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新規融資もリスケジュールもより難しくなるのか?

震災に対する政府の反応の鈍さにイライラすることも多いことでしょうけれども、目の前の問題一つ一つに正面から取り組まれていることと思います。原材料の流通不足や放射性物質の漏えい等、現在進行形の問題もまだまだ残ってはおりますが、より正しい情報を元にした正しい経営判断を目指したいものです。

 

今回は銀行のこれからの対応方針について、金融庁発表資料等を元に説明申し上げます。

 

4月1日付で金融庁より発表された、「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律に基づく金融監督に関する指針」(以下、指針)について、概要をまとめています。本指針は、1年間の延長になった金融円滑化法の運用方針について、金融庁より金融機関へ指導をする意味合いのもので、金融庁が金融機関に行う検査にも影響を大きく与える、重要なものです。

 

1.中小企業が抱える経営課題について、金融機関がより積極的にコンサルティング機能を果たし、支援していくことを求めています。

 

条件変更(リスケ)であれ、新規融資であれ、「審査(稟議)をするとき」だけでなく、継続的にモニタリングをし、借り手の経営が改善へ向かえるようにという意図が込められています。

 

2.各金融機関の規模、特性その他の個別の状況等を十分に踏まえ、機械的・画一的な取扱にならないよう配慮すること、特に今回の震災被害による影響については、震災地では金融機関自らも被害を受けていることから、借り手と貸し手が共に復興に向けて着実に歩み、経営改善・事業再生を図ることが求められています。

 

3.借り手の経営課題の抽出として、以下の点を総合的に判断する、とされています。

 

・ 債務者の経営資源、経営改善・事業再生等に向けた意欲、経営課題を克服する能力
・ 外部環境の見通し
・ 債務者の関係者(取引先、他の金融機関、外部専門家、外部機関等)の協力姿勢
・ 金融機関の取引地位(総借入残高に占める自らのシェア)や取引状況(設備資金/運転資金の別、取引期間の長短等)
・ 金融機関の財務の健全性確保の観点

 

4.ソリューションの提案として、下記を例としています。

 

・経営改善が必要な債務者(自助努力により経営改善が見込まれる債務者など)には、ビジネスマッチングや販路獲得支援、貸付条件の変更等を行う。

 

・事業再生や業種転換が必要な債務者(抜本的な事業再生や業種転換により経営の改善が見込まれる債務者など)には、貸付の条件変更の他、金融機関の取引地位や取引状況等に応じ、DES・DDSやDIPファイナンスの活用、債権放棄も検討。

 

・事業の持続可能性が見込まれない債務者(事業の存続がいたずらに長引くことで、却って、経営者の生活再建や当該債務者の取引先の事業等に悪影響が見込まれる債務者など)には、

 

・ 貸付けの条件の変更等の申込みに対しては、機械的にこれに応ずるのではなく、事業継続に向けた経営者の意欲、経営者の生活再建、当該債務者の取引先等への影響、金融機関の取引地位や取引状況、財務の健全性確保の観点等を総合的に勘案し、慎重かつ十分な検討を行う。

 

・ その上で、債務整理等を前提とした債務者の再起に向けた適切な助言や債務者が自主廃業を選択する場合の取引先対応等を含めた円滑な処理等への協力を含め、債務者や関係者にとって真に望ましいソリューションを適切に実施。

 

・ その際、債務者の納得性を高めるために十分な説明に努める。

 

・ 慎重かつ十分な検討と債務者の納得性を高めるための十分な説明を行った上で、税理士、弁護士、サービサー等との連携により債務者の債務整理を前提とした再起に向けた方策を検討

 

皆様、改めてどのように読み解かれますか。私共としては、これは金融行政のはっきりとした意思表示であると考えております。

 

「もうバラマキによる融資をするつもりがない」「回収可能性が不透明な融資を放置するつもりはなく、積極的に処理を進める」という、明確な意思です。

 

今回の指針には、「積極的に貸付をする」「前向きに対処する」という文言が殆どありません。「新規融資や条件変更」という文言もなく、条件変更の方が先に記載されています。
※普通、融資の話があって、それから条件変更の話ですよね。それが逆を向いているのです。

 

それだけ、新規融資には及び腰だということです。

 

新規の信用供与(ここでは融資とします)については、「新規の信用供与により新たな収益機会の獲得や中長期的な経費削減等が見込まれ、それが債務者の業況や財務等の改善につながることで債務償還能力の向上に資すると判断される場合」、積極的に、適時適切に行うとしていますが…、これまで同様の融資申し込みでは困難な場合が大半でしょう。

 

新規で借入を行っても、債務償還能力(年数)が長期的に向上する借入というのはそれだけの利益と返済を出し続けることができることが前提ですから、既存の借入返済で苦しんでいる中小企業にとっては、突き放されたのも同然、いえ、そのものです。

 

また、「自主廃業」「債務整理を前提」という文言が明記されていること、これが金融庁の本命です。これまで銀行が取引先の企業を倒産させる、「金融倒産」は原則NGでした。銀行が直接企業を破たんさせることは、あってはならなかったのです。それが、今回かなり踏み込まれた形で、容認されているのです。

 

今までは「融資をするか、しないで様子見するか」という選択肢であったものが「融資をするか、担保処分をしてでも回収するか」に変化するということです。

 

銀行は、それでも融資による金利で収益の7割以上を得ています。従って、融資をゼロにする、というわけではありませんが…、支援をする相手と、そうでない相手の二極化がはじまる、といってよいでしょう。

 

その分岐点は、「事業の持続可能性が見込めるか」。これが全ての源になります。1周回って元に戻ってきたようなものです。銀行に認めてもらうために、自らの実力と存続可能性を示すことが、何より銀行との関係をより高いものにします。

 

既に、一部金融機関は4月以降、リスケジュールの延長に際して事業計画の進捗や内容について、借り手にかなり細かくヒアリングを行ってきています。そのお客様については、かなりの経営改善がなされているため、問題はありませんでしたが。

 

皆様の事業のプロは、間違いなく皆様です。しかし、皆様の存続と発展可能性を銀行に納得してもらうためにも、まずは自らその絵を描かなくてはなりません。銀行にいわれてつくる経営計画などではなく、自らの在り方を確認し、実行していくための意思表示としての経営改善計画書が、真に求められるようになっているといってよいでしょう。

 

震災被害は本当に痛ましいものです。だからこそ、1社でも多くの中小企業がこの苦境を脱し、真に強い会社として存続・発展できますよう、私共も努力を続けます。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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