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売り手様と同規模か、売り手様より小さい規模の会社が買収するときの注意

私は、この仕事(中小企業のM&Aのアドバイザー)をやらせていただき、もう15年目になります。こんにちは。エクステンドM&A担当の松原です。

 

その中で、数は多くはありませんが、M&Aの買い手様が、売り手様の規模と同程度或いは、売り手様より規模が小さいケースがあります。

 

実は、そのようなケース(小が大を買収)の買い手様は社長も若く、情熱的、野心的でありながら、人当たりが良い(謙虚)である場合が多いです。

 

これはこれで、素晴らしいことです。

 

しかし、このようなケースに、共通する留意しなければならないこともあります。それは、買い手側の規模が対象企業(売り手企業)より小規模であるゆえ、

 

1.買収資金を調達できない、買収資金を退職金名目などだけで対象会社(売り手企業)から支払おうとする。

 

2.旧オーナー(通常は兼代表取締役)が負っている連帯保証を解除できない。

 

上記2点について、売り手側・買い手相互に事前に承諾・合意がある、つまり、

 

・客観的な企業・事業価値よりも低価で売却することに同意する

 

・対象企業のM&A前の価値を大きく毀損、或いは、税務当局に損金として認められるであろう範囲を超えてまで、退職金を払い出すことに同意する

 

・M&A後、旧オーナー(兼代表取締役)が連帯保証人の地位であり続けることに同意する

 

があった場合は、当該M&Aを進めてもいいでしょう。しかし、一般的には上記の同意をすることは難しいでしょう。

 

実際に最近、このようなケースに該当する相談を受けました。相談内容は、以下の通り。

 

・親族・社内にも後継者がいないので、会社を売却しようと思って動いていた。

 

・紹介者(専業のM&Aアドバイザーではない)を通じて、買い手企業を紹介された。

 

・買い手企業の代表とも面談したが、人間性と事業に取り組む姿勢はとても共感でき、気に入った。

 

・しかし、売却希望金額を調達することができず、対象会社にある現金を退職金として支払うことで買収としたい。(つまり、買い手側企業は1円も拠出しない)

 

・それだけではなく、規模が小さい(=信用力がない)ため、対象企業(売り手側企業)の銀行団から、借入を一括返済以外に旧オーナー(兼代表取締役)を連帯保証人から外すことはできないかもしれないとの回答あり

 

・これでも当該M&Aを進めるべきか。。。。

 

というものです。このご相談に対する私の回答は”否”、つまり、そのM&Aは進めてはいけないということです。

 

買い手企業の代表がどんなに、素晴らしい人であったとしても、それは、売り手様のリスクヘッジには1ミリも寄与しません。

 

それどころか、よくよく考えてみると買い手側は、当該買収をするにあたり、少なくとも直接的なハートマネー(自らが直接傷つく・直接リスクを負う)を1円も使っていません。

 

これは、シード期のベンチャー企業が1万円で会社を設立して、1億の出資を投資家に依頼するくらいナンセンスな話です。

 

私もかつてベンチャーキャピタル事業にも携わっていましが、身銭を切らない投資家への出資は絶対に行いませんでした。身銭=覚悟だからです。

 

M&Aも同じだと思っています。小が大を買収しようとするM&Aの場合

 

・売り手様は、情ではなく、実利・実質的に、リスクヘッジできているかを考えるべき。

 

・買い手様は、身銭を切れないM&A、旧オーナー(通常は兼代表取締役)を連帯保証から解除できないM&Aは絶対にすべきではないと思います。

 

本日は、小が大を買収ということをテーマとしましたが、情と実利・実質をじっくり冷静になって検討するということは交渉の基本ではないかとも思います。※なお買収資金を株式譲渡代金と一部退職金とに分けることは一般的に行われております。

 

この記事の著者

  • 松原 良太

    ・青山学院大学経済学部 卒業
    ・オーストラリアボンド大学 大学院 経営学修士課程(MBA)修了。
    ・財団法人日本M&Aアドバイザー協会 代表理事
    ・株式会社ビザイン 代表取締役パートナー
    ・AMD capital management 株式会社 代表取締役
    ・株式会社ビザイン・ファミリー・アドバイザーズ 取締役
    ・近著(共著):この1冊でわかる-M-A実務のプロセスとポイント

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