです。そのために次の4つの指標を作ります。
| 指標 | 内容 | 計測例 |
|---|---|---|
| ① 仕掛けた指標 | 発信した記事・動画・投稿の数 | 今月のコラム投稿数・メルマガ発行回数 |
| ② 見つけられた指標 | HPアクセス数・SNSリーチ数 | 月間アクセス・フォロワー増加数 |
| ③ コミュニケーションした指標 | コメント・返信・問合せの数 | SNSコメント数・メルマガ返信数 |
| ④ 送客した指標 | HPへの流入・問合せへの転換 | SNS・ブログ経由のHP問合せ数 |
インバウンドマーケティングを実践していくと、②③④の指標が右肩上がりで上がるようになります。④送客した指標が上がれば、売上は上がっていくことになります。
インバウンドマーケティングを実践するために必要な人材はどんな人か?
インバウンドマーケティングを取り組めるようになるためには、次のような4タイプの人材(またはその能力を持つ人)が必要です。社長自身がこれらを身につけることから始めてもかまいません。
| タイプ | 内容 |
|---|---|
| ① デジタルな人 | SNS・YouTube・X・HPなどの媒体をなんなく使いこなせる人 |
| ② 分析できる人 | 記事の閲覧数・問合せ転換数・HP流入経路などを計測・分析できる人 |
| ③ リーチが多い人 | メルマガ読者数・YouTube登録者数・SNSフォロワー数が多く、多くの人に記事を届けられる人 |
| ④ 記事を創造できる人 | 読者の役に立つ記事・動画・コンテンツを継続的に作り出せる人 |
中小企業が今すぐ始められる情報発信の方法と3つのチャネルとは?
インバウンドマーケティングを実践するうえで、中小企業がすぐに取り組めるのが情報発信です。売上を向上していきたい企業の多くで、すぐにでも手をつけた方がよいことの一つが、あなたの会社がどんな仕事をしているのか・どんな知識・ノウハウを提供できるのかを、顧客・見込客に発信することです。
情報発信の主な方法は次の3つです。できるだけ全ての方法を使うことが理想ですが、情報は転用が効きます。メルマガで発信したことをニュースレターにも記載し、HPに転用してもよいのです。
| チャネル | 特徴 | 推奨頻度 |
|---|---|---|
| メールマガジン | 過去に接触した顧客・見込客・名刺交換した人に直接届く。読者との関係性を深めやすい | 月1回(難しければ3ヶ月に1回からでも可) |
| ホームページ・コラム | 不特定多数が見る。検索で見つけてもらえるため新規接触の起点になる | 月2〜4本(継続が重要) |
| ニュースレター(郵送・手渡し) | 既存客への定期接触ツール。手に取って読む媒体のため印象が残りやすい | 月1回〜四半期に1回 |
誰に向けて情報発信するとよいか?発信相手の選び方
情報発信する相手は、過去に1回でもあなたの会社と接触したことのある人です。具体的には次のとおりです。
- 1回でも取引したことのある顧客
- 過去に問合せや資料請求をしたことのある見込客
- HPでメルマガ登録した人
- 名刺交換したことのある人
せっかく接触があったのに何も発信しなければ、相手はすぐにあなたの会社のことを忘れます。一方で同業他社が定期的に接触し続けていれば、知らないうちにその顧客は流れていってしまいます。
発信する情報の内容はどうすればよいか?
