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自社株式の分散は、銀行にとっても心配

歴史の長い企業、代替わりを経験した企業となれば、相続や承継の際に株式が分散されることがあります。法的にやってはいけないことではありませんが、その後の更なる事業承継の際に障害になったり銀行からみて心配や懸念を招く理由になったりすることに注意が必要です。

 

時に、お伺いする企業様の中には株主が何人もいらっしゃることがありますが、先代社長様が逝去された時、相続で株式が分散した、という経緯が多いようです。やむを得ない…、とも思うのですが、分散した株式の現株主と長く連絡がとれず所在も不明になっていたり、相続を通じて関係が悪化し、まともな対話ができなくなったりしていることで、その次の承継や相続の際のリスクになることを認識し、対応しなくては万全の承継とは言えません。

株式が分散されているリスク

株式が必要以上に分散されていることのリスクは

 

  • 普段経営に携わらない株主が拒否権等を発動することで、企業の意思決定ができなくなること
  • むしろ、一部の株主の勝手な意向で経営の意思決定がなされてしまう余地が生まれること
  • 突然の株式買取請求等を受けることで、会社にとって想定外の資金負担が発生すること

 

等が挙げられます。日常的な経営の中では、なかなか出てこないものですが表面化した時には一気に経営が傾きかねない、重大なものです。だからこそ、念には念を押して、株式は承継・相続にあたり、継者に集中できるように図っていくべきです。

銀行も心配するようになってきた

私のような仕事をさせていただいている中では「株式の買取請求」は資金繰り的にも大変です。

 

親しくもない親族が株式を一部保有していて、経営が厳しい時に「買取してくれ」と言われても対応する資金がない、経営がよくなってきたら、株式評価額も上がってしまうためやっぱり買取請求に応えるのが困難、そうこうしている内に業を煮やして、いろいろ要求してくる…金銭的にも、感情的にも簡単な解決ができません。

 

銀行にとっても難題なことに、銀行は原則

 

  • 株主は全て実質的な経営者に協力的で、危機には一丸となって立て直しに尽力する(よって、無理な株式買取請求は起こらない)
  • 経営の意思決定は経営者が行い、銀行もそれを共有させてもらえる経営者の意思決定が突然他の株主によって覆ることはない

 

以上二点は当然の前提とされています。そうでない場合は、財務評価上の評価が高くとも、格付けが下がる理由にもなり得ます。

 

銀行にとっては、経営者を信じて、事業を信じて融資をするのです。突然別のところから横やりが入る可能性が悪要因になるのは当然のことでしょう。

融資としてもハードルが高い

株式買取請求に対して、資金手当てをしようにも融資には資金使途が必要です(運転、設備等)。「株式買取資金」は、資金使途としての検討は不可能ではありませんが仕入(運転)資金のように、その後収益込みで回収できるものではありませんし、設備資金のように導入設備がその後の生産性の向上や売上の向上を生んで収益を強化、返済原資を生むわけでもないので融資審査としてのハードルは、通常の融資よりも上がってしまうのです。

 

銀行としても支援しにくい、でも資金的には大きな影響があるから経営者にとっても銀行にとっても心配なポイントになる、とお考え下さい。

正しい事業承継は、法務・税務だけでは足りない

以上、株式の集中化は法的な義務ではなくとも事業承継の実務として、経営の安定化に必須です。

 

事業承継にあたっては、法的に満たし、税金対策をするだけでは足りないことを踏まえて、後継者が真に実力で勝負できるように先代が安心して見守ることができるように取り組んでいただければ幸いです。

 

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この記事の著者

  • 今野 洋之

    1998年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。6年間で一般的な融資から市場取引、デリバティブ等広範な金融商品を多数取扱う。その後、企業側での財務経理責任者としてM&Aを実施、フリーとしての活動を経て2008年に当社入社。 相談・面談件数は全国で1100件以上、メルマガや雑誌等の記事執筆からメディアからの取材対応も多数。 一般的な金融取引の見直し、借入の無保証化、銀行取引の見直しによるコスト削減を一企業で年間8百万円以上達成。 粉飾開示と同時の返済条件変更依頼、条件変更中の新規融資実行も多数実施し、変則的な条件変更(一部金融機関のみの条件変更)の実行や、事業譲渡による再生資金の調達、事業を整理する企業の上記を全て、法制度・コンプライアンスの抵触なしに履行。

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