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銀行の新たな企業財務評価の仕組みと融資判断

どうして、銀行とのつきあい方なんてものが存在してしまうのでしょうか、その大きな理由は「企業経営上の正しい財務と、融資を得るための財務が一致していない」ことにあります。

 

決定的な違いとなったのは、今世紀初頭から存在していた金融検査マニュアルの評価方法が、企業の事業評価よりも「今会社を畳んでも、負債(融資)の支払いができるのか」というところに片寄ってしまっていたことにあり、また当時は止むを得ない事情もあったにせよ、不必要に長く、悪い意味で厳密に運用されすぎてしまったことにあります。

 

既に金融検査マニュアルの運用は終わり、事業性評価に代表される、新たな評価手法も生まれてきましたが、コロナ禍によって傷ついた企業の財務をどのように評価するのか、さらに新たな取り組みが必要になっています。

 

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銀行の新たな企業財務評価の仕組みと融資判断

 

融資の都合と真に再生可能な企業の都合

融資は根本的にローリスク商品のため、どうしても融資を行った対象事業がうまくいかなくとも元本の回収を考慮しなくてはなりません。

 

自己資本比率が高い企業が評価されるのも当然のことです。

 

しかし、コロナ禍で多くの企業が損害=赤字を計上せざるを得ず、純資産も傷ついてしまいました。これまで通りの財務評価では銀行からみた融資可能な企業数が大きく減少してしまいます。

 

一方、企業側から見れば、コロナ禍をなんとか乗り切った後、売上や収益を回復していけるかどうかの分かれ目は(資金繰りがとりあえず大丈夫、という前提では)自己資本比率その他の既存の財務評価上の数値ではなく、

 

「顧客を維持・確保しているか」「十分な商品・サービスを供給できる社員や設備を用意しているか」といった、決算書では表れにくい、いわゆる知的資産と呼ばれるものに依存します。大事なことは、決算書をどんなに見つめても各財務指標をどんなに並べても、分からないのです。こうして、また銀行の行う評価と企業の実態の状況にギャップが生まれる、というわけです。

新たな評価形態は?

既にこの問題提起はなされており、来年以降、順次新たな制度が開始されるのではないかと予想されます。ポイントになるのは

 

  1. メインバンク制を改めて定義、企業とメインバンクの継続的な対話によって支援を決めていく
  2. 日常的なモニタリング・対話を行う代わりに、財務評価一辺倒での融資判断をしない
  3. 各融資と資金使途をしっかり紐付け、運転資金は正常運転資金範囲内は元本返済を求めない。設備資金は償却資産と返済期間を合わせる
  4. どうしても担保が必要だが、目に見える担保対象資産がない場合、「事業そのもの」を担保にすることを認める
  5. 全般としては経営者保証の解除を進める一方で、経営者保証と経営者の所有する株式を担保とすることを制度として認める

 

これらは金融庁が主導して、今後地域金融機関の中でも特に中小企業に対して影響力をもつ地方銀行には強く求められる公算です。

 

1.2.3については、これまでよく触れてきた内容ですので、ここで改めて説明することは 省かせていただきますが、端的にまとめれば

 

・メインバンクが積極的に各企業と継続的に対話をし、相互理解を深めることで財務評価一辺倒の企業評価を脱し、正常な運転資金と評価されるものについては元本の返済を付与しないで融資を行う(極力プロパーで)

 

といったところでしょうか。実際に、そのような運用がなされていると感じる案件も増えておりコロナ禍で横槍も入ってはいますが、少しずつでも前に進んでいる実感はあります。

 

一方、4.5については、どちらかというと新しい話。

 

4.はまとめてしまえば「中小企業の事業を担保にする=中小企業の株式を担保にする」ということです。そのための法改正も実際に進んでいます。

 

5.も付随する内容で、融資に対する経営者保証について「経営者保証を求めない代わりに、経営者の保有する自社株式を担保とすることを認める」ということです。単純にこの制度の良し悪しを語ることは難しいのですが、

 

「貸し手にとって融資はどうしてもローリスク商品であり、担保なしでのリスクテイクには限界がある」

 

「借り手にとって担保に出せる資産はそう多くはなく、かといってそれで融資が受けられないのでは事業ができない」

 

という互いの問題に対して、自社事業≒自社株式を担保にすることで融資の実行を可能にする、という選択肢を追加して対応の幅を広げられる、という意味で肯定的に捉えたい、と考えます。

 

広義では、銀行によるDES(デット・エクイティ・スワップ)を中小企業に対しても運用していく、という意図なのでしょう。これまでもあったDDS(デット・デット・スワップ)が通常の負債(借入)を劣後債という、より返済優先度が低い負債に振り替える内容であるのに対して、DESは負債(借入)を純資産(株式)に振り替えるものですから。

 

もちろん、自社株式を担保にするというのは経営として容易に了承できるような話ではありませんが、さしあたってはそこまで踏み込んででもやる、という新たな選択肢ができつつある、という認識でよいのではないでしょうか。

 

ただし、自社株が簿価での担保価値になるとは考えにくいです。時価評価による価値算定が入ることを想定すれば

 

  • 自社の価値を上げる
  • 価値が過小評価されない情報の開示ができる

 

ことが必要条件になるであろうことは、他のテーマでもお伝えしている通りです。

 

やはり、これからの融資は1社でも多くの企業が対象になる、ということは想定されていません。選ばれた企業がより手厚い支援を受けられる、というものになりますので融資による資金調達を想定するのであれば、見合った財務体質・体制の構築が必須であることはご留意下さい。

 

銀行や専門家、再生支援協議会が一度は判定した「評価」、その内容にどうしても納得がいかないことがある場合には、一度専門家にご相談されるのがよいでしょう。エクステンドは無料相談を設けております。弊社へのご相談なら、まずは下記バナーの「無料相談」をご利用ください。

この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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