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知っておきたい「優越的地位の濫用」

銀行との取引の中で、知っておきたい知識の一つが「優越的地位の濫用」です。

 

優越的な地位の濫用とは、取引の中で、優越的地位にある方が、取引先に対して不当な不利益を与えることです。

銀行は企業に対して、融資の貸し手となります。企業が銀行から融資を受けられなくなったら、企業の資金繰りは厳しくなります。そうなると銀行は、企業の資金繰りを握っている優越的地位に立つことになります。

 

銀行のノルマと優越的地位の濫用

銀行の支店の得意先係、つまり営業マンには、本部から多くのノルマが課せられます。4月~9月、10月~翌年3月と、半期ごとにいろいろな数値目標が、本部から支店におりてきます。そしてそれを、得意先係ごとに割り振って、各個人のノルマとなります。

 

融資の総額増加、信用保証協会保証付融資の増加、新規融資先獲得から、個人のクレジットカード獲得、年金振込獲得、住宅ローン増加まで、私のいた銀行では、30個以上のノルマがありました。私は銀行員時代の大半を得意先係として過ごしましたが、なんかノルマに追われて日々仕事していた感じでした。

 

どんな企業もそうなのですが、銀行員もノルマ達成に向け、大変なのです。私はそのようなノルマを達成しようとする時、まず既存の融資先に訪問したものでした。

 

経営者、経営者の奥さん、お子さん、前社長である会長、役員、そして従業員まで、そのノルマの達成に協力してくれるのは、融資先企業でした。この時は、ノルマ達成に向け必死です。お客様のお役に立つように、という考え方ではなく、ノルマ達成のための、ひたすら自分の都合で、

 

「クレジットカード作成お願いします。」

 

「今度、このようなキャンペーンをやることになりました。ご協力お願いします。」

 

と、頭を下げていたものでした。

 

融資先の社長は、たいてい快く、協力してもらっていたのですが、今考えてみれば、優越的地位の濫用に近いケースがあったのかもしれません。

 

優越的地位の濫用で考えられるケース

銀行の企業に対しての優越的地位の濫用には、次のようなことが考えられます。

 

  • 銀行や銀行関係会社の商品・サービスの購入を要請
  • 銀行関係会社との取引の要請
  • 企業側にとって不利益になる融資条件の設定と変更
  • 「他の銀行とつきあわないでください」と取引制限させること
  • 銀行から企業への役員・社員の送り込み

 

これらは、銀行から提案があっても、あくまで企業側が自分の意志で行う、もしくは受け入れるのであれば問題ないです。一方、これらを受け入れなければ今後の融資に影響がある、と思わせるようプレッシャーをかけてであれば、問題ありなのです。

 

優越的地位の濫用は法律のどこに書いてあるか

なお、優越的地位の濫用の禁止の法的根拠は、独占禁止法にあります。

 

独占禁止法第2条第9項第5号の条文を抜粋します。ここに記載のことを、不公正な取引方法の一つとして禁止しているのです。

 

自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。

  • イ 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。
  • ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
  • ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。

最近の優越的地位の濫用

最近で、優越的地位の濫用で問題となるケースは、なんといっても為替デリバティブです。

私がコンサルタントの仕事を始めた後、ある印刷業の、経営者と銀行との交渉の場に居合わせたことがあるのですが、その銀行でビジネスローンの融資実行が決まってそれを経営者に伝える時、その銀行員はいきなり、為替デリバティブの話を持ちかけるのです。

 

その企業は印刷業で、為替デリバティブで為替リスクを緩和する意味がほとんどないのに。融資の契約の前にいきなり為替デリバティブの話をされたら、経営者としても、それが融資の条件と思ってしまうものでしょう。

 

その後、為替デリバティブは大きな損失を出し、その企業は弁護士を入れて銀行とやり取りをすることになりましたが、このようなことが、最近、多くの企業で問題となりました。また、歩積み両建ても、優越的地位の濫用に当てはまるケースが多いので、覚えておくとよいです。

 

歩積み(ぶづみ)とは、銀行が手形割引に際して、割引額の一部を預金として留保(定期預金作成を強要など)する場合です。

両建て(りょうだて)とは、融資で出した資金の全部または一部を、担保もしくは見合い預金(定期預金作成を強要など)する場合です。

 

歩積み両建ては、金融庁からそれを行わないよう、金融機関に対し指導されていますし、優越的地位の濫用の一つのパターンとしても考えられることです。歩積み両建てを行うと、実質借入金がその分、少なくなるのです。そうすると、実質金利が高くなります。

 

Aパターン 2500万円の融資
Bパターン 5000万円の融資、その中で2500万円の定期預金作成

 

これらは、いずれも実質借入金は2500万円ですが、融資金利が2%、預金金利が0%とした場合、融資5000万円の年間利息は100万円となり、これを実質借入金2500万円で割ると、実質金利は4%となるのです。

 

Bパターンのように融資した資金で定期預金を作るよう銀行が要請してきても断って、Aパターンで融資を受けるようにしてください。

 

優越的地位の濫用にはきっぱりと断りを

では、銀行から、優越的地位の濫用と思われるような要請をしてきたとしたら。きっぱりと断りましょう。銀行も、コンプライアンス教育が徹底しており、その項目の中に、優越的地位の濫用も入っています。

 

しかし企業側にとって、費用負担も少ないことであれば、つきあってあげてもよいと思います。

 

例えば年会費数千円のクレジットカードぐらいは、つきあってあげてもよいかもしれません。それで銀行員との人間関係が少しでも良くなれば、安いものでしょう。

 

優越的地位の濫用を覚えておいて、今後の銀行取引に活かしてください。

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