コラム

  1. ホーム
  2. > コラム
  3. > 経営相談
  4. > 保証協会の別枠とは?一般枠がいっぱいでも資金調達できる中小企業の制度活用

保証協会の別枠とは?一般枠がいっぱいでも資金調達できる中小企業の制度活用

保証協会の別枠とは?一般枠がいっぱいでも資金調達できる中小企業の制度活用

 

「資金繰りが厳しいので銀行に融資の相談に行ったところ、『保証協会の枠がもういっぱいです』と言われてしまいました。これからどうすればいいのでしょうか…」

 

このような相談は、私たち財務コンサルタントが日々受ける悩みの一つです。銀行から突然「枠がいっぱい」と言われた時の不安や焦りは、多くの中小企業経営者にとって身に染みる経験ではないでしょうか。

 

実は「保証協会の枠がいっぱい」と言われても、まだ資金調達の道は閉ざされていないのです。今回は、そんな状況に陥った時の対処法と、知っておくべき保証制度の仕組みについてお伝えします。

よくある経営者の悩み

中小企業の経営者の方々から、こんな声をよく耳にします。

 

 急な設備投資が必要になったのに、銀行から『保証協会の枠がもういっぱいです』と言われた…

 コロナ禍の影響で売上が落ち込み、運転資金が必要なのに追加融資が受けられない…

 新規事業を始めたいのに、既存の融資で保証枠を使い切っていると言われた…

 

多くの中小企業では、融資を受ける際に信用保証協会の保証を利用するケースが一般的です。しかし、信用保証協会の保証には一定の限度額があり、その枠を使い切ってしまうと、新たな融資が受けづらくなります。

 

特に昨今の厳しい経済環境の中では、一度資金調達の壁にぶつかると、事業の継続や成長に大きな支障をきたすことになりかねません。

銀行からの返答の意味

銀行から「保証協会の枠がもういっぱいです」と言われた場合、これは具体的にどういう意味なのでしょうか?

 

信用保証協会は中小企業が金融機関から事業資金を調達する際に、保証人となって融資を受けやすくするサポートをする公的機関です。この保証には「一般保証」と呼ばれる基本的な枠があり、中小企業一社あたりの保証限度額は、原則として2億8,000万円(組合は4億8,000万円)と定められています。

 

「枠がいっぱい」というのは、この一般保証の限度額に達してしまった、あるいは近づいているという意味です。しかし、ここで大切なのは、この「一般枠」とは別に「別枠」と呼ばれる保証制度が存在するということです。

 

銀行からの「枠がいっぱい」という返答は、必ずしも「もう融資はできない」という意味ではありません。むしろ、「一般的な保証枠は使い切っていますが、別の方法を検討する必要があります」というメッセージと捉えるべきでしょう。

 

では、「別枠」とは具体的にどのような制度なのでしょうか?なぜこの制度を活用することで、一般枠がいっぱいでも資金調達が可能になるのでしょうか?次章では、「一般枠」と「別枠」の違いについて詳しく解説していきます。

 

資金繰り・資金調達など財務でお困りの方は「無料相談」をご利用下さい。

 

無料相談受付

「一般枠」と「別枠」の違いとは?知らなきゃ損する保証協会の仕組み

前章でお伝えしたように、「保証協会の枠がいっぱい」と言われても、まだ資金調達の可能性は残されています。ここでは、その鍵となる「一般枠」と「別枠」の違いについて、財務コンサルタントの目線からわかりやすく解説していきます。

 

信用保証協会の保証制度を理解することは、中小企業経営者にとって「隠れた資金調達力」を手に入れることと同じです。資金調達の選択肢を広げるために、ぜひこの仕組みを把握しておきましょう。

一般保証とは?

「一般保証」とは、信用保証協会が通常提供している基本的な保証制度です。中小企業が金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会がその返済を保証することで、融資を受けやすくするものです。

 

一般保証には以下のような特徴があります。

 

保証限度額:一企業あたり原則として2億8,000万円(組合は4億8,000万円)までという上限があります。この限度額は、普通保険の限度額2億円と無担保保険の限度額8,000万円を合わせたものです。

 

審査基準:通常の融資審査に準じた基準で審査されます。企業の財務状況、返済能力、事業計画などが総合的に判断されます。

 

保証料率:企業の信用リスクに応じて段階的に設定されています。一般的には年0.45%~1.90%の範囲内で決定されます。

 

