財務分析とは?収益性・安全性の見方と、99%が見落とす『負債分析』をわかりやすく解説
「今後、会社をどう経営していけばいいのか」こうした漠然とした不安を抱える社長は少なくありません。その不安を解消する武器が、経営判断ツールとしての「財務分析」です。ところが、会計ソフトや税理士が出してくる指標の羅列を見ても、いまひとつ納得できない。そう感じたことはないでしょうか。
実は、世に行われている財務分析の大半は、ある決定的な視点が抜け落ちています。本記事では、財務分析の基本である収益性・安全性・成長性の見方から、金融機関が重視する指標、そして「99%の財務分析を無意味にしている落とし穴」までを、事業再生コンサルタントの視点で解説します。
この記事のまとめ
- 財務分析とは、決算書(貸借対照表・損益計算書)から会社の実態をつかむこと。主に「収益性」「安全性」「成長性」の3つの観点で見ます。
- 金融機関が最重視するのは、債務償還年数・債務超過解消年数・自己資本比率。ただしこれらは「返済できるか」を測る指標で、経営者にとって最重要とは限りません。
- 99%の財務分析が役に立たない理由は、「負債の分析」をしていないからです。資産の時価評価はしても、負債の検証をする人がほとんどいません。
- カギは、負債が「短期であるべきもの・長期であるべきもの」の形になっているか。所要運転資金(売掛債権+棚卸資産-買掛債務)が短期、それ以上が長期であるべきです。
財務分析とは、決算書から会社の実態をつかむこと
財務分析とは、簡単に言えば決算書(貸借対照表と損益計算書)の分析によって会社の実態をつかむことです。その目的は、社長の漠然とした悩みを、客観的な数字で見える形に変えること。実態は、主に次の3つの観点から明らかにしていきます。
| 観点 | 見るポイント |
|---|---|
| ①収益性 | 利幅の厚さと、資本の回転速度 |
| ②安全性 | 自己資本比率など、つぶれにくさ |
| ③成長性 | 売上・利益などの伸び |
財務分析では具体的に何を見ますか?
まず収益性は「A:利幅の厚さ」と「B:資本の回転速度」の2点で見ます。たとえば粗利益10%の商品が10億円分あるとして、販売代金の回収が6ヵ月でその後も同じ速度で売れ続ければ、年間20億円の売上・2億円分のキャッシュが生まれます。ところが全代金の回収に2年6ヵ月かかると、1年あたり10億円÷2.5年=4億円、粗利4,000万円分のキャッシュしか生まれません。回転速度が5倍も効いてくるのです。
次に安全性は、銀行も見ている自己資本比率(返済不要の自己資本÷総資本)が代表です。そして成長性も加えた3点で、会社の実態を立体的につかみます。
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金融機関が最重視する3つの財務指標
金融機関を相手に財務指標を考えるとき、最重要とされるのは次の3つです。これらが重要であることは、近年多くの経営者の知るところとなりました。
| 指標 | 算式 |
|---|---|
| 債務償還年数 | 総借入 ÷(当期利益+減価償却) |
| 債務超過解消年数(債務超過の場合) | 実質債務超過金額 ÷ 当期利益 |
| 自己資本比率(そうでない場合) | 純資産 ÷ 総資産 |
銀行が重視する指標は、経営者にとっても最重要ですか?
必ずしもそうとは言えません。金融機関にとっての重要指標は「お金を返してもらえるかどうかを判断する」ことが目的です。一方、経営者の目的は「企業の存続と発展」。目的が違う以上、銀行が見る指標がそのまま経営者にとって最も大事な指標になるとは限らないのです。
なぜ99%の財務分析は役に立たないのか
会計年度別に色々な指標がズラリと並んだペーパーを渡されたことはありませんか。会計ソフトで出力でき、金融機関やコンサルが持ってくることもあります。しかし、それを見て心から納得できたという経営者を、私はあまり見たことがありません。会計処理は、どうしても現実から離れてしまうものだからです。
そこで知識のある人は、資産の時価評価でそれを補正しようとします。「実際には存在しない売掛金は?」「この仮払金は本当に価値があるのか?」「この設備は償却不足では?」この分析は確かに重要で、やらねばなりません。ところが、貸借対照表の右側、つまり「負債」を検証する人は、ほとんどいないのです。実はこの一点こそが、中小企業の財務分析を意味のないものにしています。
負債を分析しないと、なぜ指標が意味を持たないのですか?
資産だけを正確に評価しても、その資産を「どんな負債で賄っているか」を見なければ、会社の本当の安全性は分かりません。指標を構成する片側(資産)だけ磨いて、もう片側(負債)を放置している、これが「指標は並んでいるのに納得できない」の正体です。
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カギは、負債が「短期・長期のあるべき形」になっているか
では、なぜ流動負債・固定負債はおかしくなるのか。答えは簡単で、短期借入・長期借入の区分は会計上は返済期間で決まりますが、その期間を金融機関が決めていることが大半で、企業が自分の意思で決められていないからです。
たとえば、これまでプロパーの短期で借りていたものを、融資担当者から「今回はマル保(保証協会付き)の長期で借りてください」と言われたら、多くの経営者は断りにくいでしょう。これによって流動負債は減り固定負債は増えるので、見た目の流動比率や固定長期適合率は改善します。しかし、温存していた保証協会の借入枠を使ってしまうのですから、本当に安全性が増したとは言えません。これは金融機関に配慮を求める話ではなく、自らコントロールすべきものです。
負債はどう組み直せばよいですか?
実務上は、所要運転資金が短期、それ以上の借入が長期であるべきです。所要運転資金は次の式で求めます。
所要運転資金 = 売掛債権 + 棚卸資産 - 買掛債務
これに合わせて負債を組み直すと、同じ会社でも財務指標の見え方がまったく変わることがあります。負債には「短期であるべきもの」「長期であるべきもの」があり、それに見合った会計処理になっているか——この点が解決して初めて、財務指標は大きな意味を持ちます。財務分析は、資産評価だけではないのです。







