建設業の経営改善
建設関係の会社経営者から、次のような相談や悩みを多く聞きます。思い当たる節がお有りでしょうか・・・
建設業の現場代理人(現場監督)の問題
事例-1
(元請会社からの相談)
「現場の現場代理人から、正確な損益と資金繰りの報告がされない」
(現状)
建設業は、製造業などの1ライン管理ではなく、条件の異なる複数現場を、同時並行して管理しなければいけません。
えてして、見積り折衝から施工管理・損益管理までの全てを、担当の現場代理人(現場監督)や営業マンに「丸投げ」してしまい、現場の状況を正確に経営者に報告されない(できない)といった管理体制の問題が見受けられます。
経営者の“代理人”として、技術面から財務管理まで、100%できれば任せきりでもよいのでしょうが・・・、現実は違います。
例えば、施主との取決めの中で、数量・単価も曖昧で、追加工事の発注をちらつかせられながら、一担当者主導の見切り発車で請負契約する。
当然、実行予算も作らず、結果、数量・単価の確認もなく下請けの言い値で発注し、余計な常傭工事も発生し、工事進捗だけは進めるものの、最後は、追加・設計変更受注の折衝もままならずに赤字工事で終了する。
さらに、現場代理人と下請けとの値段交渉が長引いていたり、「前現場の貸し借り」精算のため、工事完了半年後の今頃になって、下請けからの請求書が出てきたりしたら目も当てられません。
現場代理人や営業マンとしては、外部(下請会社や客先)に良い顔をしていれば、自分は楽だし、最低限、業界内で生きていけますが、これでは、いつまで経っても、会社を存続させるための適正な利益は確保できません。
(対策)
現場代理人や営業マンの悪口を言っているのではありません。このような現場管理を続け、自分自身で現場を把握しきれていない経営者と、社内体制が悪いのです。
建設業は、遮断された仮囲いの中で大きな金額が動き、技術改善と利益の結び付きも理解しづらく、(丸投げも含めて)重層下請の流れも複雑で、銀行など外部の者から見ると、ブラックボックス的な業種ですが、それは良くも悪くも外部に対するもので、社内(経営者-現場代理人)の体制・人間関係もそれをならっていてはダメです。
経営者も、彼らが客先と下請会社に対して抱えている不良資産と滞留負債を、おぼろげながら認識しているはずです。両者とも、悪い報告は後回しにしているのでしょうか。早急に、社内の管理体制を刷新しましょう
○問題点を徹底的に洗い出し、経営者と現場の共通認識とする
- 現場が抱えている、過去・手持ち工事の負債(滞留未払いなど)
- 客先からの提示されている見積り条件と、約束事など
- 会社経営に必要な売上総利益(現場の粗利益)
○標準施工データに基づく実行予算と資金繰り表を作成し、経営者と現場の共通認識とする
- 施工の失敗を、あらかじめ担保した余裕(フカシ)を排除した実行予算を作成する
- 予算作成時、同時に入金と支払時期を時系列化させる
- 外注先との「注文書・注文請書」の作成
- 客先との施工打合せ内容の明文化(議事録)
○経営者と現場の共通認識に立った見積書(金額と内容)を作成し、客先へ提示する
- 当たり前のことができていません
○経営者と現場の共通認識を高めるための「報連相」
- 予算検討会・工程会議の定期開催
- 予算作成時、現場の利益は全て吐き出し、施行中の工程遅延・ミスを隠し立てせず、直ちに報告して全社で対策を立てる。
- 入金・出金変更の連絡が遅れたら、会社の資金繰りに多大な影響を及ぼすことを認識すること
- 実行予算に対する実績を、現場ごとに追い掛け、成功・失敗データを蓄積させ、人事考課と、受注・施工管理に役立てる
- 経営者は、社内の風通しを良くする
※労働集約型産業の売り物は、人(社員)しかないことをもう一度、認識ください
元請けから工事単価をカットされている建設業企業
事例-2
(下請会社からの相談)
「元請から、工事単価をカットされた受注を押しつけられている」
(現状)
建設不況が長引き、工事価格の値崩れが恒常的となり,職人の労務費単価も可能な限り削減するも、それも限界で、絶対的な優位に立つ元請けから、言い値で押し切られて請負(ウケマケ)し、採算が合わなくなっています。
(対策)
ところで、大手ゼネコン各社の、平成22年上期(4-9月)決算概況をご存知ですか(平成22年11月12日付日本経済新聞より単位:億円)
売上高 経常利益 鹿島 6,515 322(前年比80%増) 清水 5,449 70(27%) 大成 5,496 87(97%) 大林 5,355 74(-4%)
元請会社(ゼネコン)各社とも、前年比・売上高減収も、経常利益は軒並み大きな増益です。これは、資材・外注調達の窓口を、現場サイドから本社調達部門に一本化し、粗利益を確保できたことが大きな要因です。
本社での一括大量購買とともに、旧態依然の現場所長とのお付き合い実績による発注を排除するなど、言ってみれば、当たり前な経営が始まったのです。
現場所長の数だけ存在していた現場損益分岐点を、本店標準に統一化したまでのことです。
不採算の可能性がある受注金額から、会社経営する上で必要な粗利益を捻出するため、下請けへは、経費部分をカットしたNET単価で発注を仕掛けてくるのは当然で、これは、下請けいじめなどではなく、会社間の単価交渉による結果と言われればそれまでです。
ならば、下請会社(協力会社)としても、下記のような比較表を元に、会社経営する上で最低限必要となる工事単価を算出し、当たり前の方法で、元請けに対して、正面から単価交渉を始めてはどうでしょうか。
そもそも、元請会社は、作業の効率化・VEなどでより利益を向上させ、限られたパイ(利益)を、下請け(協力会社)にも還元し、育成する責務があるのです。
いくら下請け利益をカットした予算でも、納得できる費用ならば認めるはずです。元請けに協力ばかりしている場合ではありません。
(例示)型枠工事の単価比較(月商:単位=円) 現状 希望 完工高 単価/m2 1,700 1,870 m2 9 9 単価/人日 15,300 16,830 人/日 30 30 日 459,000 504,900 稼働日/月 25 25 計 11,475,000 12,622,500 完工原価 単価/m2 1,500 1,500 m2 9 9 単価/人日 13,500 13,500 人/日 30 30 日 405,000 405,000 稼働日/月 25 25 計 10,125,000 10,125,000 売上総利益 1,350,000 2,497,500 (率) 11.8% 19.8% 販売管理費 人件費・社保料 1,030,000 1,030,000 諸経費 1,050,000 1,050,000 減価償却費 240,000 240,000 計 2,320,000 2,320,000 営業損益 -970,000 177,500 支払利息 171,000 171,000 経常利益 -1,141,000 6,500
建設業企業は自社の技術力に自信を持とう
もう一点。自社の持つ技術力に自信を持つべきです。「正確さ・丁寧・収まり・設計・納期厳守・機動力・職人の人間性・・・」必ず、売り物はあるのですから、最低限必要な単価を頭に叩き込んで見積書を作り、自信を持って見積り折衝に当たるべきと思います。
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