多くの中小企業は、まずこの一般保証枠を使って融資を受けることになります。しかし、業績悪化や追加の資金需要が発生した際に、この枠がいっぱいになってしまうケースが少なくありません。そんなときに頼りになるのが「別枠保証」なのです。

別枠保証の正体(セーフティネット・危機関連保証など)

「別枠保証」とは、一般保証とは完全に別の枠で設けられている保証制度です。特定の条件を満たす中小企業が利用できる制度で、主に以下のようなものがあります。

 

セーフティネット保証(経営安定関連保証):これは外部要因によって経営の安定に支障が生じている中小企業向けの保証制度です。「取引先の倒産」「業況の悪化」「災害の発生」など、8つの要件(1号~8号)が設定されており、いずれかに該当すれば利用できます。最大で一般枠とは別に2億8,000万円までの保証を受けられます。

 

危機関連保証:これはセーフティネット保証よりもさらに深刻な全国的な経済危機(リーマンショックや大規模災害など)が発生した際に発動される特別な保証制度です。こちらも別枠で最大2億8,000万円の保証が可能です。

 

経営力向上関連保証:経営力向上計画の認定を受けた中小企業が利用できる保証制度で、一般枠とは別に最大2億8,000万円までの保証を受けられます。

 

事業承継特別保証:事業承継に取り組む中小企業向けの保証制度で、一般枠とは別に最大2億8,000万円までの保証を受けられます。

 

これらの別枠保証は、それぞれ申請方法や条件が異なります。たとえば、セーフティネット保証を利用するには、事業所の所在地を管轄する市区町村から認定を受ける必要があります。認定を受けた後、金融機関または信用保証協会に申し込むという流れになります。

「枠が増える」ってどういうこと?

別枠保証の最大のメリットは、文字通り「保証の枠が増える」ということです。これにより資金調達の可能性が大きく広がります。具体的には以下のようなイメージです。

 

一般保証枠:最大2億8,000万円

セーフティネット保証枠:最大2億8,000万円

危機関連保証枠:最大2億8,000万円

 

つまり、条件が整えば理論上は最大8億4,000万円の保証付き融資を受けられる可能性があるということです。もちろん、実際には企業の返済能力や事業計画の内容によって審査されますので、すべての枠を満額利用できるわけではありません。しかし、一般枠だけと比べると大幅に資金調達の幅が広がることは間違いありません。

 

また、これらの別枠保証は、通常の融資よりも有利な条件(低い金利や保証料率)が設定されている場合もあります。これは、経営が厳しい状況にある企業の負担を軽減するための政策的な配慮によるものです。

 

このように、「保証協会の枠がいっぱい」と言われても、別枠保証という選択肢を知っていれば、さらなる資金調達の道が開ける可能性があります。次章では、これらの別枠保証の具体的な種類と特徴について、より詳しく解説していきます。

別枠保証の具体的な種類と特徴【制度一覧】

前章では「一般枠」と「別枠」の違いについて解説しました。ここからは、代表的な別枠保証制度の特徴や条件について、より具体的に掘り下げていきます。これらの制度を理解することで、自社にとって最適な資金調達の選択肢が見えてくるでしょう。

 

資金調達の成功は、「どの制度が自社の状況に合っているか」を見極めることから始まります。それぞれの特徴を押さえて、有効に活用してください。

セーフティネット保証4号・5号とは?

セーフティネット保証は、外部要因によって経営の安定に支障をきたしている中小企業向けの保証制度です。この中でも特に重要なのが「4号」と「5号」です。

セーフティネット保証4号(自然災害等)

この制度は突発的な災害等により経営の安定に支障が生じている中小企業を対象とした保証制度です。

 

【主な特徴】

・保証限度額:一般枠とは別枠で2億8,000万円

・保証割合:100%保証(金融機関にとってリスクが少ない)

・対象要件:自然災害等の影響により、最近1か月の売上高が前年同月比で20%以上減少しており、かつ、その後2か月を含む3か月間の売上高も同様に20%以上減少することが見込まれること

・対象地域:災害等の影響を受けた地域(都道府県単位で指定)

 

この制度の大きな特徴は、保証割合が100%であることです。つまり、万が一返済が滞った場合でも、金融機関は全額が信用保証協会によって保証されるため、融資がしやすくなります。この点は資金調達が難しい状況にある中小企業にとって、大きなメリットと言えるでしょう。

セーフティネット保証5号(業況悪化業種)

