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中小企業と債務免除

債務免除(貸した側からすれば、債権放棄)は借り手企業にとっては、一度借りたお金の返済義務が無くなる
という魔法のような制度です。とは言え、貸し手である金融機関にとっては、債権放棄はそのまま損失を出すことを意味するため簡単にできるものではありません。

 

時に、
「別にもう一つ会社をつくり、そちらに実質的な経営を移して元々の会社の方で債務免除を…」
「サービサー(債権回収会社)に債権を移してもらってそこで債務免除を…」

 

という手法が宣伝され、「わらにもすがる気持ち」でやってみようとする社長や便乗してこのような手法を「必ずできる」ように見せかけて取り入ろうとするコンサルタント等はいつもいます。

 

例えば、中小企業再生協議会取扱いの案件では、相談件数に対して、「最終的に債務免除、もしくは新規融資を得られた」割合は数%と言われています。ただ出来ると言われたから挑戦する、というにはあまりにも無謀であることは、明らかです。

 

実際には、債務免除は不可能ではありません。しかし、できることを初めから折り込んで考えることは無理です。何しろ、「この条件を満たせば、必ず債務免除は受けられる」という規定は存在しないのですから。

典型的な債務免除の流れと最低条件

一般的に、中小企業が受けられる余地の高い債務免除の流れは

 

  1. 1金融機関からサービサーに債権譲渡される
  2. その際、サービサーは元の債権額の5%~30%程度で買い取る※但し、買取り金額は様々であり、決めつけるのは危険です
  3. サービサーは債務者に対する請求権は元の債権額のままだが、買取額よりも大きな金額で回収ができれば、それだけサービサーの利益となる
  4. サービサーは債務者の状況や交渉内容により、実際の回収条件を決める
  5. 最終的な支払(返済)を行い、元の債権額との差額分が債務免除される扱いとなる

 

というものです。ポイントになるのは

 

・金融機関にとっては、サービサーに譲渡する時点で貸倒損失を計上するわけですが、「この会社は、処理してしまった方がよい」という評価を得られるかどうか

⇒このまま倒産されてしまうよりはマシ、と評価されるか

⇒債務処理さえしてしまえば、この会社は長期的に存続可能と評価できるか

⇒この会社の倒産が、他の会社の倒産の引き金になってより大きな被害(会社にとっても、金融機関にとっても)を生んでしまわないか

⇒ビジネスとして、この会社が存続し続ける方が、金融機関にとっても収益が上がるか

 

・サービサーにとっては、回収金額が大きい程自らの利益が増える

⇒という状況で「この会社からは、これくらい返済してもらえれば十分」と思ってもらえるかどうか

 

この二点に尽きます。なかなか難しいのが、

 

・金融機関にとっては「処理さえすれば、あとは十分やっていける」という認識で、借入に対する部分以外は「良好な財務内容」であることが、メリットにもなるのですがサービサーにとっては「回収金額が大きい方が、自らの利益」ですから財務内容が良好であればあるほど、回収要求も強まることになるということ。金融機関とサービサーで、立場や考え方が違うということです。

 

・もう一点、慎重に考えるべきは「税金」債務免除額は、債務免除益になります。課税されるのです。冗談のような話ですが、「債務免除を5000万円得られたが、2000万円課税されて支払ができる資金繰り破綻」「課税されることを知っていて、含み損との相殺を行ったが、翌年税務署が調査に来て否認され、結局課税されて資金繰り破綻」

 

という例は一つや二つではありません。債務免除を得られたとしても、その後の税金対策迄あらかじめ想定してなかったことで、せっかく勝ち取ったものが無駄になってしまう、ということは避けなければなりません。

もう数年間は、無理せず様子見が無難

上記のような問題があること、また、国としても企業の抱える債務の処理を進めなくてはならないという観点で現在この問題をどのように解決していくか、については政府でも水面下で議論が行われている最中です。

 

※第三者保証人の問題についても、この流れの一環です

 

ほぼ間違いなく、債務免除そのものや、債務免除益の課税範囲の問題も入ってくることでしょう。これらのガイドラインの策定を待ってから、どう動くか決めた方がよいのではないかと考えます。無理に進めて、後でより有利な制度ができてしまっては、元も子もありませんから。

 

執筆:今野洋之

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