情報発信の内容は、自社の仕事に関係することを書くことが基本です。
- あなたの会社がどんな仕事をしているのか
- 顧客・見込客に提供できる知識・ノウハウ
- 経営者はどのような思いで仕事を行っているのか
- 実際の仕事の事例・お客様の声
趣味や生活情報を書くこと自体は否定しませんが、読む方は仕事に関係することほど読みたいものです。趣味・生活情報を入れる場合は全体の3分の1以下に抑えてください。
情報発信を続けるとどうなるか?メディアを大きくする考え方
情報発信を行うと、その情報が到達する人数が「メディアの大きさ」となります。始めた当初は読者が数人・数十人でも、継続することで確実に大きくなっていきます。
エクステンドの実績を例にすると、情報発信を継続した結果、創業から6年で売上7億円に到達しました。エクステンドのメルマガ「銀行とのつきあい方」は読者数が数万名規模になっており、これが継続的な問合せ・売上の土台となっています。
大事なのは、情報発信をスタートすること、そして情報発信を続けること。まずは送る相手が数十名でもかまいません。継続することでメディアは大きくなり、売上向上のきっかけになっていきます。
売り込まなくても売れる仕組みを作るために、今日からできることは何か?
| ステップ | やること |
|---|---|
| ① 発信相手のリストを作る | 過去に接触した顧客・見込客・名刺交換相手のメールアドレスを整理する |
| ② メルマガ・コラムを始める | まず月1本から。自社の仕事・ノウハウ・事例を中心に書く |
| ③ 4指標を計測する | 仕掛けた・見つけられた・コミュニケーションした・送客した の4指標を毎月記録する |
| ④ コンテンツを転用する | メルマガの内容をHPコラムに・コラムをSNS投稿にと転用して発信チャネルを広げる |
| ⑤ 継続する | 最初は反応がなくて当然。メディアは継続によって大きくなる |
よくある質問
Q. インバウンドマーケティングを始めるには、何から手をつければよいですか?
A. まず過去に接触したことのある顧客・見込客のメールアドレスをリスト化することから始めてください。次に、月1回のメルマガまたはコラム記事の発信をスタートします。内容は自社の仕事・知識・事例を中心に書きます。最初から完璧を目指す必要はありません。継続することで読者が増え、メディアとしての力がついてきます。HPのアクセス解析を設定し、毎月の数値を確認する習慣を作ることも並行して行ってください。
Q. メルマガはどのような内容を書けばよいですか?
A. 読む方が「役に立つ」と感じる情報を中心に書くことが重要です。具体的には、自社の専門知識・ノウハウ、実際の仕事事例、顧客の声、業界の最新情報などが適しています。「自社の宣伝」「商品の売り込み」ばかりになると読者は離れていきます。趣味や日常の話題を入れること自体は問題ありませんが、仕事に関係しない内容は全体の3分の1以下に抑えてください。まずA4一枚分の文量から始め、継続することを優先してください。
Q. 情報発信を始めても反応がない場合、どうすればよいですか?
A. 始めてすぐに反応が出ることはほとんどありません。インバウンドマーケティングはアウトバウンドと違い、即効性より継続性が重要です。6ヶ月〜1年継続してもほとんど反応がない場合は、発信内容(読者が求めているものかどうか)と発信頻度(少なすぎないか)を見直してください。また発信相手リストが少ない場合は、名刺交換の機会を増やしてリストを広げることも並行して行います。数十名でも、継続して発信し続けることで確実に反応が出てきます。
Q. テレアポや飛び込み営業はもう効果がないのですか?やめるべきですか?
A. すぐにやめる必要はありません。アウトバウンド営業は効果が落ちてきていますが、業種・ターゲット・タイミングによってはまだ有効な場面もあります。重要なのは、各手法の費用対効果を計測したうえで継続か中止かを判断すること、そしてインバウンドマーケティングを並行して育て始めることです。インバウンドが機能し始めれば、アウトバウンドへの依存度を徐々に下げられるようになります。
Q. インバウンドマーケティングに必要な人材がいない場合はどうすればよいですか?
A. まずは社長自身が取り組むことをおすすめします。デジタルな操作・分析・記事作成のいずれも、専門知識がなくても始められます。社内で担当できそうな人がいれば、その人に任せながら社長がチェックする体制でも問題ありません。外部のライターやマーケティング支援会社に一部を委託することも選択肢ですが、自社の仕事・事例・ノウハウという「突き抜けたコンテンツ」は外部では作れません。最終的には社内に記事を書ける人材を育てることが、インバウンドマーケティングを継続させる鍵となります。
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