こちらは業況の悪化している業種に属する中小企業を対象とした保証制度です。

 

【主な特徴】

・保証限度額:一般枠とは別枠で2億8,000万円

・保証割合:80%保証(一部、金融機関もリスクを負担)

・対象要件:指定業種に属し、最近3か月の売上高等が前年同期比で5%以上減少している中小企業

・対象業種:経済産業大臣が指定する業種(約3か月ごとに見直し)

 

セーフティネット保証5号は、4号と比べると保証割合が80%と低くなりますが、より広範囲の業種が対象となる可能性がある点が特徴です。景気動向によって指定業種は定期的に見直されますので、常に最新情報を確認することが重要です。

 

4号と5号は併用できませんが、それぞれ一般枠とは別枠で利用できるため、資金調達の幅を広げるうえで非常に重要な制度です。

危機関連保証

危機関連保証は、セーフティネット保証よりもさらに深刻な大規模な経済危機等が発生した際に発動される特別な保証制度です。

 

【主な特徴】

・保証限度額:セーフティネット保証とはさらに別枠で2億8,000万円

・保証割合:100%保証

・対象要件:危機の影響により、最近1か月の売上高が前年同月比で15%以上減少している中小企業

・発動条件:リーマンショックや大規模災害など、全国的な信用収縮を伴う危機時のみ発動

 

この保証制度の最大の特徴は、セーフティネット保証とも別枠の保証枠が追加される点です。つまり、理論上は一般枠(2億8,000万円)+セーフティネット保証(2億8,000万円)+危機関連保証(2億8,000万円)で、合計8億4,000万円までの保証を受けられる可能性があります。

 

ただし、危機関連保証は常時利用できるわけではなく、政府が大規模な経済危機等を認めて発動した場合のみ利用可能となります。発動されている期間も限定的ですので、緊急時には素早く対応することが重要です。

小規模企業向け制度

従業員規模の小さい事業者向けにも、別枠での保証制度が用意されています。

小口零細企業保証(全国小口)

小規模な企業(従業員20人以下、商業・サービス業は5人以下)向けの保証制度です。

 

【主な特徴】

・保証限度額:2,000万円(他の保証制度と合わせた額が2,000万円以内)

・保証割合:100%保証(責任共有制度対象外)

・対象要件:従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下)の事業者であること

特別小口保証

小規模企業の方に加えて、より厳しい条件がありますが、無担保・無保証人での保証が可能な制度です。

 

【主な特徴】

・保証限度額:2,000万円(他の保証制度と合わせた額が2,000万円以内)

・保証割合:100%保証(責任共有制度対象外)

・対象要件:従業員数が小口零細企業保証と同じ条件に加え、事業税その他の税金の滞納がないことなど

・特徴:無担保・無保証人での保証が可能

 

これらの小規模企業向け制度は、大企業と比べて資金調達が難しい小規模事業者の資金繰りをサポートするものです。特に特別小口保証は、無担保・無保証人で融資を受けられる点が大きなメリットです。

 

複雑な保証制度の内容や各種手続きについて、経営者一人では把握しきれないことも多いでしょう。そんな時は専門家に相談することをお勧めします。

 

エクステンドでは、経営者からの無料相談を受け付けています。新たな資金調達を得たいや、返済・資金繰りなどの財務でお悩みでしたらお気軽にご相談ください。まずは下記バナーより「無料相談」をご利用ください。

 

資金繰り・資金調達など財務でお困りの方は「無料相談」をご利用下さい。

 

無料相談受付

どうすれば別枠が使えるのか?申請方法と流れを解説

どうすれば別枠が使えるのか?申請方法と流れを解説

 

前章では別枠保証の種類や特徴について詳しく解説しました。この章では、実際にそれらの制度を利用するための手順や必要書類、さらに申請をスムーズに進めるためのポイントを解説します。

 

別枠保証を利用するためには、一定の手続きが必要となります。正しい手順で申請しなければ利用できないため、しっかりと理解しておきましょう。

申請の手順

別枠保証(特にセーフティネット保証や危機関連保証)を利用するための基本的な流れは以下の通りです。

STEP1:自社が要件に該当するか確認する

まず、自社が保証制度の対象要件を満たしているかを確認します。例えば、セーフティネット保証5号であれば、指定業種に該当し、売上高が前年同期比で5%以上減少していることが条件となります。自社の売上データを集計し、要件に合致するか確認しましょう。

