これからは、「融資を得るためにこそ粉飾を止める」
事業性評価という融資への考え方
紹介している動画でも取り上げられており、また
今後本メルマガでも内容を紹介させていただくことになる概念、
「事業性評価」。
これまでの不動産や保証人といった保全に頼りすぎることなく
企業の事業の内容や、成長可能性を適切に評価することで
新たに融資を行う、という考え方を基本としていますが、
具体的な融資手法としては、
- 企業の事業の発展に必要な資金を見定め
- そのための運転資金を「分割返済なし、期日には継続する前提で」出す(期日に利払のみで借替する⇒一度元本返済をしなくともよい)
- 貸し手(銀行)側の担保は動産担保、特に運転資金に直接該当する事業の在庫や、売掛債権を原則とする。
- 融資手法としては、当座貸越や手形貸付(期日一括)が中心
この考えの融資ならば、実際に仕事があるものに対して、
最終的にお金を回収するまでの間に発生する棚卸や売掛を、
一時的にお金に代
えることができるわけですから
企業にとっては、売上(棚卸や売掛)が増え、資金が枯渇する場合に
増えた棚卸や売掛を担保として運転資金を確保できるため、
安心して受注し、売上を向上させ、利益を向上させることができる
結果、企業の発展となる
銀行にとっては、不動産担保や保証人に依存しなくとも保全を確保でき
安全に貸出を伸ばすことができる
という、双方にメリットがある取引です。
広島では、マツダ関連の製造業が、この事業性評価を得て
格付け上では無理な融資を新規に得たことが発表されるなど
一部では既に実績も上がっています。
「必要な運転資金」の算出方法は、正しいけれど課題もある
去年より取り上げられていたこの事業性評価、今後より大きな
取扱いになることは間違いありませんが、銀行・企業どちらにとっても
触れたくない課題を残しています。
それは、「必要な運転資金」の算出が、「経常(正常)運転資金」
による、とことが根底にあります。
正常運転資金は、貸借対照表上の数値から算出可能で
(売掛金+受取手形+棚卸資産)-(買掛金+支払手形)
で計算されます。
現預金になるまでの回収待ち状態の売上債権から
実際の支払を待ってもらっている支払債務を引いたもので
理論上の運転資金として、もちろん基本であり正当です。
が、問題は、
- 売掛金・受取手形で実態回収不能分を計上し続けている
- 棚卸資産で死蔵等しているものが、過大な評価になっている
- それぞれに架空の計上がある
企業が、どうしても多いことです。
表面上は、売掛金や受取手形、棚卸資産が大きくなるので
正常運転資金が増加、事業性評価は受けやすくなるように見えますが
銀行にとってこれは恐怖でしかありません。
・銀行にとって正確な価値が分かりにくい棚卸資産は、評価が困難
この点は多くの方が指摘されていることですが、本当に問題なのは、
・銀行(の現場)が黙認している粉飾が明らかになってしまう
ことにあります。
過剰な経常運転資金を見合いとして短期融資を実行しても
その後の売上回収金額は(粉飾している分だけ)理論値よりも
小さくなるので、融資の回収懸念が大きい
⇒銀行のリスクが大きくなる
貸さない場合は、理由として粉飾していることを「知っている」と
明らかにしなくてはいけない
⇒なんで今まで知らなかったのか、黙認してきたのかが問題になる
要するに、目を瞑ってきたことが表に出てきてしまう、ということ。
粉飾している企業なんて基本的にはない、という表向きの原則と
実際には多くの粉飾企業を発見しても、当面の資金繰りに問題がないと
判断すれば見なかったことにしてきた皺寄せが
この問題を起こしてしまっています。
企業側対応は
事業性評価を得て融資を得る、という考えは今後有力な
考え方になること自体は間違いありません。
が、そのために粉飾をする・過去の粉飾をそのままにして
経常運転資金をかさ上げする、という手法は通用しません。
仮に借りることができても、その後の入金や資金の出入り、
試算表の動きで発覚するだけなのです。
しかし、棚卸は銀行側が評価しづらいものだからこそ、
評価をどのように行うのか、実際の価値が今後どのように変動するのか
説明できる企業には、逆にチャンスになるといえるでしょう。
融資を得るためにこそ粉飾その他の決算対策=過去へのお化粧は止め、
今後の成長可能性をアピールできる企業が
新たな融資を得られると私は考えております。
PS.
すでにお化粧してしまった決算書でも対応策はございます。
我々エクステンドは、金融調整のプロです。
執筆:今野 洋之