赤字店舗の撤退はいつすべきか?部門別損益管理と共通経費の配賦で正確な撤退判断をする方法
多店舗展開や複数事業を抱える企業では「どの店舗・部門が赤字なのか」を正確に把握できないまま経営しているケースが少なくありません。漠然とした赤字の認識のままでは撤退のタイミングを逃し、会社全体の存続に影響が及ぶリスクがあります。本記事では部門別損益管理の基本と、撤退判断に欠かせない共通経費の配賦の考え方を解説します。
部門別損益管理とは何か?なぜ必要なのか?
売上高別・営業所別・事業別などで損益を区分して把握することを「部門別管理」といいます。多店舗展開している会社では、利益を出している店舗もあれば損失を出している店舗もあります。
会社全体の損益だけを見ていると「どこが稼いでいてどこが足を引っ張っているか」が見えません。部門別に損益を把握することで、経営資源(ヒト・モノ・カネ・時間)をどこに投入すべきかの判断が初めて可能になります。
| 部門別管理なし | 部門別管理あり |
|---|---|
| どの店舗が赤字か把握できない | 赤字店舗を特定して対策を打てる |
| 撤退のタイミングを逃して損失が拡大する | 撤退基準を数字で設定して粛々と実行できる |
| 経営資源の最適配分ができない | 利益を出している部門への集中投資が可能になる |
赤字店舗の撤退判断はどう進めるのか?
損失店舗の撤退判断は、以下の3ステップで進めます。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①正確な損失額を把握する | 部門別の損益を数字で把握する。「なんとなく赤字」では判断できない |
| ②撤退対象店舗を選別する | 損失額・売上高の減少傾向・回復可能性を基準に判断する |
| ③撤退期限を設定する | 「もう少し見てみよう」という先送りが損失拡大の最大の原因。期限を明確に決める |
以前から赤字が継続していて改善策も効果が出ていないなら、早期撤退が必要です。少額の赤字であれば、撤退対象であることを社員に説明することで奮起を促せるケースもあります。しかし撤退するにも資金が必要であり、先送りすれば必要な撤退費用まで確保できなくなるリスクがあります。撤退の判断は早いほど損失が小さく済みます。
共通経費の配賦をどう考えるべきか?
部門別管理で注意が必要なのが「共通経費」の存在です。本部経費・本社経費など、特定の部門に帰属しない支出をどう扱うかが判断を複雑にします。
一つの判断基準として「その支出は売上高と連動しているか」という視点があります。
| 経費の種類 | 撤退後にどうなるか |
|---|---|
| 仕入高 | 売上高がなくなれば基本的になくなる |
| パート・アルバイトの人件費 | 退職すれば給与・社会保険料がなくなる |
| 地代家賃・賃借料 | 契約終了後になくなる(時間がかかる場合あり) |
| 広告宣伝費 | 完全撤退ならなくなるが、1店舗のみの撤退では継続することがある |
| 管理職・事業部長の人件費 | なくならない(他部門の負担が増す) |
| 役員報酬 | なくならない |
1店舗を撤退することで、存続する他店舗の負担が増すコストが存在します。これを正確に把握せずに「赤字店舗を閉めれば全体が改善する」と判断すると、予想外の結果になることがあります。
部門別損益管理の正しい見方とは?
部門別管理では、以下の2種類の損益を別々に把握することが重要です。
| 損益の種類 | 内容と活用法 |
|---|---|
| 部門別単独の損益 | その部門のみで発生する収益・費用だけで計算した損益。部門の実力値を測る |
| 共通経費配賦後の損益 | 共通経費を売上高や人員数などで按分して各部門に割り当てた後の損益。会社全体の視点で見る |
部門単独では黒字でも、共通経費を配賦すると赤字になる部門もあります。両方の視点で管理することで、撤退判断・投資判断の精度が上がります。
なお部門別管理は撤退対象を見つけるためだけのツールではありません。本来の目的はより効率の高い部門に経営資源(ヒト・モノ・カネ・時間)を集中させるための判断基準を作ることです。この視点で活用することが、事業再生・経営改善への近道になります。
よくある質問
Q. 部門別管理は何店舗以上から導入すべきですか?
店舗数に関係なく、2部門以上の事業・拠点を持つ企業であれば部門別管理の導入を検討する価値があります。2〜3店舗の段階でも部門別損益を把握することで、どの店舗に投資すべきかの判断が明確になります。ただし最初から精緻なシステムを導入する必要はなく、Excelで部門別の売上・経費を集計することから始めて習慣化することが先決です。
Q. 共通経費の配賦基準はどう決めればよいですか?
最も一般的な配賦基準は「売上高按分」(各部門の売上高に占める割合で共通経費を配分)です。その他、人員数按分・床面積按分・作業時間按分なども活用されます。どの基準を使うかは業種・共通経費の性質によって異なりますが、重要なのは「一度決めた基準を継続して使うこと」です。毎期配賦基準が変わると部門間の比較ができなくなります。
Q. 赤字店舗を閉めても会社全体の損益が改善しないことがありますか?
あります。赤字店舗を閉めても、その店舗に配賦していた管理職の人件費・役員報酬・広告宣伝費などの共通経費が他の店舗に再配賦されるため、全体の改善幅が小さいケースがあります。撤退前に「この店舗をなくすと共通経費の負担がどう変わるか」を正確にシミュレーションしておくことが重要です。部門別単独の損益だけで撤退を判断すると、誤った結論に至ることがあります。
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執筆:坂将典
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