STEP2:市区町村へ認定申請を行う

セーフティネット保証や危機関連保証を利用するためには、事業所の所在地を管轄する市区町村から「認定」を受ける必要があります。市区町村の商工担当窓口に、必要書類を揃えて認定申請を行います。

 

申請先について

・法人の場合:登記上の本店所在地または事業実体のある事業所の所在地

・個人事業主の場合:事業実体のある事業所の所在地

STEP3:認定書を取得する

市区町村での審査が終わると、要件を満たしている場合は「認定書」が発行されます。審査期間は自治体によって異なりますが、通常は数日から2週間程度かかります。認定書の有効期限は通常発行日から30日間となっているケースが多いため、取得後はできるだけ早く次のステップに進むことをお勧めします。

STEP4:金融機関へ融資を申し込む

認定書を取得したら、取引のある金融機関または新規に取引を希望する金融機関に、認定書を添えて融資を申し込みます。金融機関は、通常の融資審査に加えて信用保証協会の保証付き融資としての審査を行います。

STEP5:保証協会による審査

金融機関の審査を通過すると、信用保証協会による審査が行われます。保証協会は申込内容に基づいて、返済能力や事業計画の妥当性などを総合的に判断します。

STEP6:融資の実行

金融機関と保証協会の両方の審査に通過すると、晴れて融資が実行されます。審査から融資実行までは通常1~2週間程度かかりますが、案件によってはさらに時間がかかる場合もあります。

必要書類と注意点

別枠保証を申請する際に必要な書類は、保証の種類や自治体によって異なりますが、基本的な書類は以下の通りです。

 

市区町村への認定申請時の主な必要書類

1. 認定申請書(市区町村所定の様式)

2. 売上高等比較表(直近の売上データと前年同期の売上データの比較)

3. 売上高等を証明する書類(試算表、確定申告書の写し、売上台帳のコピーなど)

4. 会社案内やパンフレット(業種確認用)

5. 法人の場合は登記事項証明書(履歴事項全部証明書)

6. 個人事業主の場合は開業届または確定申告書の写し

 

金融機関への融資申込時の主な必要書類

1. 市区町村発行の認定書

2. 融資申込書(金融機関所定の様式)

3. 事業計画書

4. 資金使途の証明書類(見積書や請求書など)

5. 法人の場合は決算書(直近3期分)、個人事業主の場合は確定申告書(直近3年分)

6. 試算表(直近のもの)

7. 商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)

8. 法人の場合は代表者の住民票、個人事業主の場合は住民票

 

申請時の注意点

 

認定申請書や売上高等比較表の記入ミスに注意しましょう。計算間違いや書類不備があると審査に時間がかかる原因となります。

 

売上減少の要因を具体的に説明できるようにしておくことが重要です。特にセーフティネット保証の場合、外部要因(取引先の倒産、災害の影響など)による売上減少であることが条件となります。

 

・認定書の有効期限に注意しましょう。通常は発行日から30日以内に金融機関への申込みを完了させる必要があります。

 

申請から融資実行までには時間がかかるため、資金繰りに余裕を持って早めに申請することをお勧めします。特に、決算期や年度末など申請が集中する時期は審査に時間がかかる場合があります。

認定支援機関の活用

別枠保証を含む融資申請をスムーズに進めるためには、「認定支援機関」を活用するという選択肢もあります。

 

認定支援機関とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にあるとして、国の認定を受けた支援機関のことです。税理士、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関などが該当します。

 

認定支援機関を活用するメリット

 

1. 書類作成のサポート:申請に必要な書類の作成をサポートしてもらえます。特に事業計画書の作成は専門的な知識が必要となるため、専門家のアドバイスを受けることで説得力のある書類を作成できます。

 

2. 融資成功率の向上:認定支援機関のサポートを受けることで、金融機関や保証協会の審査に通りやすくなる場合があります。特に、経営改善計画や資金繰り計画の策定においては、専門家のアドバイスが有効です。

 

3. 融資以外の経営課題の解決:資金調達だけでなく、経営全般に関するアドバイスを受けられます。長期的な経営改善につながるサポートを期待できます。

 

4. 特別な支援制度の活用:一部の補助金や融資制度では、認定支援機関の確認書や推薦書が必要となるものがあります。そうした制度を活用する際にもスムーズに進められます。

 

認定支援機関を探す際には、中小企業庁のウェブサイト「認定経営革新等支援機関検索システム」を利用すると、地域や専門分野ごとに適切な支援機関を探すことができます。当社エクステンドは認定支援機関に認定されています。

 

別枠保証の申請手続きは複雑で、一人で進めるには難しい面もあります。また、コロナ禍や自然災害など、経済環境が大きく変化する中で、最新の制度情報を把握しておくことも重要です。不安な点や困ったことがあれば、専門家に相談することをお勧めします。

 

エクステンドでは、経営者からの無料相談を受け付けています。新たな資金調達を得たいや、返済・資金繰りなどの財務でお悩みでしたらお気軽にご相談ください。まずは下記バナーより「無料相談」をご利用ください。

 

資金繰り・資金調達など財務でお困りの方は「無料相談」をご利用下さい。

 

無料相談受付

別枠保証を使うときの3つの注意点【経営者の視点】

前章までで別枠保証の種類や申請方法について解説してきました。しかし、別枠保証を上手に活用するためには、経営者としていくつかの重要な注意点を押さえておく必要があります。本章では、別枠保証を利用する際に経営者が知っておくべき3つの重要なポイントについて解説します。

 

別枠保証は資金調達の強力な手段ですが、「使いすぎるリスク」「コストの問題」「銀行との関係性」という3つの側面に注意を払わなければなりません。これらのポイントを理解することで、より戦略的に別枠保証を活用できるようになるでしょう。

使いすぎリスクと将来の資金繰り

別枠保証制度は、一般枠だけでは足りない場合に追加で融資を受けられる便利な制度です。しかし、使いすぎには大きなリスクがあります。

借入金の積み上がりによる財務悪化のリスク

別枠保証を利用すると、一般枠と合わせて多額の借入が可能になります。しかし、借入金が増えるということは、それだけ返済負担も増加するということです。特にセーフティネット保証や危機関連保証は一時的な危機を乗り越えるための制度であり、長期的な事業拡大のためのものではありません。

 

例えば、一般枠2億円、セーフティネット保証2億円、危機関連保証2億円と、合計6億円の借入をした場合、年間の返済額は元金だけでも6,000万円以上(10年返済と仮定)になります。これに金利分を加えると、毎月の返済負担は非常に大きなものとなります。

将来の借入枠が狭まるリスク

別枠保証を使い切ってしまうと、将来的に本当に資金が必要になったときに借りられなくなる可能性があります。セーフティネット保証や危機関連保証は、経済危機や災害などの緊急時のための「最後の砦」とも言える制度です。これらを通常の運転資金や設備投資などで使い切ってしまうと、本当の危機が訪れたときに対応できなくなります。

資金調達が容易になることで、本来なら見直すべき不採算事業や過剰な設備投資などを継続してしまうリスクもあります。手元に資金があると、厳しい経営判断を先送りにしがちですが、それが長期的には会社の体力を奪うことになりかねません。

 

これらのリスクを回避するためには、どれだけ借りられるかではなく、いくらなら安全に返済できるかという視点で資金計画を立てることが重要です。借入金の使途も明確にし、投資対効果を慎重に検討した上で借入を決断しましょう。

保証料と金利に要注意

別枠保証を利用する際には、一般的な融資と比べてコスト面での違いを理解しておく必要があります。

保証料の負担

信用保証協会の保証を受ける場合、金利とは別に保証料がかかります。保証料率は企業の信用リスクによって異なり、一般的には年0.45%~1.90%の範囲で設定されています。例えば、1億円を借り入れた場合、年間45万円~190万円の保証料が必要となります。

 

この保証料は原則として一括前払いとなるため、融資実行時にまとまった資金が必要になることも忘れてはいけません。保証期間が2年を超える場合は分割払いも可能ですが、その場合は追加の分割係数がかかり、総額では割高になります。

制度による金利・保証料の違い

別枠保証の種類によって、金利条件や保証料率が異なることにも注意が必要です。例えば、セーフティネット保証4号と5号では保証割合(100%と80%)だけでなく、適用される保証料率も異なる場合があります。また、自治体によっては、特定の制度融資で保証料の一部または全部を補助するケースもあります。

 

制度融資を活用すれば、保証料の負担を抑えることができる場合もあるため、融資を検討する際には地域の制度融資についても調査することをお勧めします。

総コストで比較する視点

融資を比較検討する際には、表面金利だけでなく「金利+保証料」の総コストで比較することが重要です。例えば、政府系金融機関の融資は保証料がかからない代わりに金利が高めに設定されていることがあります。一方、信用保証協会付き融資は金利が低めでも保証料がかかるため、総コストでは同程度になることも少なくありません。

 

また、借入期間によってもコスト効率は変わります。短期の資金需要であれば、保証料よりも金利の影響が小さくなるため、保証料が高くても金利の低い融資が有利になる可能性があります。

銀行との付き合い方(支援を引き出す交渉術)

別枠保証を活用する上で、金融機関との良好な関係構築は非常に重要です。特に以下のポイントを押さえておきましょう。

情報開示の重要性

銀行は「情報」を重視します。経営状況やビジョン、課題などを積極的に開示することで、銀行との信頼関係を構築することができます。特に別枠保証を申請する際には、なぜその資金が必要なのか、どのように活用するのか、そして返済の見通しについて具体的に説明できることが重要です。

 

定期的な情報提供として、月次の試算表や資金繰り表を自主的に提出することで、銀行側の不安を軽減することができます。問題が発生した場合も、隠さずに早めに相談することが、長期的な関係構築につながります。

複数の金融機関との取引

資金調達の選択肢を広げるためには、複数の金融機関と取引関係を持つことも検討すべきです。特にセーフティネット保証などの別枠保証は、新たな金融機関を開拓する良い機会となります。一行に依存すると、その銀行の貸出方針の変更によって資金調達が困難になるリスクがあります。

 

ただし、むやみに取引先を増やすのではなく、メインバンク、準メインバンク、その他取引先といった形で優先順位をつけておくことが重要です。

銀行の立場を理解する

銀行も一つの企業であり、融資担当者には融資残高や利益目標があることを理解しておくことが大切です。時には銀行の立場に立って考えることで、より良い条件での交渉が可能になります。

 

例えば、決算期末や半期末など、銀行が融資残高を伸ばしたい時期を狙って交渉することで、より有利な条件を引き出せる可能性があります。また、融資以外の取引(預金、為替、給与振込など)も提供することで、銀行にとっての取引価値を高めることも効果的です。

経営改善への姿勢を示す

特にセーフティネット保証や危機関連保証などの経営支援制度を利用する際には、単に資金を借りるだけでなく、経営改善への具体的な取り組みを示すことが重要です。経営課題を認識し、それを解決するための計画を持っていることが、銀行からの継続的な支援を得るためのポイントとなります。

 

業績が厳しい時こそ、経営改善計画を立て、その進捗状況を定期的に報告することで、銀行との信頼関係を維持することができます。

 

別枠保証制度を有効に活用するためには、単に制度の知識を持つだけでなく、経営者としての視点でリスクとコストを管理し、金融機関との関係構築に努めることが大切です。これらのポイントを押さえることで、今後の資金繰りが厳しくなった場合でも、適切な支援を引き出せる可能性が高まります。

実際に「別枠」で資金調達に成功した事例紹介

実際に「別枠」で資金調達に成功した事例紹

 

ここまで保証協会の別枠保証制度について解説してきましたが、実際にこの制度を活用して資金調達に成功した事例を紹介することで、より具体的にイメージしていただけるのではないでしょうか。本章では、弊社がサポートした実際の事例(個人情報保護のため、一部内容を変更しています)を紹介します。

 

これらの事例から、別枠保証がいかに中小企業の危機を救い、再成長のきっかけとなるかを理解していただければ幸いです。

小売業:セーフティネット4号で1,000万円の運転資金を確保

【企業プロフィール】

・業種:食品小売業(洋菓子店)

・従業員数:12名

・年商:約1億2,000万円

・特徴:商業施設内に3店舗を展開する洋菓子専門店

 

【課題と状況】

A社は地元で人気の洋菓子店を経営していましたが、大規模な自然災害により、出店していた商業施設が一時休業となりました。その結果、主力店舗の営業ができなくなり、売上が前年同月比で30%以上減少。すでに一般枠で借入を行っていたため、追加の資金調達が必要な状況でした。

 

特に問題だったのは、仕入先への支払いと従業員の給与支払いが迫っていたにもかかわらず、売上が立たない状況が続いていたことです。短期的な資金繰りの悪化が深刻化し、事業継続が危ぶまれる状況でした。

 

【取り組み】

こうした状況の中、弊社ではセーフティネット保証4号(自然災害等)の活用を提案しました。セーフティネット保証4号は突発的な災害により売上が減少した中小企業を対象とする制度で、一般枠とは別枠での資金調達が可能です。

 

まず、市役所への認定申請を支援し、客観的なデータ(売上台帳、前年同月との比較資料等)を用いて売上減少の要因が自然災害にあることを明確に示しました。認定を取得した後、メインバンクと交渉し、綿密な資金繰り計画と今後の回復見通しを提示しました。

 

【結果】

セーフティネット保証4号を活用し、1,000万円の運転資金を調達することに成功しました。また、100%保証の制度であったため、銀行側も安心して融資に応じることができました。この資金を活用して、以下のような取り組みを行いました。

 

  1. 緊急の仕入代金と人件費の支払いに充当
  2. 商業施設の再開まで一時的に移動販売車を導入し、固定客への販売を継続
  3. オンラインショップの拡充による新たな販売チャネルの確立

 

【その後の展開】

商業施設が再開した後も、新たに立ち上げた移動販売とオンラインショップを継続。結果的に、災害前よりも売上チャネルが多様化し、リスク分散が図れたことで、経営基盤が強化されました。現在では年商が1億5,000万円まで回復し、新規出店も計画しています。

 

この事例は、一時的な危機に対してセーフティネット保証を活用し、単なる「つなぎ資金」としてだけでなく、事業構造の見直しと新たな成長につなげた好例です。

製造業:危機関連保証で再起を図ったケース

【企業プロフィール】

・業種:精密部品製造業

・従業員数:25名

・年商:約3億5,000万円

・特徴:大手自動車メーカー向けの精密部品を製造

 

【課題と状況】

B社は大手自動車メーカー向けの精密部品製造を主力事業としていました。しかし、世界的な経済危機により自動車業界全体が大きな打撃を受け、B社への発注も大幅に減少。売上は前年同月比で40%以上も減少し、固定費の高い製造業であるため、急速に資金繰りが悪化していました。

 

特に深刻だったのは、最新鋭の設備を導入したばかりで設備投資資金の返済負担が重かったことです。すでに一般枠の借入と、セーフティネット保証5号を利用した借入があり、これ以上の資金調達が難しい状況でした。

 

【取り組み】

この危機的状況を乗り切るため、弊社では危機関連保証の活用を提案しました。危機関連保証は、全国的な景気低迷など特に大きな経済危機の際に発動される特別な保証制度で、一般枠やセーフティネット保証とはさらに別枠での資金調達が可能です。

 

市への認定申請と並行して、以下の対策を含む詳細な経営改善計画を策定しました。

 

  1. 生産体制の効率化による固定費削減
  2. 自動車以外の産業(医療機器分野)への販路拡大
  3. 新技術開発による付加価値向上

 

さらに、メインバンクと緊密に連携し、経営改善に対する本気度を示すため、社長自らが毎月進捗報告を行う体制を整えました。

 

【結果】

危機関連保証を活用して2億円の資金調達に成功。この資金を活用して以下のことを実現しました。

 

  1. 既存借入金の一部借換えによる月々の返済負担軽減
  2. 医療機器分野向けの部品製造に必要な設備の追加導入
  3. 運転資金の確保による安定的な事業継続

 

【その後の展開】

経済危機から2年後、B社は医療機器分野向けの部品製造が新たな柱に成長。売上構成も自動車関連70%・医療機器関連30%と、リスク分散が進みました。年商も4億円まで回復し、新たな顧客も増加しています。

 

現在は安定した資金繰りを維持しながら、計画的に借入金の返済を進めています。また、バランスシートの改善にも取り組み、自己資本比率も徐々に向上しつつあります。銀行からの評価も高まり、プロパー融資での資金調達も可能になってきました。

 

この事例は、危機関連保証という特別な制度を活用しながら、単なる「危機脱出」にとどまらず、事業構造の転換を図ることで再成長を実現した好例です。厳しい経済環境でも、適切な資金調達と経営戦略の見直しにより、事業の持続可能性を高めることができることを示しています。

 

いずれの事例も、外部環境の急変による一時的な危機に対して、別枠保証制度を活用することで乗り切ったというだけでなく、その機会を活かして事業モデルの見直しや多角化を進め、結果的に事業の強靭性を高めたという点が重要です。別枠保証制度は、単なる「つなぎ資金」ではなく、事業変革のきっかけともなり得るのです。

 

【関連記事】実際にエクステンドで手がけた資金繰り改善、事業再生、経営改善、経営再建、M&Aなどの事例

まとめ 今こそ「枠を知る」ことが資金繰り改善の第一歩

本記事では、保証協会の別枠制度について様々な角度から解説してきました。ここで改めて、なぜ中小企業経営者にとって「別枠」を知ることが重要なのか、そして今後の資金調達戦略にどう活かすべきかをまとめていきたいと思います。

 

中小企業にとって資金繰りは永遠の課題です。しかし、制度を知り、適切に活用することで、予想外の危機にも対応できる強靭な財務体質を構築することが可能です。

資金調達の可能性は、あなたが思っているよりも広い

「保証協会の枠がいっぱいです」と言われて諦めてしまう経営者が多いのが現実です。しかし、本記事でご紹介したように、一般保証枠とは別に、セーフティネット保証や危機関連保証、小規模企業向け保証など、様々な別枠が存在します。これらを理解し活用することで、資金調達の可能性は大きく広がります。

 

特に重要なのは、これらの別枠保証は単なる「追加融資枠」ではなく、それぞれに目的や条件が異なる点です。自社の状況に最も適した制度を選び、戦略的に活用することが、資金調達成功の鍵となります。

「知識」が「交渉力」となる

金融機関との交渉において、保証制度に関する正確な知識を持っていることは大きなアドバンテージになります。「この制度なら利用できるのでは?」と具体的な提案ができれば、交渉の主導権を握ることができます。

 

また、複数の金融機関と取引関係を持ち、それぞれの特性を理解していれば、状況に応じて最適な資金調達先を選ぶことも可能になります。知識は単なる情報ではなく、経営者の大切な交渉カードなのです。

別枠保証は「危機対応」だけでなく「成長機会」にも

第6章で紹介した事例のように、別枠保証制度は単に危機を乗り切るための「つなぎ資金」としてだけでなく、事業構造の転換や新たな成長のきっかけともなり得ます。制度をよく理解し、戦略的に活用することで、ピンチをチャンスに変えることも可能なのです。

 

重要なのは、資金調達は「目的」ではなく「手段」であるという視点です。何のために資金を調達するのか、それによってどのような成果を生み出すのかを常に意識しましょう。

平時からの準備が危機対応力を高める

別枠保証制度の多くは、売上減少など一定の要件を満たす必要があります。急な経営危機に際して慌てて申請しても、認定までに時間がかかり、必要なタイミングで資金を確保できないことも少なくありません。

 

そのため、平時から以下のような準備をしておくことが重要です。

 

  1. 月次の試算表や資金繰り表を適切に管理し、いつでも提出できる状態に保つ
  2. 資金繰り計画を定期的に見直し、先行きの資金需要を予測する
  3. 複数の金融機関と良好な関係を構築しておく
  4. 各種保証制度の最新情報をチェックしておく

 

こうした準備があれば、いざという時に迅速に行動でき、資金繰りの危機を最小限に抑えることができます。

資金調達は「総合力」で勝負する

最後に強調したいのは、成功する資金調達には「総合力」が必要だということです。制度の知識だけでなく、財務管理能力、事業計画の策定能力、金融機関との交渉力など、様々な要素が組み合わさって初めて、スムーズな資金調達が実現します。

 

特に中小企業の場合、経営者一人でこれらすべてを担うのは困難です。必要に応じて専門家のサポートを受けることも、資金調達戦略の重要な一部と考えるべきでしょう。

 

保証協会の別枠制度は、中小企業の経営者にとって非常に心強い味方になります。しかし、これらの制度も正しく理解し、適切に活用してこそ、その真価を発揮します。今回の記事が、皆様の資金調達戦略に新たな視点をもたらし、事業の持続的な成長に貢献できれば幸いです。

 

資金繰りや資金調達は経営者にとって最も重要かつ悩ましい課題の一つです。「どの制度が自社に合っているのか分からない」「申請書類の作成が難しい」「銀行との交渉に自信がない」など、一人で抱え込むには複雑な問題が多くあります。そんな時は、専門家のアドバイスを受けることも検討してみてください。

 

エクステンドでは、経営者からの無料相談を受け付けています。新たな資金調達を得たいや、返済・資金繰りなどの財務でお悩みでしたらお気軽にご相談ください。まずは下記バナーより「無料相談」をご利用ください。財務コンサルタントが親身になって対応致します。

金融機関紹介実績No1
支援機関
contents
  • 事業再生
  • M&A
  • よくある質問
  • 実際の事例集
  • オンラインショップ
  • 会社概要
無料相談のお申し込み

一人で悩む経営者へ
後悔しない決断を一緒に見つけましょう